第10話 鈍感。モテモテ男子と図書ガール

【黄泉川学園・校舎前】

 数日ぶりに登校した鏡太。

「ホント久しぶりに感じるな~圭介がいないと体に羽が生えた様に感じるよ」

(このまえ一瞬は生えたけどね)と公園で人助けしたことを思いだす。

 そんなところへミニスカで脚線美がエロイ先生が声をかける。

「黒井君おはよう。完全復活したみたいね」

「あっサクラ先生おはよう」

「おかげさまで学校休んだおかげでバッチリです!」

「今日は愛田君いないようだけど何か聞いてる?」

「圭介なら大丈夫ですよ。今頃、川岸でおばあちゃんと遊んでますよ」

祖父母そふぼ、思いなのね。けど愛田君のおばあちゃんて確か。思い過ごしかな?」

「ハハハ・・・」「うふふ・・」

 二人の顔は引きつり笑っていない。


【放課後・教室】

「授業も終わったし何しようかな・・・そうだ!少しアトラクション・パークについて情報収集しておこう。図書室なら何かわかるかも知れないな」

 鏡太はそう言うと教室を出て図書室へと歩いて行く。


【図書室】

「こんにちわ~。あれ?紫音ちゃんいないな」

 図書室に入り辺りを見渡しても紫音の姿は見えない。

「しょうがない、それらしい本探してみるか」

 鏡太は本棚を眺めながら歩いていく。

「難しい本ばかりだな、ドワーフの生態ね~。ちょいと見てみよう」


【ドワーフの生態】

 ドワーフの生息域は北のトロイヤ国。

 身長1m前後で緑色の髪ととがった耳が特徴。

 好奇心旺盛こうきしんおうせいで小さな森の賢者とも言われる。

 職業は学者になる者も少数はいるが、鉱石産出国の為、鉱夫が多い。

 手先が器用な事から細工職人もいる。

 非常に耳がよく、【遠耳とおみみ】なるスキルを使う者もいる。

    

(あの通話これか!なになに接触したときの注意事項もあるな)


 ドワーフ女性は他種族の男性から身を守るための下着を着用しており、これを見たものは体が小さくなるので注意。(早く知ってたら・・・)

※ドワーフ男性が同族女性の下着を見ても効果は無い。 

「圭介、たまには他種族の勉強はしたほうがいいかも」


「あら、鏡君いらしてたんですか」

 後ろから聞こえる紫音の声に鏡太は振り向いた。

「紫音ちゃんいたんだ。留守かと思ってた」

「本の整理してました。何かお借りに来たのですか?」

「え~と。アトラクション関係の本がないかと調べに来たんだ」

「遊園地関係の詳しい本は置いてないです。雑誌に少し記載されてはいますけど」

「そうなんだ。どの雑誌かな?」

「持ってきますね。そちらのテーブルで待っていてください」

 紫音は雑誌を取りに鏡太のもとを離れた。やっぱ紫音ちゃんいてくれると本探しは速いね。ここ学校の図書室てより図書館なみに広いしな~。部員が少ないとホント大変そうだよ。など思いながらテーブルで待つこと5分。紫音が戻ってきた。


「こちらです。このあたりですね」

 紫音は雑誌をめくり遊園地が載っている箇所を鏡太に教える。

「どれどれ絶叫マシーンに観覧車、お化け屋敷とか色々あるね。屋内プールや温泉施設もあるんだね」

「私も行ったことないので驚きです」

「僕もだよ。このエリアには遊園地が無かったからね」

「そうですね。最近、禁止区域の壁近くに出来たらしいですよ」

「紫音ちゃんも知ってたんだ。僕は情報にうといな~ははは」

「あの高い壁のすぐそばだから近所でも危ないんじゃないかとか噂されてます」

「禁止区域の近くだしね。でもなぜ禁止なのかもよく知らないんだよね」

「私もです」

「意外だな紫音ちゃんだと何でも解ると思ってたよ」

「あそこは禁忌タブーみたいですから、一般の人は多分知らないと思います」

「タブーね・・・まあ入ることもないと思うけど」「そうですね」

(何があるのか正直すごく興味がある)入るなと言われたら入りたくなる。そんな感情が鏡太にもあった。


「行かれるのですか?」

 紫音に唐突とうとつに聞かれ驚いた鏡太。

「ど、どこ?禁止区域?」

「まさか~遊園地ですよ、ウフフ」

「な~んだ、遊園地は行こうかと思ってるよ」

 鏡太の言葉を聞き一緒に遊園地へ行きたいと思う紫音の心理戦が始まる。


【紫音の心理戦】

「どなたと行くのですか?」(行ってみたいな)

「あ~家族かな。母さんと妹だよ」(嘘ついちゃった)

「仲がいいのですね」(誘ってくれないかな)

「良すぎちゃって。ハハハ・・・」

「羨ましいです。私も誰か遊園地に誘ってくれないかな」(これならどう?)

「紫音ちゃん可愛いからみんなほっとかないよ。そのうち誘い来るはずだよ」

「だといいですけど・・・」(んもう。鈍感!)

 一時、休戦。


「紫音ちゃんは一人っ子?」「妹がいます。けど」

「あーー思い出した!コミケで会ったんだ」

「そうだったんですか」

「凄く似てるから初めは紫音ちゃんと間違えて声かけたんだよ。朱音ちゃんとホント見分けがつかないよ」

(人狼の事は伏せておこう)

「それでしたら髪をたばねているリボンの色でわかりますよ。私が紫で赤が朱音です」

「おー言われてみればリボンの色違う」

 紫音の髪には紫で長めの可愛いレースのリボン。

「たまに交換してる時もありましたけど」

「えー冗談きついよ~」「ウフフ」「ハハハ」

 二人は会話が盛り上がり良い雰囲気。


「朱音ちゃんてなんていうかBL好きなんだね」

 鏡太の言葉に紫音の表情が少しくもった。

「BLて?よくは知りません」

(たまに部屋に置いてある本の事かな?)

「そうなんだ。まあ姉妹でも知らないことはあるよね」

(何か気にかかるけど、あまり触れずに、せっかくだし別の話題にしよう)

「紫音ちゃん休みは何してるの?」

 その言葉に再び始まる心理戦。


【紫音の心理戦】

「何も。いつもは時間があれば本見てます」(きたわ!紫音ファイト)

「休みも本なんてかなり好きなんだね」(さっきから目つきが怖いな)

「本もいいですけど、たまには体も動かしたいな~」(これでどう?)

「それならジョギングとかいいかも」

「そうかな~」(この唐変木とうへんぼくーー!)


(鏡君、なにを言ってもダメだ~遊園地行きたいけど気づいてくれない)

 紫音はつくずく鏡太が鈍感なことに気がついた。


「お昼は学食?僕は弁当なんだ。母さんが持っていけってうるさくて」

「私もお弁当ですよ。毎朝、自分で作ってます。お料理は結構得意なんです」

「良いお嫁さんになれそうだね」

 紫音はその言葉に照れて反射的に手が動く。

「やだ~♡」(ボクッ)

 グーの右ストレートが見事に決まる。

(紫音ちゃんもう少し軽めにお願い・・・)


「僕いつも屋上で圭介と食べてるんだけど紫音ちゃんは?教室?」

「寒い時は教室ですけど、だいたい中庭です」

 昼はいつも圭介とばかりだしな~。それに今アイツいないから、可愛い女の子と屋上で食べても邪魔されないし。そう思うと鏡太は紫音を昼食に誘ってみようと行動にでた。

「今度よかったら一緒に屋上で食べない?見晴らしいいよ」

「それじゃ、今度お邪魔しますね」(やった!男子とお弁当なんて初めて)

「待ってるよ」(誘ってよかった)

 誘うなら遊園地のほうが良いことに気がつかない鈍感な鏡太。


「紫音ちゃんと初めて沢山喋しゃべったな~」「そうですね、ウフフ」

(ヤバイ可愛い笑顔。楽しい。もう少し話したいけど話題話題はないかー)


「お風呂はどこから洗う?僕ココ」

 鏡太はマヌケにも股間を指差す。

 ウオー!咄嗟とっさになんて話題を!絶対殴られる!終わったな僕さようなら~来週からは鏡太の傷心旅行だよ~。自暴自棄じぼうじきになる鏡太。そこへ紫音の衝撃的な一言!


「私も同じですよ」

(ヤダヤダ!私ったら正直に言っちゃった。恥ずかしい)

 動揺して事実を話した紫音は顔が真っ赤。


「へっ?そ、そうなんだ・・・」

 殴られないけど凄い事実を知ってしまった!同じてことはアソコだよね♡でも見たこと無いからノッペラボウしか想像できないよシクシク。妄想できないで悲しむ鏡太。

 恥ずかしい話題でお互いが見れない二人。

「あ、あの~。それじゃそろそろ僕、行くね。じゃまたね」

「は、はい。またです」

の話題で、って僕、最低だーーー)


【とある少女の日記】

 今日は鏡君が図書室にやってきた。遊園地の調べものらしい。私も誘って欲しいけど鏡君は鈍感。でもお昼は誘われた。嬉しいな。

 鏡君、家族なんて言って嘘つき。ルビーさんて誰だろう?それに母さん助けてーとか言ってたけどなんだろう。BLて言われたけどそれもよく解らない。朱音が見てた本なのかな。・・・朱音。

 いきなりお風呂の話を鏡君するから驚いた。私も何か話題話題て考えてたからとっさに同じと答えてしまった。凄く恥ずかしかったよー。

 それにですって最低ー。

 結局、最後まで誘ってくれないし、一人で行くことに決めた。次のお休みが楽しみです。


 お気づきと思うが紫音はテレパスである。


【通学路・帰宅途中の鏡太】

 背後から鏡太に走り寄る女生徒。

「鏡くーん、今帰り?」

 立ち止まり振り向く鏡太。

「岬さん!あれ部活は?」「今日は早く終わったのよ」

「そうなんですか。家隣りだし一緒に帰ります?」

「うん♡一緒にかえろ」

 そう言って二人は並んで歩きだした。

「鏡君はこんな時間まで何してたの?部活してないでしょ」

「ちよっと図書室で調べものです」

「ふ~ん。私たち昔はよく一緒に帰ってたよね。鏡君ちっちゃくて可愛かった」

「可愛いだなんて、それ小学校の頃ですよね。でもなつかしいな~」

「鏡君はカッコ良くなったよ。うちのバカ愚弟ぐていだけは全然変わってないけど、いまだにスケベ丸出しで女子追いかけてるし、鏡君を見習ってくれないかな」

(ごめんなさい!僕も同罪です!)


「圭介あれでも姉さん思いだと思いますよ。以前、凶暴な犬から守ったことあったじゃないですか」

「あれ?鏡君じゃなかった?」

「違いますよ。あいつズタボロで棒振り回して姉ちゃん逃げろ~て」

「あれ(私の中で美化されてた?)そうだったかな・・あはは。でも小さな時でしょ?今のあいつは歩く核弾頭かくだんとうだわ」

「ハハハ、確かに言えてる。まあ、いざって時はやる男だと思いますよ」

「私としては鏡君に助けられたいな」(キャー言っちゃった!)

「僕なんて念動力も弱いし。先日もボロボロでしたし。岬さん助けるなんてとても。それに岬さん空手してるから大丈夫と思うけど・・・」

「もう謙遜けんそんしちゃって~」

(ドンッ!)吹っ飛ぶ鏡太(ズザー)

「僕、盗塁選手じゃないよ!泣」

 思い切り背中たたかれたけど。この人、外見からは想像できない凄いパワーだ!圭介はこんなの毎日耐えてるのか・・・。鏡太は親友に同情した。

「ごめんね~。つい圭介みたくしちゃった」


「岬さん。あの後、圭介どうしてます?」

 鏡太は生きてるのか心配で聞いてみる。

「あ~寝てるわね。多分今頃、死んだおばあちゃんと一緒だよ」

 この人すまして言ったよ!でも様子は見ておかないと起きたら厄介だしな。しばらく考えた鏡太はポツリとつぶやいた。

「様子見に行こうかな」

「えっ!家に来るの?(やったわ♡)今から?」

 岬はいきなりの訪問にめちゃ喜んでいる。

「家に帰って荷物置いたら行きますね」「楽しみにしてるわよ♡(ウフフ)」

 かなり、ご機嫌な岬はスキップしていた。

(楽しみって、圭介の様子見るだけなんだよ)岬の態度をみて身の危険を感じる鏡太であった。




















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