第4話 吸血鬼は怖い美少女

 放課後。帰宅途中の鏡太の目前に不審な人物がいる。

「なにしてるんだろ?」

 マスクにサングラス。いかにも怪しい人物は電柱の影に隠れている。

 鏡太が目の前を通り過ぎようとした瞬間、不審人物は話しかけてきた。

「おい、遅かったな!」「あなた!だれですか!」

 後ずさる鏡太に近づいてくる男。

「オレだよオレ」「僕はだまされません!絶対振込まないよ!」

「鏡、落ち着け圭介だよ」

「圭介にも振込みません!キャーーー助けて母さーーーん!」


「ヒデェな~鏡」

 そう言ってサングラスとマスクを取り涙を流す圭介。

「ハハハ、だって圭介のあわてぶりがおもしろ過ぎてさ」

「俺マジでショックうけたぞ。姉貴から逃げてきて頼れるのお前だけだし」

「ごめんごめん。で、大丈夫なの?」

「この辺りにはいないから大丈夫だろうけど予定どうり、お前の家いくわ」

「家きたら僕もなんとか誤魔化ごまかしてみるよ」

「一応、変装はしておくか」

 変装道具を着用する圭介。二人で歩いてると異様な光景に見える。


 黒井家の玄関前に到着した二人。

『母さんただいま~』

『鏡ちゃんおかえり~』と玄関先に出てくる陽子。しかし隣の圭介に気づき後ずさりする。

「あ、あなた誰ですか!」

「俺ですよ俺」

「俺には振り込まないわ!助けて鏡ちゃーーーん!」

 鏡太にすがりつく陽子。(さすが母さん同じことしてるよw)

「ひどいですよ~おばさん。親子でからかうなんて」

 圭介は今にも泣きそうだ。

「圭介君、おばさんじゃないでしょ!陽・子・さんでしょ」

 料理をしていたのか、包丁を圭介につきつける陽子が怖い鏡太。

「母さん。今日は圭介うちに泊まるから」

「泊まるなんて久しぶりよね、また岬ちゃんから逃げてるの?」

「陽子さんの手料理が恋しくなってきました~」

『や~ね♡』陽子は包丁をブンッと振る。圭介の前をよぎる包丁。

「母さん包丁、包丁!」

「今カレー作ってるから夕飯楽しみにしててね」

「はい!お前の部屋いこうぜ」

「できたら後で呼びにいくわね~」


 鏡太は圭介を連れ自分の部屋にきた。

「お前の母ちゃん変わらず美人でバインバインだよな~。あれで三十路みそじには見えないよ」

自称じしょう二十歳ハタチだからね、年齢にれると確実に撃たれるよ」

「鏡、カーテンしめていいか?姉貴帰ってきたら部屋の中、確認くるはずだし」

 圭介はシャーとカーテンを閉め、ベランダの窓鍵もかける。


「俺が逃げてから図書部の女の子どうした?」

「どうしたも本を運んで会話して名前聞いただけだよ。圭介が逃げるからリストなくて続きやれないし」

「わり~。わり~。で名前なんだって?」

「琴川紫音ちゃん1-Dだって」

「同じ1年か~。大人しそうで意外と可愛かったよな」

「うん。図書部員だけあって色々と詳しいし、帰りに1冊借りてきた」

 鏡太はカバンからゴソゴソと本を取り出し圭介に渡す。

「どれどれ吸血鬼ね~、なんでこれなんだ?」

「吸血鬼て僕たちと同じ不死族じゃん。どんなスキル使うのとか、生態とか興味がでちゃって」

「やっぱ俺たちとは違うよな、知っておいてもいいかもな」


 吸血鬼の本のページをめくり、口に出して読み上げる圭介。

「え~と、吸血鬼は男女いると思われているが女性だけである」

「なんですと!ハーレムじゃないか(でれ~)」

「圭介、女性だけってことは男性がいらない、もしくは理由があるはずだよ」

「ガーン、けどよ子供どうするのよ?」

「それも続きを読めば書いてあるんじゃないの?」


 鏡太の言葉に再び本をめくり話しだす圭介。

「なになに、吸血鬼は子孫を残すために血を吸う。吸った相手が強い子孫を残せる血液と思われる場合は性別問わず、体内で血液から精子を作り出し受精する。なお生殖器と思われる物もついてはいるが子供を産む為だけのものである」


 よく理解したのか解らない圭介は飛んでもない一言を放つ。

「なるほどな・・・。パッコン。パッコン。エッチな事は出来そうだな」

「血を吸われて干からびてないとね。僕達は不死だけど先に血を吸われたら再生に時間かかるから動けないよ」

「吸われる前に押し倒して吸う!」

 強行手段を言う圭介。

「どこを?おっぱい?」

 と尋ねる鏡太。コクコクと頷く圭介。

「それやったら犯罪だよ。何考えてるの!正当防衛でも吸うはありえないかも」

 我ながら親友の馬鹿さに溜息をつく鏡太。


「ほかに吸血鬼の特徴とかある?羽とかあるのかな?」

 鏡太は圭介に特徴がないか調べさせる。

「え~とだな。身体的特徴は俺達とあまり変わらないが髪は金髪らしい」

「金髪か~。ツンデレちゃんかもねw他は何かある?」

八重歯やえばくらいのキバはあるみたいだな」

「金髪見かけたら吸血鬼の可能性があるってことだね」

「見た目で判断すると金髪しかないよな。ま~あれよ可愛けりゃOK。それに簡単には出会わないだろ」

「圭介はいつも楽観的だよね」

「そうでもないぞ姉貴のせいでな・・」

 思い出したくないのか結構へこんでいる。

    

    吸血鬼。何か忘れてる。そんなモヤモヤした気持ちの鏡太。


 コンコンとノック音。ガチャ。ドアが開き陽子が顔をだす。

「夕飯できたわよ~、勉強してたの?」

「うん。勉強ていえば勉強」

『どんなの?』としげしげと本を見る陽子。『エッチ♡』とつぶやく。

「違うよ!吸血鬼だよ。図書室から借りてきたから読んでたの」

「図書室か~。私もよく借りて読んだわね・・・」

 学生時代を懐かしんでる陽子。

「陽子さん。どんなの読んでたの?」

「そ~ね~。恋愛物とか推理とか、将来のために読んだのもあったわね」

 陽子は遠い過去の記憶を思い出そうとしている。

「なんだったかな~。あっ!そうそう正しいゾンビのなんたらよ」


「母さん!(;ω;)泣」(僕はたくましく育ちました)


「あらあら。ところで吸血鬼だけど私の友達にいるわよ。昔は子供連れてよく遊びに来てたわね」

「へ~そんな話、初耳だよ」鏡太と圭介は意外な話に興味が出た。

『さて、話は後にして、ご飯しましょうか』と陽子に言われ続きはまたの機会となった。


 鏡太と圭介は渋々しぶしぶながらキッチンに来て食卓に座る。

「あ~いい匂い。おば、いや陽子さんのカレーなんて小学校以来かも」

「そうだっけ?結構食べてる気するけどね」

『はい』と言って二人にカレーを渡す陽子。

「たくさん作ったから遠慮なく食べてね」

 鏡太&圭介:「いただきま~す」

「あれ騒がしいと思ったら、圭介兄ちゃん来てたんだ。お母さん私にもカレーちょーだい」

 恵もテーブルに座る。『恵、はいスプーン』と手渡す陽子。

 

「恵ちゃん成長したね」

 圭介は自分の胸に手をあててプルンプルンする。

「圭介兄ちゃんのバカ!」ヒュン!グサッ!

(あ、頭にホークが!恵みこえーー!)

「あら間違えてた!食べる前で良かったわ。はい、恵ちゃんスプーン」

(母さんそれでいいのか・・)

「鏡、気になることがあるんだけど」

(頭か?ホーク気にしろよ!)

「陽子さん見てなんか違和感があるんだよ・・・。どこかで見たような?」

「時々、会うからそう思うんじゃないかな」

(こいつもしや!)もぐもぐもぐ。

「今日、駅前でね可愛い服着たお姉さんからテッシュもらったの」

(恵よかったな。お兄ちゃんも可愛いお姉さんにもらいたいぞ)


「あれってコスプレて言うんでしょ」「ブーーー!」

「鏡、汚いな!ちゃんと食えよ」

「どうしたの?」恵と母さんが聞く。

「なんでもないよ。お替りもらおうかな」

「コスプレて言えばさ」言葉の途中で考えてる圭介。


「あーーー!婦警ふけい!」

 突然、陽子を指差した圭介。鏡太は強行手段にでる!

「圭介お替りだよね!ほれ食え!ほれ食え!美味いか?美味いのんか~」

 鏡太は皿ごと口に放り込む。『モゴゴゴ』怒涛のカレー詰め込みに頬張る圭介。

「鏡ちゃんフケイてなにかしら?」

「父兄参観日だよ母さん!そうだよな圭介!」

 圭介の後頭部を怒突どつきながら首をカクンカクンと動かしてやる鏡太。

「いつあるの?何着ていこうかしら、速く言ってくれたらいいのに~」

(なんとか誤魔化したフゥ~。速く食べて退散したほうがよさそうだ)

「ごちそうさま、圭介いくよ!」

 鏡太は悶絶寸前の圭介を引きずって2階へと上がる。


「二人共どうしたのかしら?恵ちゃんお母さん何着て行けばいいと思う?」

「コスプレ」平然と答えた・・・


 鏡太の自室へ戻ってきた二人。圭介はようやく理解したように話しだした。

「お前、陽子さんて気づいたからコスプレ本破いたんだな」

「だってさ。圭介この気持ちわかってよ~」

「わかるぞ友よ!(泣)俺の母ちゃんなら自殺ものだからな。死ねないけど」

    (圭介のお母さんのコスプレね・・・想像したら胸焼けが)


 ピンポーン!ピンポーン!玄関のチャイムが鳴る。

「圭介。誰か来たみたいだね」

「まさか姉貴じゃ!」

「しまった!母さんに説明するの忘れてたよ」

「マジ!やばいやばい!どこか隠れないと」

 あわてた圭介は本をパラパラとめくる。

 タンスをバタン・バタンと開けたり閉めたりしている。

 最後は机の引き出しに頭を入れている。

          「そこからは未来にはいけないよ・・・」


 そんな中、陽子が玄関先へ出て来客の対応をしてるようだ。

「は~い。あら、岬ちゃんどうしたの?」

「うちの圭介来てませんか?」

「さっきまでいたけど鏡ちゃんと二人でまた出かけたみたい。コンビニかしら?」

「そうですか。圭介が戻ってきたら家に帰るよう伝えてください」

 お邪魔しましたと岬は帰った。


 岬と陽子の会話をドキドキして聞いていた鏡太と圭介。陽子のフォローに親指を立てた。

「グッジョブ母さん!うまくやってくれたね」

「さすが陽子さん!よくわかってる」

「あのさ圭介、母さんの話で気になってるんだけど」「姉貴か?」

「いや母さんの友達のこと、子供連れてきてたって事は僕達、会ってないかな」

「小学校くらいまでなら、だいたいは覚えているけどな」

 う~んと圭介も考えている。


「僕もなんとなくだけど、近くの公園で金髪の子と遊んだ気がするんだよね」

 鏡太はおさなき日の記憶を圭介に話す。

「う~ん。そんなことあったか?あ~ダメだ思い出せね~。何だか考えたら熱くなってきた。鏡、窓開けていいか?」

「うん。でも気をつけてね」「ああ。少しだけ開けるよ」

 圭介は窓際に立つとカーテンを開ける(シャー)

「いーーたーーなーー!」窓越しに見つめ合う岬と圭介。

『ギャーーー!』絶叫する圭介。

 ドアを開け二階から転げ落ち、玄関から逃げて行く。

「ヒーーー!み、岬さん」

 さすがの鏡太も岬の行動に恐怖した。

「なんでバレたんだろ?」

 しばらく考えたが、それも岬の怒声で理解した。

「あんたの靴、玄関にあったからバレてるんだからね!」

 そう言い残し、岬は圭介を追い掛け何処どこかへ消えた。


「圭介、大丈夫かな。この状況は絶対帰れないよね、仕方ない探しに出よう」

 昼間と違い夜は肌寒い。鏡太は少し厚着をして玄関先へ。

「母さん。ちょっと出かけてくる」

「遅くならないでね、気をつけていくのよ」

「うん。わかってる」

 玄関のドアをあけて道路へでる鏡太。

「さて、圭介どっちへ逃げたのかな。う~ん近くの公園から探してみるか」

 辺りを注意深く見回しながら公園へ足を向ける。


「さすがに夜くると公園は静かで暗いな~」

(キョロキョロ)と辺りを見ても圭介はいない。

「圭介どこまでいったんだよ。コンビニも見てみるか。また変装して茂みにでもいるのかな?」


 コンビニ付近にやってきた。遠くからコンビニを見つめる鏡太。

「あれ。店の外に誰かいる。ヤバっ岬さんだ!」

 岬は逃げ込みそうな場所に網を張っている。

「商店街の方に回ろう」


 圭介~と商店街を小声で呼びながら探す鏡太。

「大声だせればいいけど、岬さんに聞かれる恐れがあるし用心用心」

 静かな商店街には圭介の姿はない。

「ウーン、商店街もいないな~」

 鏡太はもしかしたら家に戻ったかもしれないと来た道を折り返す。


 公園の付近まで来たとき『助けて・・・』と誰かの声がかすかに聞き取れた。

「今なんか声が聞こえた!どっちだろ?」

 鏡太は声がする方へ行くと、公園の中で足を止めた。

「声はここから聞こえた!、誰かいる!」

 人の気配に気づいた鏡太は物陰に隠れて様子を見る。


 暗闇から男女の声が聞こえてくる。

「貴方、覚悟は出来てるわよね!」「もうしません!しません!」

(この声は圭介だ!もう一人は女性?、暗くてよく見えないな)

「私が寝てる時に覗くなんて万死に値するわよ!」

 女性の声は怒気を含んでいる。

「どうしても見たかったんです。許してください」「死刑!死刑!死刑!」

 ヒーーーー!と圭介の叫び。


 だんだんと鏡太の目は暗闇に慣れ、相手の姿が見えてきた。

 大きなかまを振り回す少女。金髪の長い髪に黒いワンピース。

 襟元には赤いリボン(ゴスロリ?)

 月明かりの助けもあり容姿がはっきりと確認して取れた鏡太。

 美少女というに相応ふさわしい顔立ち。

 身長は鏡太よりやや低めで、大鎌を振るうには似つかわしく無い細身の体。

 髪は月明かりでキラキラと輝いている。


 大鎌おおがまを振り回す少女の攻撃を圭介はたくみに避けている。

「観念しなさ~い」

 執拗しつように追いかける少女。それをじっと見つめる鏡太。 

「出ていきたいけど、鎌持ってるから迂闊うかつには飛び出していけないな」

 何か良い手が無いか考える鏡太。

「そうだ!僕の能力なら腕なら数秒なら止めれるかもしれない。やってみよう」

 少女の腕へ意識を集中する鏡太。『ハッ!』鎌を振る手が止まる。

「今だ圭介!鎌とって!」

「な、なによこれ?手が動かないわ!」

 少女は状況がわからずにオロオロしてる。

 圭介は『お、おうっ!』と答えると鎌を取りあげ鏡太に聞いた。

「こいつ動けないのか?」

 圭介の問に『うん』とうなずく鏡太。

「やったな鏡。サンキュー。それじゃ今のうちに仕返しを」

 圭介はやらしい目つきで少女の胸めがけ手をニョキニョキして近寄る。


「こら寄るな変態!」

『チンッ』嫌がる少女の前足攻撃。『ウゴっ!』圭介は思いっきり股間を蹴り上げられた。

「遅かった、腕だけって言おうとしたのに~」

 そして圭介は動き出した腕により見事に吹っ飛ばされた。

「ボクッ!ホゲーーー」

  

「そこの貴方!こいつの仲間ね。今、なにしたのよ?」

 鏡太を指差す少女。見つかった鏡太は少女の前に出ると問いに答えた。

「鎌が危ないから念動力スキルを少し。ところでなんで圭介追いかけてたの?」

「なんでも何もコイツ私が寝ている隙にスカートめくってたのよ。絶対許さないんだから!」

「それは圭介が悪いね」

 冷たい眼差しで圭介をみる鏡太。

「だってよコイツ(少女)夜の公園で寝てるんだよ。怪しいだろ。それに金髪だろ。調べたくなったわけよ」

「怪しいのは圭介もだけどね。けどスカートはだめだよ」

「口とか見ればすぐわかるじゃん」

「それは男としてあれだな」


 圭介をにらむ少女。鏡太はヤレヤレと馬鹿な親友を見つめ、助けてあげようと少女に話しかける。

「君の許せない気持ちもわかるし、ここは罰として圭介に逆立ちとか正座とか死なない程度でやらせていいから、それで許してやってよ。このとおり!」

 両手を合わせ頼み込む鏡太。少女は納得したように話しだす。

「罰ね~いいわよ。それで許してあげる」

『助かったー』と安堵する圭介。

「あなた!安心するのはまだ早いわ。罰と言っても呪いよ。フフフ」

 少女はブツブツと何やら呪文のような言葉を言い出した。


「はい、おしまいスキルは発動したわ」

「何もないぞ?」

 圭介は自身の体や周りをキョロキョロ見渡す。

「そのうちわかるわよ、家に帰るから鎌を返して頂戴」

 圭介と一緒に飛んでいった鎌を拾って置いた鏡太は少女に差し出す。


『ありがと、これで帰れるわ。ではまた会いましょう』

 少女はそう言うと鎌をクルリンと大きく一回転させる。すると少女の背後に丸い空間ができる。初めて見る光景に鏡太は驚く。

 謎が多い少女に興味を示した鏡太は再開を思って少女に名前を聞く事にした。

               「君、名前は?」

            『ルビー・ブラッド・ブルー』

 少女はそう答えると暗闇の空間に消えていった。   

「ルビー・・・。彼女はいったい何者だろ?」























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