エピ003「ヒロインのお願い」

小さく可愛らしく畳まれた、俺宛のメモが回って来た、授業中だぞ。


開けてみると、女子っぽい字、結構綺麗、「放課後、特別教室棟の化学室に来てほしい」と書いてある。

いや、俺は決して勘違いなどしない。 何処にも一言も、俺の事が好きだと言う言葉は書いていない、もしかしたら新手のカツアゲかも知れない。


俺は「一緒に帰ろう」と誘って来た「早美都」を校門で待たせて、さっさと終わらせるつもりで特別教室棟へ向かう。

意外な事に、其処で俺を待っていたのは、学園のヒロイン「相田美咲」だった。 しかも一人きりらしい。



相田:「あのさ一緒の部活、入ってくれないかな?」

宗次朗:「何故?行き成り?俺?」


相田は一寸可愛らしく上目使いして、それで大抵の男子を思い通りに動かしてきたのだろうが、生憎俺には通用しない。



相田:「他の男子だと、なんか変な勘違いされちゃいそうで、困るって言うか、だって「京本君」は恋愛嫌いって言ってたし、それに真面目で信用できそうだし、それにあんまり友達作らなさそうだから、噂広まらなくて良いかなって、思って、」


上手く誑し込むつもりなら、最後の方のセリフは割愛した方が良かったな。



宗次朗:「何の噂?」

相田:「内緒にしてくれる?」

宗次朗:「まあ、一応、常識的に、約束は守る。」


女子と同じ秘密を共有する事に何の意味が有るのかと言うと、そんなモノには特段なんの意味が有る訳でもない。 男同士だって似た様な事は言うだろう。



相田:「実は私、中学の時から付き合ってる彼が居るんだ、別の高校だけど、」

相田:「彼氏、写真趣味で、影響受けて私も始めたんだけど、…それで中学の時に、コンテストに一緒に出ようって約束してたんだ。でもうちの高校の写真部、今年部員が一人だけになっちゃって廃部寸前なの、だから一緒に入ってくれる「友達」探してるんだ、お願いできないかな?」


了承すれば「友達」で、断れば一生「友達」にはなれないのだろうか?

しかし俺は別に高校で「友達」が居なくても困らない。



宗次朗:「まあ、別に入りたい部が有った訳でもないし、体育会系でもなさそうだし、部員少ないって、つまり五月蠅い先輩も少ないなら、別に構わないかな。」


こういう経緯で、俺は渋々、仕方なく入部する事を承諾する事になった。

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