第022話「異世界からの電子メール」

カスミ:「お疲れ様、」

シオン:「なんだか、余り解決した気がしなくて、宙ぶらりんなんですけど、」


カスミ:「そうだね、明日頭がすっきりした処でもう一度、提案内容を相談しようか、…まだ一日残ってる、」


そう言うと「藤沢さん」は経理グループのメンバーを集めて、今迄担当者に任せっきりにしていたグループの現状確認の打ち合わせを始めた、


僕は、…

自分の椅子に座りこんだ途端、なんだかドッと重みが戻ってきて、上半身がふわふわする、…そう言えば、今週のアウトプットも未だ登録していなかったな、


こなさないといけない雑務をポストイットに書き出して、机の上に次々貼って行く、…未読メールも20件ほど溜まっている、


言ってる傍から、もう一件のメールが届く、

差出人は、…「戸塚・マドカ」



本文:「終ったの?」

Re:「未だだけど、取り敢えず今できる処までは一段落したミタイ、」


Re:Re:「お疲れ、愚痴聞いてやろうか?」


思わず笑ってしまう、



Re:Re:Re:「良いよ、ありがとう、」

Re:Re:Re:Re:「藤沢さんとずっと一緒にいれて幸せだったのか?」


Re:Re:Re:Re:Re:「そんな事は考えてません、普通に仕事してただけだよ、」

Re:Re:Re:Re:Re:Re:「惚気なら聞かない、」


Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:「仕事しなよ、」


それでまたメールが届く、

差出人は、…「アリア」



本文:「こんにちは、お仕事上手くいったみたいですね、良かったです、」


僕は、…ちょっと考えてから、意を決して返信メールを送る、



Re:「お蔭様で、ところで、貴方はどなたですか?」


出来るだけ無用な誤解は避ける様に、仮に誰かの悪戯だったとしても後々問題にならない様に、言葉を選ぶ、



Re:Re:「私はアリアです、シオンの事をもっと知りたいと思っている者です、」


これは、悪戯確定だろう、



Re:Re:Re:「何処の部署の人ですか? 何か相談があるなら、実際に会ってお話ししませんか、」


Re:Re:Re:Re:「そう出来ればどんなに良いでしょう、でもごめんなさい、私は直接シオンと会ってお話しする事が出来ないのです、」


Re:Re:Re:Re:Re:「どうしてですか?」

Re:Re:Re:Re:Re:Re:「私は、シオンとは異なる世界に住んでいるから、」


何かの映画か、漫画の設定だろうか?

こんな馬鹿っぽい事を言うのだから悪質な詐欺では無いと思うけれど、これ以上付き合うのは時間の無駄だろう、…



Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:「よく解らない人とこれ以上メールのやり取りをするのは止めたいと思います、もうメールを送って来ないで下さい、」


Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:「お願いです、何かシオンの気に触る事が有ったのなら謝ります、どうか赦して下さい、こうしてやっとシオンと意志を通じ合わせる事が出来たのに、そんな悲しい事を言われたら、私はきっと壊れてしまいます、」


Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:「これ以上変なメールを送って来るのは止めて下さい、迷惑メール設定させて頂きます、今後は貴方からのメールを読む事も返信する事も控えさせて頂きます、さようなら、」


それでメルアドを迷惑メールに設定、



シオン:「変なメール、」


…なのに、また「受信箱」に「アリア」からのメールが届く、しかも微妙に違うメールアドレス?



本文:「お願いです、絶対にシオンに迷惑はかけませんから、シオンのお役にたてる様に何でもしますから、どうか知らんぷりしないで下さい、」


何だ、この人?



Re:「私は知っています、シオンはNAVEの2029年度開発費の削減アイデアを探しているのでしょう? 私はシオンにアイデアを提供する事が出来ます、」


僕が、…月曜日の部長会でしくじった事は恐らく誰もが知る事だ、


「ナギト」曰く、もともと総務部は予実警告や残業時間超過で細かい管理仕事を開発グループに押し付けるから、各部からは決して良い様には思われていない、月曜日の部長会の件は総務部のミス、新人の癖に粋がって部長会報告して墓穴を掘った「いい気味案件」として広まっているので、それに乗じて悪戯を仕掛けてくる輩がいたとしても、…おかしくはない、


でも、…

こんな手間を掛けて嫌がらせする程、皆暇なのか?


僕はチラリと「戸塚さん」の姿を確認する、…「長谷部さん」と何やら打ち合わせの最中だ、



Re:Re:「因みにどんなアイデアですか?」


Re:Re:Re:「現在NAVEの残業時間は従業員が執務室に滞在した時間を10分刻みの繰り上げで自動登録しています、従って8時59分に入室して、18時01分に退室した従業員は8時50分から18時10分まで業務をした事になり、実際には2分の超過時間が20分の超過としてカウントされています、2028年度のデータによれば、残業手当を受けるNAVEの従業員と契約社員合計928名の合計過剰支払いは1億1535万7566円になる事が分かりました、すなわち残業時間管理システムのプログラムを修正する事で1億1535万7566円の支出削減が可能になると想定されます、」





シオン:「これって、やっぱり悪戯でしょうか?」


僕は、最悪のケース、NAVEの情報漏洩の可能性も考慮して、この「アリアからのメール」の件を、「藤沢さん」に相談する事にした、



カスミ:「文面は明らかに悪戯っぽいけれど、削減アイデアは一概に馬鹿にしたモノじゃないわね、精査は必要だけど、…一応国府津さんに相談してみようか、」


それで、…



国府津:「シオン君、モテモテだなぁ、…」

シオン:「其処ですか?」


「国府津さん」は、何時ものニヤケ顏で僕の顔を、覗き込む、



シオン:「このアリアって人、従業員のメアドを使っているのに、従業員アドレス帳には存在しないんですよ、何か変じゃないですか?」


国府津:「でも、考え方は間違ってないんだろ、検算してみたら?」


シオン:「やってみました、データベースには秒単位の入退室時間が記録されていたので、マクロ組んで計算してみました、確かに1億1000万円近く払い過ぎているミタイです、計算上はそんなに変じゃないです、」


国府津:「早いな、」


この程度の計算マクロを作るのは、大学で散々やって来たから「御茶の子さいさい」の「朝飯前」だ、



国府津:「じゃあ、良いんじゃないか、…削減案は合計で3億6千万円ね、後11億ちょっとか、…了解、」


何と言うか、こんな軽い感じで良いのか?



カスミ:「このアリアと名乗る人物の件はどうしますか?」


国府津:「取り敢えず、今回のビジプラ修正の件は総括部の課長以上とこのメンバ以外口外無用な、…その奇妙な提案者の事は一旦私に預からせてくれ、説明が面倒臭くなるから一切他言無用、長谷部さんや立石さんにも言わない様に此の3人だけの秘密、…良いかな、」


カスミ:「解りました、」

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