第8話 危険な小人と不思議なハンマー

【前回のあらすじ】 

 ファミレスで食事を終え、朱音をつれ商店街へといく鏡太。そこで朱音は3人組の人狼にからまれる。それを助ける鏡太。だがボロボロのやられてしまう。朱音の機転により連絡を受けたサクラ先生が倒れた鏡太を病院へと連れて行く。病院で一夜を過ごす鏡太。回復し実家へ戻ったところから物語は始まる。  


 多少のダルさは残るものの、回復した鏡太は病院から実家へ帰った。

【黒井家・リビング】

「やっぱり家が落ち着くな~。病院はヒマでヒマで」

 ソファーに腰掛け背伸びをする鏡太。

「あと、母さんいないと寂しいもんな~て言うと思う母さん!」

「ひどいわ!ひどいわ!せっかく化粧けしょうして待ってたのに」

 陽子は体を左右にふり目をウルウル。なんで化粧する必要があるんだ?疑問に思う鏡太。

「それに帰って玄関あけたら裸でうろついてるし~」        

 玄関開けたら2分で全裸スッポンとかありえん!宅配の人と圭介なら間違いなく襲ってると思う。

「だって~シャワー浴て上がったばかりなのよ。暑いじゃな~い」

「だって~じゃありません!僕がいないからって、だらしがないよ母さん」

 僕がいてもだらしはないよね~と思う鏡太。


「たまにはね、羽伸ばしたいのよ~」

(あんたいつも伸ばしすぎでしょ!)

「裸で飛びついてくるもんだから危うく病院リターンだったよ」

 鏡太は陽子の裸の衝撃より、玄関に倒れこんで後頭部を強打した衝撃のほうがすごかった。

「1日でも鏡ちゃんいないと寂しいの(くねくね)」「あんた子供か!」

「鏡ちゃん今日は休みよね。どうするの?家にいる?母さんと寝る?」

 そう言いながら鏡太の隣にすりよる陽子。

「う~ん、圭介の事が心配だからちょっと出かけるかも」

(なんかこの人。今ドサクサに変な事を言ったよね)

「もう危ないことしないでね」「わかってるよ。じゃ出てくるよ」

「ずでないで~」

 ゾンビの様にすがりつく陽子をシカトした鏡太であった。


【愛田家・玄関前】

「岬さんは学校だろうし、おばさんいるかな」

 そう言うと(ピンポーン・ピンポーン)とチャイムを鳴らす鏡太。

 しばらくするとハーイと返事がして圭介の母が出て来た。

「あら、鏡太君どうしたの?」

「圭介いますか?」

「多分2階にいると思うわ、遠慮なくあがって」

「お邪魔します」

 靴を脱ぎ鏡太は2階へと上がった。圭介の部屋に入ると辺りを見回す。

「圭介ーいる?あれいないな~」

             カラカラ。カラカラ。

「そういえば鳥かご無いな?まさか岬さんベランダに出してるのかな?」

             カラカラ。カラカラ。

「あれベランダにもいない?学校に持っていったのかな?」

             カラカラ。カラカラ。

「うるさいな!圭介さがせないじゃないか」

 カラカラ音にイライラする鏡太。

「ちよっと!さっきからカラカラうるさいよ!」

 鏡太はカラカラ音がする方向をみる。

「圭スキェー(絶叫)ー!」

 鏡太が見た先には回し車に乗っている圭介の姿。ゲージの中でハムスターのようにカラカラ回して運動中。


「なんでそこにいるの!鳥かごなんじゃ?」

 岬さん、いつの間に移動したんだと思う鏡太。

「ん?よう鏡!ちょいと運動不足解消に回ってたぜ」

(こいつ脳みそがハムスターレベルまで退化してるよ!)

「圭介の姿、いっこうに戻る様子がないよね、やっぱりハンマー使う?」

 ゲージに顔を近づけて圭介に聞く鏡太。

「お前170回だぞ耐えれると思うか?何か他の方法考えてくれ」

「死なないんだしハンマーいこうよ~お金は出すからさ」「やだ!」

(岬さんに頼んだことや公園のこと根に持ってるな。仕方ない奥の手)


「母さんのムフフ写真あげるからさ」「マジか!やる!」

 エロい圭介は速攻で返事。単純にできている。

「やっぱやめた。お前ムフフて書いた普通の写真渡す気だろう」      

(バレてた!こいつ妙にエッチな事だと感がいいな)

「わかったよ。解決方法見つけてくるよ」

 しょうがないとあきらめた鏡太は急ぎ圭介の家をでる。


 玄関から出て方法を考える鏡太。

 財布は持ってきたし、所持金もある。ここは一度、ノヴァさんの店を訪ねてみるかな。確か商店街って言ってたよね。行ってみるか!鏡太はそう思うと商店街方面に歩き出す。公園前を横切り・・・コンビニ前を通り・・・商店街の入り口についた。ココからどうするか考える鏡太。


 ノヴァさんは近辺で聞けばわかるって言ったけど・・・。おっ!ちょうど女性がコチラに歩いてくる。聞いてみよう。

「あの、このあたりに語尾に『よ』ばかり付ける人いませんか?」

「ラップの人かしら?」「それはYO!アクセント大事よ。あれ同じか?」

「わからないわね。ほかの人に聞いてみて」


 ノヴァさんすぐわかるって言ったけど有名な店じゃないのか?と思う鏡太。そこへ別の女性が歩いてくる。鏡太は再びたずねる。

「あのすみませ~ん。この辺りにノヴァて方のお店か何かありますか?」

「ノヴァ?どこかしら?もしかしてあれかしらね~。不気味なお店」

「それどこですか?」「つきあたりの路地よ」「ありがとうございます」

 女性にお礼を言うと路地の方へ急ぎ足で向かう。


 聞いた路地にやってきた。辺りを見渡すと薄暗い路地裏に一軒の不気味なお店がある。店に近づいていく鏡太。店の入り口横には小さな立て看板。書いてある文字を読む。

「小人のやかたね。そのままだなw」

 苦笑しながら店のドアを開ける。カラン、カランと来客を知らせるかねがなる。

「ごめんくださ~い。あれ誰もいないな?」

 呼びかけるがすぐに返事が返ってこない。


「ここよここよ」「どこよどこよ」「ここよってそのボケはもういいのよ!」

 ノヴァはツッコミを入れながら陳列棚の裏から出て来た。

「ノヴァさん探しましたよ!」「何用なのよ?ハンマー買うのよ?」

「いやハンマー以外の方法探しに、何かアイテムとかないですか?」

「うーん(考え中)あるのよ!パパが持ってるハンマーよ!」「それどこです?」

「ドワーフの国トロイヤよ。でも遠いのよ」「ノヴァさん帰る予定は?」

「うーん気まぐれ。遠くてすぐには無理なのよ。魔女の大鎌おおがまでもあればいいのよ」

「へっ、それって吸血鬼が持ってる鎌のこと?」「そうなのよ」

「心当たりはあるけど居場所わかんないしな~」「鎌はあるのよ」(ズコッ)

「でも使い方がわからないのよ」

「それもそうか」

 確かにそのとおりだと考える鏡太。

(使い方が解かればいいわけだよね、ルビーを探すしかないか。でも圭介の事だと

教えてくれないだろうし、うまく聞き出すしかないかな)

「使い方解ったら、また来るのでお店にいてください」「了解なのよ」

 鏡太はそう言うと店を出て心当たりがある公園方面に足を向ける。


【森林公園の散歩道】

「出会いは公園だった。それに昨日みたゴスロリはルビーさんだった気もするし、ここに居そうな気がするけど」

 そう思いながら池の周りを歩く鏡太。

「それにしても圭介のせいで、あちこち行かないといけないから散々だよ」

 アホな親友の為になんで僕がこんな目に~とぼやきまくる鏡太。

「探すのやめてハンマー買って帰ろかな・・・。たまには反省させないとね」  

(ゲージ生活も馴染なじんでるようだし放置もいいけど)

「もう!親友だから見捨てられないじゃないか!圭介のバカ!」

 カーン!鏡太は落ちていた空き缶を蹴り飛ばす。


 カコーン!

つう~誰だこら!んーお前は!あの時の」

 近くで寝ていた人狼に見事、空き缶が当たっていた。

    (しまった!昨日の人狼だ!毒攻撃食らったら勝ち目はない)

「おいこら!なに逃げてんだ!待てー」            

(ヒーー!どうしよ!どうしよ)

 追いかけてくるのが速い!これは逃げきれないと思う鏡太!

(なにかないか、逃げきれる道が・・・こ、これは!そうだ羽の例もあるから一応持ってきてたんだ)

「まてー!」

 人狼は怒鳴どなりながら追いかけてくる。もう鏡太のすぐ近くまで来ている。鏡太は逃げるのをあきらめ決心して振り向く。

「こいつにも力があるかも!迷ってる場合じゃない」

 角ケースを握りしめていた鏡太は股間に着ける。角は次第に光りだした。


「キタキタキターーーー。いくぞ!僕に力をくれー」

 その瞬間!・・・ただ光ってるだけだった・・・。

「そんな~もうだめだオカマのバカー!」


「うぎゃー目が!目が!」

 人狼はなぜか目を押さえ転げまわっている。不思議そうに見つめる鏡太。

「ヘッ?!もしかして助かった?」

「貴方!何をしてるのこっちへ来なさい」

 鏡太はいきなり誰かに腕をつかまれ、近くの林の中へ連れて行かれた。


「危なかったわね」

 鏡太は腕をつかんでいた人物を見て答えた。

「どうして?ルビーさんがここに?」

「人狼から逃げてる貴方を見かけて追いかけてきたのよ」

「そうだったのか~。上手く逃げれて助かりました」

「助けるつもりはなかったわ。光の正体が知りたくて好奇心よ好奇心」

 そう言いながらルビーはチラチラ鏡太の股間あたりを見ている。

(何か笑いをこらえてるように見えるけど、気のせいかな?)

 ルビーは鏡太の股間を指差した。

「それいつまで着けてるのよ!早く取りなさいよ」

「イヤーン♡」

 鏡太は恥ずかしくなり急ぎ角ケースを外す。

「僕ルビーさんを探してたんです」「わたし?なぜ?」

「公園で出会った時に大鎌が気になって。それ、どこでも空間跳躍で飛べるんですよね?どうやってるのか知りたくて」

(よし!出だしは順調。上手く使い方を聞き出そう)

「鎌なら無くしたわ(へっ?)昨日から探してるのよ、貴方知らない?」

(もしやノヴァさんとこにある大鎌はルビーさんのか!)

「知りません!いや知ってる気も・・う~ん」「どっちなのよ!」

「あの~鎌探してきたら僕のお願い聞いてくれますか?ちょっと頼みがあるんですけど」

「なにか歯切れ悪いけどいいわよ」

 ルビーは怪訝けげんな顔付きで鏡太を見つめる。

「ちょっと公園の入口で待っててください。取り、いや探してきます!」

 鏡太はそう言うと再び商店街へ向け走りだす。


【ノヴァの店・小人の館】

 カランカラン。ダッシュでノヴァの店に戻ってきた鏡太。

「ゼーゼー・・・。し、しんどい。やっとついたよ」

 疲れ果ててる鏡太をみて状況を聞くノヴァ。

「何かわかったのよ?」

「ノヴァさんが持ってる鎌ってどこで手に入れたの?」

「んと公園くる途中拾ったのよ。売ろうと持って帰ったのよ」(ネコババか!)

「それの落とし主を知ってます。鎌持ってついてきてください」

「わかったのよ。うんしょ。うんしょ。重いのよ。持てないのよ」(ガクッ)

「あの~ここまでどうやって持ってきたの?」「知り合いに頼んだのよ」

「じゃあ、僕が持ちます。さあー早く!」「待ってよ~待ってよ~足遅いのよ」

(この人、足がだ!仕方ない、かついでいこう。下着は見ないようにしてと)

 鏡太は下着を見て縮んではたまらんと注意して肩車。そして大鎌を手に持つと、ノヴァの店を出て公園へと向かう。


【公園入口】

「何アレ?子連れ?」

 ルビーはノヴァを肩車して歩いてくる鏡太に首をかしげる。

「戻りました。ルビーさんこれですよね?」「それよそれ!どこにあったの?」

「ノヴァさんが拾ってくれてました」(ネコババしてたとは言えないな)

 そう言うと鏡太はノヴァを降ろしてやる。

「初めましてなのよ。ノヴァなのよ」

「私はルビー。鎌どうもありがとう」

 二人の挨拶が済んだところで鏡太が約束のことを持ち出す。

「それでお願いの方だけど」「いいわよ何?」

「僕とノヴァさんを連れてトロイヤまで行って欲しいんです」

「そんなこと。お安い御用だわ」「やった!」

 案外スムーズにOKをくれたルビーに喜ぶ鏡太。

「それじゃ飛ぶけど準備はいいかしら?」

 ルビーの近くに寄る鏡太とノヴァ。

「ノヴァさんOKだよね?」

「(コクコク)いつでも飛んでOKなのよ」

「じゃいくわね」

 ルビーが大鎌を一回転させると丸い円の空間ができ、鏡太たちは吸い込まれ消えた。


【トロイヤ国・テト】

 ここはドワーフの国トロイヤ。その一角、鉱山の村・テト。

 鏡太たちは何度か空間跳躍をして、テト村の入り口まで来た。入口からは小さな

家屋かおく軒並のきなみ並んでいるのがわかる。遠くには小高い丘も見て取れる。

※ルビーの空間跳躍は長距離だと各土地を一度、中継しなければ一気に飛ぶことが出来ない。


「ここがトロイヤ国。ノヴァさんの故郷テトなんだね。村の人はドワーフばかりだから僕たちが巨人にみえるよ。それでノヴァさんの家はどこかな?」

 多種族が来るのが珍しいのか?身長のせいなのか?鏡太達は村人から注目を浴びていた。ノヴァは鏡太の問に家がある方角を指差した。

「あそこに見える丘の上なのよ、大きい人は足が速いからすぐなのよ」

(ほんとだ、僕たちから見ればすぐ近くに見える)

「それじゃ家に向かおうか」

 鏡太はノヴァをおんぶし、ルビーを連れ家屋や商店が並ぶ一本道を歩く。


 前方に見えていた丘の上まで来ると小さな丸太小屋が一軒建っていた。

 一同は小屋の前で立ち止まる。思いの外ノヴァの家は小さい。

「入り口がこれじゃ入れないね・・・どうしよう」

 ルビーもそうねという。ドアが小さい事に悩む鏡太。

「待つのよ。パパ呼んでくるのよ。パパただいまー」

 ノヴァはドアを開けて中へ入り帰郷の挨拶をする。パパが応対してるようだ。

「おお~ノヴァお帰り。仕事は順調かい」「サボったのよ」

「いつまでいるんだい?」「用事すんだらすぐ帰るのよ」

「ママに逃げられてからパパ一人で寂しいよ(オロロン)」

「今度ママの変わり連れてくるのよ」「いつだい?」「さあなのよ」

 親子の会話が外にも聞こえる。(パパさん大変だな~)

「それでね、パパのハンマー貸してほしいのよ」

 ノヴァはパパに事情を説明している。


 ノヴァのパパが家から出てきた。

「娘から話は聞きました、ですがハンマーは今はないのです」

 それを聞いた鏡太はガックリとうなだれ、つぶやく。

「そんな~。せっかくここまで来たのに・・・」

「手元にないってだけですよ。近くの広場に今は置いてありますのでお持ちになってください」

『ははは・・・』鏡太は苦笑い。拍子抜ひょうしぬけしている。

「パパは村長さんなのよ。お祭りの時に広場にハンマー移動してたのよ」

「そうなんです申し訳ない。あのクソ、いや戻すのが凄く面倒で、そのまま放置したままなのです」(クソ?ってなんだろう)

「分かりました取りにいきます!行こうみんな」「パパまたくるよ」

「ノヴァ~新しいママたのむよ~」

 ノヴァの案内でハンマーがおいてある広場を目指す。


 近くの広場にきた鏡太は口をポカーンと開け棒立ちになった。

「デカッ!デカすぎる!それに重い!持てないこともないけど・・・」

     (まるでどこかのアニメで見る1000tハンマーだよ)

「パパのハンマーは一発で元に戻るのよ。効果抜群なのよ!」

「そ、そうなんだ(ヒクヒク)これ叩いたら死なない?」「死ぬと思うよ」

(ごめん圭介成仏してね、結局1回は叩かないと無理みたい)












  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る