第016話「激烈の部長会報告」
国府津:「ふーん、状況は分った、」
と、振り返ると、…其処に、
国府津:「部長会はランチョン(注、昼休み食事しながら会議)だっけ、藤沢さん、今の内容スライド2枚に纏めといてくれる、」
国府津:「後、二宮クン、学会発表得意だっけ、」
シオン:「得意って事は無いですが、何度か経験は有ります、」
国府津:「英語喋れる?」
シオン:「少しなら、」
国府津:「上等、じゃあ、部長会報告ヨロシク、」
へ、…?
カスミ:「国府津さん、配属一週間の新人ですよ、未だ会社の全容も分っていないのに、部長会報告なんて無理です、」
国府津:「そうか? でも藤沢さんなら、やっただろ?」
「藤沢さん」のセリフは僕を擁護してくれているつもりなのだろうけど、それは、僕には「藤沢さん」ならやれた事が出来ないと思われているのと一緒なのだとしたら、僕は、そんな風に同情される事に、耐えられる訳が無い、
シオン:「分りました、今の内容を、英語で説明すれば良いんですね、」
国府津:「そう言う事、」
カスミ:「分ってない、国府津さんも無理矢理過ぎです、」
シオン:「予算が足りないのは予算が間違っていたから、修正が必要、ビジネスプランを作り直す、そう言う事ですよね、」
国府津:「素晴らしい、その通りだよ、」
カスミ:「違う、二宮、…会社の報告は大学の成果報告とは違うんだ、ただ事実を伝えれば良いわけじゃないの、事実に基づいて今会社が何をするべきなのかを提案して、判断してもらう場なんだよ、」
カスミ:「今我々が持っているのは、事実だけしかない、こんな状態で持って行ったら、袋だたきに遭う、」
国府津:「うーん、藤沢さんの言っている事は大筋正しいけど、まあ、部長だって鬼じゃない、取って食いやしないよ、大丈夫、大丈夫、」
部長X:「So what?」
部長Y:「それで?」
持ち時間の10分はあっと言う間に30分以上に延長して、物の見事に会議は炎上した、
僕は社内略号に埋もれた質疑応答の中で完全に迷子になってしまい、
「稲毛課長」は事前に報告内容を十分把握していなかったから、フォローのしようも無く、
献身的な「藤沢さん」の弁護も、かえって「藤沢さん」の評判を貶める結果になってしまう、
事態の深刻さ度合いが分らなければ最悪のシナリオを想定して不安になるしか無い、
一刻も早く状況を把握するしか無い、
部長会の結論は「次週の部長会迄にビジネスプランを作り直して持ってくる様に、」と言うモノだった、
今更15億円は増やせないし、開発計画も遅らせられない、
これは、開発部門が他部門に約束した数字だからだ、
元通りの約束を、15億円不足でどうやってやり繰りするか、ソレを一週間で考えろと言う宿題である、
因に通常のビジネスプランの検討は延べ半年に及ぶらしい、…それをたった一週間で?
更に部長会の後、僕と「稲毛課長」は総務部長を兼任する開発計画部の「石立部長」に呼び出されて、再度お説教を喰らう、
石立:「こういう揉める案件はさ、部長会にかける前に相談に来いよ、」
稲毛:「私も、今日の朝、報告を受けたモノで、」
石立:「だいたい、新人に部長会報告させるとか、何考えてるんだ? 普通は課長か、少なくともアシマネ以上が報告するもんだろ?」
稲毛:「すみません、」
石立:「ちょっと酷過ぎる、大至急改善して下さい、」
石立:「一体今日の件の責任者は誰なんだ?」
稲毛:「担当上は国府津さんです、今日から出社で、状況は解っていなかったと思いますが、」
石立:「あの人か、…」
それで、「石立部長」、これ見よがしに眉をしかめる、
石立:「全く、これ以上の面倒事は勘弁してくれよ、稲毛さんがしっかりしてくれなきゃ、どうにもならないよ、」
稲毛:「すみません、」
石立:「兎に角、来週の部長会の前に、遅くとも木曜日の夜には私の所に事前報告を持ってきて、」
稲毛:「解りました、」
と言う訳で、宿題の納期は更に縮まった、…
稲毛:「全く、配属早々、やらかしてくれるよな、」
シオン:「え、これって、僕の所為ですか?」
稲毛:「そうは言ってないけど、そう言わざるを得ないのが今の状況だ、少なくとも部長会の前に私に報告する事は出来ただろ?」
シオン:「すみません、」
稲毛:「ビジプラの組織、動かし過ぎたなぁ、失敗したぁ、」
稲毛:「兎に角、どうやって凌ぐか考えるしか無いけど、国府津さんは何やってんだ? 全く他人事ミタイに任せっきりにして!」
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