第018話「想いの侭にならない情動」
カスミ:「それで、本当にやる事は理解出来たのかな?」
シオン:「それが、スミマセン、まだ良く分ってません、」
カスミ:「いい? 分らない事は分らない侭にしない、分らない事は恥じゃない、分らないからと言ってペナルティは受けない、…一番イケナイのは、分ったふりをして必要なアクションを遅らせて、後でもっと迷惑を掛ける事だよ、」
僕は「藤沢さん」が真剣な目で僕を叱ってくれている事が辛い、
この人の期待に応えられない事が、どうしてだか、…
こんなにも辛い、
シオン:「…気を付けます、」
カスミ:「じゃあ、もう一度やる事を整理するよ、今日は帰りが遅くなるけど、大丈夫?」
シオン:「大丈夫です、」
僕は「藤沢さん」のスパルタ指導のもと、FCS319の予算を最新見積もり値に組み替えた修正ビジネスプランの「基点」を作る所から始めた、
が、慣れない作業は難航し、…
夜21時を過ぎた頃、「藤沢さん」の提案で二人でカツ丼を注文、配達してもらって暫しの休憩を取る事になった、
僕は「ナギト」から「今日の晩飯はどうするんだ」というメッセージを漸く其処で発見する、
返信:「今日は残業で当分帰れない、会社で食べるから大丈夫、」
カスミ:「もしかして彼女から?」(注、カスミはマドカをシオンの彼女だと思っている)
シオン:「いえ、同じ寮の友達です、何時も一緒に晩ご飯食べてるんで、心配してたみたい、」
カスミ:「そう、仕事が忙しくなって来ると中々プライベートの予定も合わなくなるけど、まあ、仕方ないね、」
僕は、苦笑いしながら、「藤沢さん」オススメのカツ丼を一口、…柔らかな卵の上で、しっかりと味の沁みたカツが、甘いツユダクのご飯と絡まって、…
シオン:「美味しい、」
カスミ:「だろう?」
シオン:「本当に(カツ丼)奢ってもらって良いんですか?」
カスミ:「気にしないで、…頑張ってる後輩に先輩がしてやれる事なんてそんなに沢山有る訳じゃないよ、何時か今度、二宮クンが後輩にしてあげれば、それでお相子だよ、」
僕は優しく微笑む「藤沢さん」の顔を見る度に涙が零れそうになるのを必死に、…堪える、
コレが、恋愛感情ではない事位知っている、
僕が、恋愛対象にならない事位疾っくに知っている、
カスミ:「さてと、10時になったら再開しようか、」
シオン:「スミマセン、手間取ってしまって、」
僕は、多分、今、凄い恥ずかしい顔をしている?
カスミ:「初めてだから仕方ないよ、」
カスミ:「今は自分が何の為に何をやっているのかを身に沁み込ませる事が大事、その為にはトラブルは「持ってこいの実践教育素材」なんだよ、」
シオン:「実践教育って、僕が未熟な所為で部長報告が間に合わなかったりしたら、その方が余っ程大変じゃ無いですか、…藤沢さんだって忙しいのに、僕に付き合ってもらって何だか申し訳ないです、」
シオン:「え、あ、…」
少し困った顔で「藤沢さん」が、僕の頬っぺたに付いていたご飯粒を、…摘み取る?!
カスミ:「二宮クン覚えておいて、会社で一番大切なのは会社が強くなる事、それは乃ち、働いている人間が強くなる事、「こんなの」は毎年起きている幾つものトラブルの内の一つに過ぎない、それで君が成長するなら安い物だよ、」
僕は、多分、今、凄い恥ずかしい顔をしている?
シオン:「な、なんだか、…責任重大、ですね、」
カスミ:「そうだよ、」
結局、僕は更に1時間かけて、慣れないマニュアル入力でFCS319のデータを書き換えて、最新状態とも言える2029年度の総開発費を積み上げた、
確かに、年度開発費の総額は元の予算に比べて15億2170万5621円高い、
シオン:「これから、どうすれば良いんですか?」
時計は既に23時を回っていた、
カスミ:「先ずは今回の「逆」を探そうか、…「最新のプロジェクト予算に置き換わっていないもの」を探す、…通常「開発費再見積もり」は修正される度に削減タスクで予算が下がっている事の方が多い、そう言うプロジェクトが無いか調べて行く、」
カスミ:「その次は「本当は実在しないプロジェクト」がビジネスプランに紛れ込んでいないかを探す、」
シオン:「そんな事って有るんですか?」
カスミ:「年度途中で「中止・延期」になった場合は「追加・増額」提案の場合と違って、正規の予算変更手続きである役員会に掛けられない事がある、そうするとシステムがプロジェクト中止情報を自動的にチェック出来ずに旧いまま残っている場合が有る、とまあ、10年位前はそう言うのも結構有った、」
「藤沢さん」って、入社何年目? 一体何歳なんだろう?
カスミ:「要するに、ビジネスプランのデータの中の「無駄」や「ゴミ」を探して取り除く訳、…取り敢えず年度開発費の大きな順に、今日は後1時間、12時迄やろう、残りは明日、それで良いかな、」
シオン:「はい、」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます