第030話「リベンジの部長会報告」
4月16日 月曜日、
僕は配属以来初めての「最高にやる気に溢れた朝」を迎えていた、
特命業務については未だに何をすれば良いのかよく解らない事ばかりだけれど、もしかしたら交通情報工学の知識を活かせるかも知れない、コレ迄必死に取り組んで来た事が無駄にならないかも知れない、叶えたかった「約束」が実現出来るかも知れない、…
そんな期待に胸躍らせる「居ても立っても居られない気分」な訳である、
シオン:「お早うございます!」
自分でも思わず吃驚してしまう!
何しろ会社に来てこんなに元気よく挨拶したのは初めてだ、
僕は直ぐに「平塚さん」の姿を探す、…
先週末「平塚さん」は実家に帰っていたから一言も話が出来なかった、
彼女が「特命業務」のパートナー、人工知能のエキスパート、
第6世代自動運転ロジックについて、話合いたい事が、山ほど有るのだ、
シオン:「平塚サン、お早う!」
リョウコ:「シオン、おはよう、」
早速僕は「平塚さん」の机に押し掛けて、…
何だかハイテンションな僕に一寸驚きながらも和やかに微笑む「平塚さん」、
リョウコ:「シオン、どうした?」
シオン:「ねえ、今日何処かで打ち合わせできないかな?」
それで「平塚さん」は、小首を傾げる、
そこで思い出す、…
「国府津さん」から「特命業務の件は当面トップシークレット」と念を押されていたのだった、
皆の居る執務室で相談する訳には行かない、
シオン:「あのさ、何処か二人きりになれる所で、話がしたいんだけど、…」
僕は「平塚さん」の耳元に口を近づけて、誰にも聞かれない様にそっと、…囁いた、
それで「平塚さん」は、徐に立ち上がって、…
僕の顔を凝視する、…
それから、だんだん涙目になって?…
リョウコ:「あ、あう、…」
真っ赤になって??…
リョウコ:「ううー!」
トコトコと、…執務室から逃げ出してしまった!
シオン:「平塚さん?」
マドカ:「何やってんの? 朝っぱらから、」
シオン:「何だか分らないけど、平塚さんの様子がおかしいんだよ、」
振り返ると、「戸塚さん」が腰に手を当てて僕を睨んでいる、
マドカ:「いや、どう見ても可笑しいのは貴方でしょ、宝くじでも当たったの?」
シオン:「別に、何も無いヨ、」
ウズウズと秘密を喋りたい衝動に駆られつつも、我慢する…
マドカ:「確かに、目が怖いワ、…」
何だか「戸塚さん」が不審者を見る目付きで、…
マドカ:「週末少し位、体動かすとかして発散した方が良いんじゃない?」
シオン:「人を欲求不満みたいに言わないでよ!」
国府津:「そろそろ行こうか?」
シオン:「え、今日も、私も出席するんですか?」
昼休み5分前、「国府津さん」が僕の机にやって来た、部長報告へのお誘いらしい、
国府津:「うん、報告よろしく、自分で作った資料だから楽勝だろ?」
シオン:「先週、担当者が部長会で報告するのは駄目だって怒られてばかりなんですけど、」
国府津:「大丈夫、大丈夫、」
それで僕は、先週用意したスライドを使って、精査した予算状況と、削減案、不足分について政府からAI開発委託を受ける分でカバーする案を説明、
そこから「国府津さん」登場で、AI開発に関する追加説明、
部長A:「漸く行き遅れの嫁ぎ先が見つかったと言う事か、」(注、日本語)
部長A:「それで、実際の開発の方は上手くいきそうなのか?」(注、英会話)
国府津:「周辺車両との恊働車両制御の方は略計画通り、後は警察機関と連携した統合制御と新導入地域適用ロジックの追加ですが、1年半あるので何とかなると思いますよ、なんせAI自身が開発してますから、…」(注、英会話)
更に「石立部長」からのサポートコメント、
石立:「本件、AI設備の正式買い取り先が決まる迄の管理業務のみの請負でしたが、日本政府が引き取ってくれる事になれば、身請け先としては最良だと思います。技術も開発力もお膝元である日本の民間企業に残り、我々はその開発に直接携わる事で最も利益を引き出しやすい立場を継続できる訳です、」(注、英会話)
そんな感じで終始和やかに質疑応答は進み、時間切れで僕と「国府津さん」は解放、…
国府津:「お疲れ様、」
シオン:「どうも、サポートありがとうございました、」
国府津:「逆、逆、二宮クンが私をサポートしてくれたんだよ、有難うな、」
何だか、悔しいけれど、…照れてしまう、
シオン:「でも、うちが国産AIを持ってたんですね、知りませんでした、」
国府津:「正確には管理してただけだな、国家プロジェクトで試作された国産AIは3台、お役御免になった後は一つずつ転用先が決まるまでの間、名乗りを上げた会社が設備の維持管理を引き受けていた訳だけど、冷却設備稼働費用含めた電気代を自腹で用意すれば、その代わりにコンピュータは自由に使って良い事になっていたんだ、」
シオン:「それで、何処にあるんですか?」
国府津:「今度連れて行ってあげるよ、…」
それで「国府津さん」、僕の顔を覗き込んでニヤリと笑う、…
国府津:「何だか元気だな、こんなやる気のある二宮クンを見るのは初めてじゃないか?」
シオン:「交通情報工学の知見が無駄にならないかと思うと、何だか嬉しくて、」
国府津:「まあ、良かったな、…けど、本業の方もよろしく頼むよ、」
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