第045話「総務部のアジテーティング・ポイント」
結局「国府津さん」が全部支払いを済ませて、…
ナギト:「御馳走様でした、」
国府津:「中華久しぶりだったけど、美味しかったな、」
「ナギト」の機嫌も良くなったミタイだし、そろそろ引き上げようかと「シオン」が「ホノカさん」に声を掛けるが、…
国府津:「二宮クン、一寸飲み行かない?」
シオン:「って、またあの店ですか?」
冴えない草臥れたおじさんが、何だか嬉しそうにニコニコ笑う、
国府津:「そんな嫌そうな顔するなよ、嫌いじゃないだろ?」
シオン:「嫌いじゃないですけど、何だか恥ずかしいんですよ、」
ナギト:「どこに行くんだ?」
シオン:「キャバクラ、」
キョトン顔の「ナギト」に、ぶっきら棒な「シオン」、…
カスミ:「じゃあ、私は此れで失礼します、」
恐らく今晩、中華街で一番綺麗だったに違いない「カスミさん」が、ぺこりと挨拶しながら立ち去ろうとするが、…
国府津:「カスミも良いかな?」
カスミ:「はい、…」
下の名前を呼ばれて、一瞬の内に拒否権は喪失する、
「シオン」達は黒ワゴンとオレンジ・ハッチバックに便乗して、…何時もの横浜駅西口、
南幸橋近くの、旧いレストランの隣、もはや見慣れた重々しい扉、
「国府津さん」がよっと手を挙げると、…
ガタイのでかい黒服の外国人が、無言で扉を開く、
それでゾロゾロと6人で、地下への階段を潜る、
黒服のお姉さん:「いらっしゃいませ、」
階下の店の入口で、黒服のお姉さんが丁寧なお辞儀で迎えてくれる、
ナギト:「すげえ店だな、…」
花帆:「今日はまた大勢ね、」
国府津:「席空いてる?」
花帆:「お蔭様でね、」
「シオン」達は奥の大き目のソファに案内されて、
黒服のお姉さん達が、「国府津さん」のボトルと氷とミネラルウォーターをテーブルにセットする、
花帆:「何か他に、お飲物ご用意しましょうか?」
ホノカ:「シャンパン!…ピンク!」
国府津:「さてと二宮クン、この店の一番良い点は何だと思う?」
飲み物が一通り行き渡ってキャストの皆さんが登場する迄の一時の気まずい沈黙を、「国府津さん」が相も変わらずの難しいクイズで打ち破る、
シオン:「キャストの皆さんが親切な所、ですか?」
「きゃあ!」……と、周りのテーブルから湧き上がる嬌声、
国府津:「成る程な、君も結構抜け目無いナ、…でも私の一番のお気に入りは、「携帯が使えない」事だ、」
改めて見ると確かに携帯のアンテナは一本も立っておらず「圏外」になっている、幾ら地下だからと言っても、…今時珍しい事だ、
国府津:「突然彼女から電話かかってきたりすると不味いからな、」
そう言う理由?
処が実際には、全く外部との通信手段が無い訳でも無い、
クレジットカード支払い用の無線カードリーダーの中継器とか、店のパソコン等はしっかり有線で外と繋がれているし、パソコンにはデフォルトで電波を飛ばすデバイスが内蔵されているから、…その気になれば幾らだって通信出来る、
国府津:「新橋さん、こないだの奴お願いできる?」
ホノカ:「はい、」
それで「ホノカさん」が何やら20cm位の黒い棒をカバンから取り出して、…それを皆の身体やら辺りに
ホノカ:「大丈夫です、半径15m以内に盗聴器の類は感知されません、」
国府津:「さてと、これで安心して内緒話が出来るな、」
国府津:「私は当分の間「忙殺」されてるから、今の内に伝えられる事を伝えて置く、この事は此処に居るメンバー以外には他言無用で頼む、」
カスミ:「分りました、」
途端に神妙な貌付きに成る「ナギト」、
一体何の「謀議」に巻き込まれてしまったやら、と恐れ戦くのも当然ではあるが、
おかまい無しに「国府津さん」の指示は続く、…
国府津:「開発費の件は、…
何でも良いから理由をかこつけて電装開発の業務分担をAI開発チームに付け替えて、…実際の開発も現物評価もやった事の無い連中だからな、「そういう分担」だって言えば「そうなのか」って思うだろう、それで電装開発部隊はサポートって形で参加してAIチームの予算を使えば良い、…予算は開発部門全体で勘定して、部別の予算超過は「期内組織変更」って事で特別扱いで不問にする事、…これで本社経理にはまあ、なんとか言い訳できるだろ、」
カスミ:「分りました、」
国府津:「国産AIの開発が遅れている件は、…
実は私から平塚さんにお願いした事なんだ、…悪いが何かしら理由を付けて平塚さんが総務部に居る時間を増やしてやってくれないかな、」
カスミ:「了解です、」
国府津:「…本社役員が「とある要元」からの要請で、国産AIを使って別の仕事をさせようとしている、予算が足りなくなった理由の半分はこの為だ、」
「国府津さん」は言葉を濁したが、実は日本政府とNAVE本社役員との間で密約が結ばれて、「アリア」に無人兵器の開発を手伝わせようとしているのだった、
「アリアン・アイギス・システム」と名付けられたそれは、当初は「シオン」の警護と言う名目で「リョウコ」も率先して開発に参画していたが、…次第にその域を超えて、より高機能高性能な自立型ロボット兵器開発へと様相を変えつつ有った、
勿論あくまでも「護衛用・防衛兵器」であり、それ故に「アイギス」なのだけれど、AIを搭載した無人兵器を日本が開発している事を外部の第三者に知られると、それはそれで余り宜しく無い印象を与えてしまう可能性がある訳だ、
国府津:「私にはこの件の是非は測りかねる、一概に悪い事とも言い切れないと言う事だ、…いずれにしても君達は詳しい内容は知らない方が良い、」
国府津:「そして困った事に、危惧していた最悪の事態が実現しつつ有る、…」
国府津さんの視線の先に、一目で分かる高級スーツに身を包んだイケメンが登場する、
国家プロジェクト推進メンバーのトップ「山根・コウジ」が、鼻に乗せたレイバンの伊達眼鏡を指先で弄る、
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