第027話「週末の飲みニケーション」
金曜日の午後、
僕は「藤沢さん」の指導で、来週月曜の部長会報告用スライドをまとめていた、
部長会は海外拠点と繋いだビデオ会議なので、資料はパソコンで画面共有できるスライドを数枚に纏めて事前配布する決まりになっている、
カスミ:「一枚のスライドにメッセージは一つ、「言いたい事」と「その論拠」ソレを裏付ける「データ」の3つが過不足無く含まれている事が大事なの、」
カスミ:「注意しないとイケナイのは、何でもかんでも書いては駄目だと言う事、不要な情報は判断の際の「ノイズ」にしかならないわ、余計な情報を入れた為にその説明や反論で結局承認を得られなかったって事はよく有るから注意してね、」
シオン:「はい、…それって、改竄、とは違うんですよね、」
カスミ:「全然違う、誤魔化してどうするのよ!」
国府津:「どう、出来た?」
そこへ「国府津さん」が現れる、
国府津:「こういうのは美的感覚が問われるからなぁ、私は昔の上司によく「真に美しい説明資料なら一枚の絵で30分以上論議出来る」って言われたな、大学の研究だって同じじゃないか?」
美的感覚???
シオン:「でも、こう言う報告書とか、説明資料を作るのに掛ける時間って、何だか本質的じゃ無い気がするんですけど、気のせいですか?」
国府津:「世界は一人じゃ回って行かないからね、説明して納得してもらえなければ、どんな技術も無いのと同じ事だよ、…それでも地球は回っている、ってね、」
「回っている」で掛けた駄洒落???
国府津:「ところで、今晩何か予定有る?」
この前言ってた、食事に連れて行ってくれると言う話だろうか?
シオン:「特に無いですけど、」
カスミ:「何とでもなります!」
国府津:「あ、ごめん、今日は二宮クンだけ、…又今度ね、」
期待に満ちた「藤沢さん」の目から、輝きが失せて行くのを見るのが、…辛い、
何でこんな「オッサン!」が!!
そう言う訳で、その夜、
僕と「国府津さん」は、横浜駅西口、川沿いに並んだ屋台の一つで「おでん」を食べていた、
国府津:「美味いだろ、此処のおでん、」
狭いカウンターテーブルにギュウギュウ詰めて座り、
目の前で「大将」が良く煮込んだ鍋から熱々出汁の沁みた具材を皿にとって、出してくれる、
シオン:「はい、こう言うお店来たの初めてです、」
興味は有ったが、少し怖かった、僕みたいな子供が立ち寄って良い場所とは、何だか違う気がしていた、
国府津:「君だって立派な大人だろう、それに美味いものに大人も子供も無い、」
大将:「お酒は駄目だけどな、坊主幾つ?」
シオン:「はい、24です、」
僕は見た目で未成年と間違えられる事が多くて、居酒屋なんかでもこう言う質問をされる事が有る、
大将:「そうか、じゃあ今日は特別一杯だけ奢りだ、」
そう言って、店の「大将」が、ガラスコップに冷やの日本酒を注いでくれた、
シオン:「有難う御座います、」
国府津:「おっちゃん、俺は?」
おでんやの「大将」、「国府津さん」を無視、…
21時20分過ぎ、
僕達は、屋台のおでんやから一分も離れて居ない、一軒のキャバクラの前に立っていた、
「Club Carrot Cake」、この間「戸塚さん」と来たばかりの店だ、
例のガタイのデカい黒服の外人が、…
「国府津さん」の顔を見た途端に、何も言わずにドアを開ける、
顔パス??…一体「国府津さん」って何者なんだ??
国府津:「どうもぉ、」
「国府津さん」はまるで勝手知ったる自分の家みたいにスルスルと階段を降りて店の前へ、
黒服の女の人に上着を預けて、
そこへ此の店の「ママさん」=「花帆さん」が現れた、
花帆:「いらっしゃい、」
国府津:「来てる?」
花帆:「カラオケボックスの方に通しておいたわよ、」
国府津:「ありがとう、」
僕は、訳も分らず引き回される侭に、店の奥の個室へ、…
中は、ミラーボールの回転するムードバッチリなカラオケボックスになっていた、
国府津:「お待たせ、」
イケメン:「遅えよ、待ち合わせは9時だろう?」
ぐるっと10人は座れそうな長テーブルの隅っこに、イケメンが一人と絶世の美女が一人、
国府津:「あれ、君見ない子だね、最近入ったの?」
美女:「こんばんは、初めまして、新橋です、」
イケメン:「コイツはウチの職員だ、君もこんな奴にマトモに挨拶する必要は無い、」
国府津:「そうなの?…残念だなぁ、」
何故だか僕も、珍しく「国府津さん」に素直に同意する、
何故なら其処に佇んでいたのは、…
ルネサンス期の彫刻を思わせる様なグラマラスボディに目鼻立ちのハッキリしたアイドル顔とショートカットの柔らかスィートボム、その上更に縁無しの眼鏡が、やや反則気味に大人の色気を醸し出している、…色香と可憐が同居する美女、
一体、この人達は、…誰???
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