第028話「自動運転自動車自動認証システム」

イケメン:「いいから早く用件を話せ、コッチはお前と違って忙しいんだ、」

国府津:「またまたぁ、何でお前が忙しいんだよ、あ、もしかして違法改造車の件か?」



違法改造車、…

現在、試験導入地域である東京23区と川崎、横浜には第5世代自動運転自動車しか乗り入れ出来ない様に、関所(ゲート)で登録認証をチェックするシステムになっている、


そしてゲートを通過出来る第5世代自動運転自動車では、自車の位置と搭乗者の情報が全て自動的に道路交通情報センターと警察に送信されて、チェックされる仕組みになっているのだが、


だから当然、警察に監視されたく無い「犯罪者」の類いは、自車情報を自動通信しない車が欲しい訳で、あの手この手の違法改造車が出回っている、と言う話は知っていた、




因にどの様な認証システムかと言うと、AI(人工知能)自身の学習記憶に基づいた複数の無作為な質問に正解し続けなければならないものらしい、


実は現在、全ての第5世代自動運転自動車のAIは、全て同じ「世界標準AI」のコピー、もしくはその派生版になっている、つまり同じ学習記憶を共有している、


そして、AIが「何」を「何」と認識するかは、人間でもそれぞれ個人個人で少しずつ違っている様に、実は誰にも正確な処は分っていない、


極端な話、僕の認識している「黄色」と「国府津さん」の認識している「黄色」が全く同じ色かどうかは実は誰にも分らない、まあ、それでなくても「この人」の言う事は時々分らないのだが、…


だから「世界標準AI」が学習する中で培った「記憶」に基づいて、AI同士が「合い言葉」を交わし合う内容は、他のAIや人間には「何の事だか分らない」のだ、


例えば「トイヤン」とは何か?→「小学校の担任の先生のアダナ」、猫っぽいけど今考えてみたら猫じゃなかった「コイツ」って何?→「フェレット」、「前世の俺」→「紅蓮の聖魔導士ラズナヴェル」、ミタイな感じで、どんな黒い誤解をしていたかなんて、AI本人にしか分らないと言う、ごくごく「中二病チック」な認証システムなのである、


それで、各地の関所(ゲート)や交差点、レーダー、カメラ、等、要所要所では、無作為に選ばれた6種類の「記憶テスト」がされて、一致しなければ入場出来ない、或は不審車両として警察に通報される仕組みになっているのだった、


実はこの認証をすり抜ける違法改造が大問題になっているのは日本よりも「世界標準AI」の出身国アメリカであって、進化型違法改造とセキュリテー強化のいたちごっこで雁字搦めになった「世界標準AI」の供給元会社が、第6世代対応AIをアーキテクチャから見直す事になった、と言う話を、今朝「国府津さん」から教えてもらったばかりだった、


コレに伴い、アメリカは第6世代自動運転自動車の導入時期を1年程遅らせる事を決めたらしいが、何せ狭い日本では、既に着々と進みつつ有る関連インフラの工事を今更見直す事も侭ならず、追加発生する数千億円規模の投資が、議会の袖裏でチリチリと火種を燻り始めているらしい、と言う話も、今朝「国府津さん」から教えてもらったばかりだ、





新橋:「こんばんは、何か飲みますか?」

シオン:「有り難うございます、じゃあ、水割り、」


まるで優しいお姉さんの様な「新橋さん」が、何時の間にか僕の隣に腰掛けて来て、にっこりと微笑みかける、


何だか此の部屋には「キャスト」の人達が一人も居なかった、

どうやら話の内容が内容だけに、「花帆さん」が事前に人払いして置いてくれたらしい、


代わり?に「新橋さん」が、テーブルにセットされていたウィスキーのセットで、僕と「国府津さん」の水割りを拵えてくれる、



ホノカ=新橋:「初めまして、新橋・ホノカです、山根さん(=イケメン)の警護を務めさせて頂いてます、…こう見えて私、強いんですよ、」


何だか早速始まってしまった「おじさん」二人の激論に飽きたのか、「新橋さん」は全く関係の無い話を僕にふって来た、



シオン:「二宮・シオンです、こんなに綺麗なのに、その上強いんですか、凄いですね、…」


って、何だか舞い上がってしまった僕は、…自分でも何を言っているのかよく分かっていない、



ホノカ:「シオン君は、お酒強い方?」

シオン:「弱い、です、」


俯いて顔を見れないでいる僕の肩に、何故だか「新橋さん」の肩が、…触れる、



ホノカ:「あの二人楽しそうだね、仲良さそうだけど、どう言う関係なのかな?」

シオン:「良く、分らないですね、」


更に「新橋さん」は身体を寄せて来て、最早僕のパーソナルスペースは、…大気圏突入状態、


先週此の店に来た時のキャストの女性以上に積極的な気がする、…



ホノカ:「シオン君も自動運転自動車の開発者なの?」

シオン:「多分、…そうです、」


何なんだこの人は、何でこんなにも、…馴れ馴れしいの?


俯いた僕の視線の端に、「戸塚さん」を凌ぐ凶悪バストが入り込んで来て、僕は思わず真っ赤になって、…目を逸らす、



シオン:「あの、新橋さん、…近い、です、」

ホノカ:「あ、ごめんね、なんかつい、シオン君可愛くって、」


可愛い???



ホノカ:「…怒った?」

シオン:「怒らないですけど、…恥ずかしい、」


そんな可愛らしい顔で無理矢理覗き込まれたら、…他に何も言える訳が無い訳で、

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