第009話「神秘なるキャバクラ」

横浜駅西口南幸橋、通称「ナンパ橋」の袂、

数人のチャライ男に取り囲まれていた「戸塚さん」が、僕に気付いてひらひらと可愛らしく手を振る、…それからニコヤカな笑顔で男達に挨拶して、僕の元へと駆けて来た、



シオン:「同期飲み会に行ったんじゃ無かったの?」

マドカ:「誘われたけど断っちゃった、」


「戸塚さん」は「僕」に向って何だか嬉しそうにニコニコと微笑んでいる、



シオン:「二人で飲みたいって、どういう事かな、」

マドカ:「そのままの意味だけど、もしかして迷惑だった?」


別に深い意味は無い筈なのに、どうしたって僕は赤面してしまう訳で、



シオン:「そんな事は無いけど、ちょっと吃驚しちゃった、」

マドカ:「よかった、実は、行ってみたい店があるんだ、」


一本二本脇道へ入った先の、古いレストランの隣の重々しい扉の前に、…ガタイのでかい黒服の外国人が一人立っている?


「Club Carrot Cake」、…看板の雰囲気から察するに、もしかしてキャバクラ?



マドカ:「女一人で入るのには一寸ハードル高過ぎてさ、」

シオン:「て言うか、どうしてあんな店に行きたいの?」

マドカ:「あんな店?」


キャバクラって、テレビドラマでしか見た事ないけれど、確か女の人が隣に座って色々、…してくれるんじゃなかったっけ?


そんな店に女の子が入っても良いのか、???



マドカ:「駄目かな?」


「戸塚さん」はちょっと困った顔で上目遣いして僕を見る、


もしかしたら「戸塚さん」、どんな店なのか解っていないのかも、でも、エッチな店だとか言ったりしたら、傷ついたりしないだろうか?



シオン:「高いんじゃないかな、僕そんなにお金持ってないよ、」

マドカ:「大丈夫、今日は私が誘ったから私が奢るよ、」


まあ、そこまで言われて断るのも何だか卑怯な気がするし、

もしも凄い店だったとしても、直ぐに出てくれば笑い話で済むかな、


僕は溜息を一つ、…



シオン:「じゃあ、ちょっと覗くだけ、」


こんな時「ナギト」だったらどうするだろう、やっぱりとめるかな、



マドカ:「よし、行ってみよう!」


何だかノリノリの「戸塚さん」は、僕の腕を掴んでまるで強制連行するミタイに店の前へ、


ジロリと「黒服の外人」が僕達を見下ろす、…門番だろうか?もしかして簡単には入れてくれない?それならそうで諦める理由になるし、



マドカ:「あの、入りたいんですけど、」


「戸塚さん」!…女の子なのに何でそんなに積極的なの?



黒服:「Do you have an ID?」

マドカ:「IDって、何かな?」


シオン:「This is the first time that we visit this club, What does mean ID?」

黒服:「Credit card.」


シオン:「クレジットカードだって、」

マドカ:「それは私にも分った、」


僕は、財布からクレジットカードを取り出して「黒服」に見せる、


彼が無表情のまま分厚い扉を開けると、…ドアの向こう側は地下に続く薄暗い階段だった、


何だか、怪しい、怖い店だったりしない?

脅かされて身ぐるみ剥がれたり、「戸塚さん」が酷い目にあったりしなだろうか?


やっぱり、…



マドカ:「わぁ、なんだか一寸怪しい雰囲気で神秘的じゃない、…」

シオン:「ちょっと、…待って!」


どんどん階段を降りて行く「戸塚さん」、



マドカ:「二宮クンって英語しゃべれるんだ、」

シオン:「少しだけね、学会発表で英語使う事が有ったから、」


マドカ:「私TOEICの勉強はしたけど、実際に喋るのは全然駄目みたい、ちょっと尊敬しちゃった、」


で、階段を降り切った所にもう一つのドア、…

が、開いて、中から黒いスーツ姿の綺麗なお姉さんが出て来てお辞儀をする、


黒服のお姉さん:「いらっしゃいませ、」

マドカ:「こんばんは、」


黒服のお姉さん:「上着とお荷物をお預かりしましょうか?」

シオン:「いえ、良いです、…お構いなく、」


店員さんの丁寧な対応で、ちょっと安心したものの、まだまだ気を許す訳にはいかない、


更に中から、同じく黒いスーツに身を包んだ何だか優しそうな年上の綺麗な女性が現れる、



優しそうな女性:「いらっしゃいませ、ご予約のお客様でしょうか?」

シオン:「いえ、突然来ちゃったんですけど、不味かったなら出直します、」


優しそうな女性:「大丈夫ですよ、お二人様ですね、こちらへどうぞ、」


と言う訳で、僕と「戸塚さん」は、あれよあれよと言う間に「未知なる神秘の空間」へと、誘われたのであった、…???

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