第32話 ポプラ遺跡攻略。魔導具の力

 再び魔導具ドーラムをたずさえポプラ遺跡へやってきた鏡太パーティー。

 今回は新しい仲間キム・リックも同行している。

 ボスを攻略について具体的な作戦が思いつかなかった鏡太。岬がドーラムを使うすきをどうやって作ろうかと遺跡の中を歩く中も考えていた。


 パーティーは水路の左奥にあるワープポイントの場所へ来ていた。

【パーティー構成】鏡太・圭介・岬・アリサ・ノヴァ・朱音・ルビー・キム


「まずは剣を刺して精霊の間までジャンプだね」

 鏡太は台座に剣を差し込むとパーティーは瞬時に精霊の間についた。

「鏡太それ見せてにゃ!見覚えあるにゃん!転送キーにゃんね。それは大事にするにゃんよ。色んなとこで使うはずにゃん!」

 キムは古代文字が書かれた剣を見つめてそう言った。鏡太は今までの冒険でそうではないかと確信して、剣をいつも持ち歩いていた。キムの発言でさらに重要性が判明し大事にリュックにしまうと鏡太は話しだした。


「キムさんがいると色々わかるので助かります。ここは安全エリアでボスの間まではすぐのとこだけど、僕は正直ボスを倒すまでの方法が思いつかない」

「そうですわね~。武器はあるけど近づく前にやれてしまいますわ」

 直にボスを見たアリサも難しいと判断している。

「あの速いレーザー攻撃を回避して、どうやってドーラムを打ち込めるのか。みんなの意見が聞きたいんだ」

「鏡太が悩むのも解るわ。私もそれずっと考えてたもの。この前みたいに誰かが犠牲になるのは、もう嫌!あんな思いはしたくないわ」

 ルビーも今度はリスクが高いとわかっている。レーザーに当たれば恐らく即死だろう。皆も同意見なのかコクコクとうなずいている。

「私やノヴァさん、朱音さんのスキルも役に立ちませんわね」

 アリサの言葉に朱音とノヴァもうなずく。そんなときキムが話してくる。

「ソレどんなやつにゃん?レーザー使うのなら少しなら耐えれるニャン!」

 キムの発言に驚く鏡太。

「なんだって!それホントですか?でもキムさんてスリープの呪文しか使えないんじゃ?」

「呪文で聞かれたから答えて無いだけにゃ!スキルが使えるにゃん!」

「スキル?そうか!確かに呪文しか聞いてないけど、僕達にスキルがあるのなら古代人にもあるはずだ!それでどんなスキルですか?」

「ウォールにゃん!障壁が張れるニャン!ただレーザーだと長くは持たないにゃんよ~」

「長くは持たないか~。これは賭けになるかも知れない。キムさんが持ちこたえれば隙をついてドーラムで倒せる。でも失敗すればキムさんは・・・」


 鏡太も皆も悩んだ。昨日、仲間になったキムさんでも仲間には違いない。


「やるにゃんよ!鏡太達が困ってるにゃ。助けるのが仲間にゃ!あたち悪運強いにゃん。ここまで生きてこれたにゃ!後悔しないにゃ!」

「き、キムさん・・・。わかりました。もしものときは念動力全開でボスを止めますからキムさん逃げてください!」


 そうはいったが鏡太は巨大過ぎる機械のかたまりを止める自信はなかった。なぐさめ程度しか言えない自分を鏡太は情けなく思った。


 皆は覚悟を決めボスの間まで来た。

「キムさん頼みます。岬さんはキムさんが耐えてる間にドーラムでお願いします。・・・僕は見ている事しか・・・」

 落ち込む鏡太を励ますルビー、朱音、アリサ。

「鏡太、私も同じ気持よ。仲間の無事を祈りましょう」

「鏡君、わたしも出番がないの。でも仲間を信じるの!」

「鏡太らしくないわよ!あの言葉忘れたの!」

「ああ、アリサ覚えてるよ。一人は皆のために、皆は一人の為に。今がまさにその時だ」

「そうなのよ!みんなが困ってる時は同じ事をするなのよ!」

「鏡太。俺いつも馬鹿してるけど、今回の冒険でよくわかったぞ。一人じゃ冒険は無理だってよ。仲間を信じようぜ!」

「そうだな圭介。僕達は困難を乗り越えてきた!これから先もまだ冒険は続く。仲間を信じて突き進もう!」


「鏡太カッコいいにゃんよ・・・。あたちを仲間として見てくれただけで嬉しいにゃん・・・」

「鏡クンがんばろう。私も一緒にどこまでもいくからね」

 キムと岬はそう言うと扉を開けて作戦にでた。キムは障壁しょうへきを出しながら左側へと移動していく。それを見つめる岬とパーティー。古代兵器はキムを補足した。

『侵入者発見!排除に移行する』

 キム目掛けレーザーを照射する魔導兵器。キムはそれに耐えながら左奥へと移動する。魔導兵器もキムに合わせて移動を開始する。

「にゃにゃにゃ。このレーザー強いにゃ!これは辛いにゃんよ!」

 尚もレーザー照射は続く。キムもソロソロ限界が来ている。

「もうだめにゃん!まだかにゃん!」

 魔導兵器の動向を見つめていた岬。呪文を詠唱し始めた!


虚無きょむ彼方かなたうごめく雷鳴よ。紫電しでんおりと成り敵を滅ぼせ!】


「もうだめにゃん!」

 キムの障壁しょうへきが消えた!そこへ隙かさず照射されるレーザー。

 キムの右腕が宙を舞うと同時に岬の詠唱完了!


 キリム・イル・カーン。いでよいかずち『ライジング・ドーム』


 魔導兵器めがけ爆雷の槌ドーラムを打ち付ける岬。

 ブーンと言う音がすると魔導兵器の周りに球体の様な空間ができた。

 球体はバリバリと音をたて、イナズマが走る。そして魔導兵器は爆縮した空間ごと消滅した。


「やったようにゃんね。さすがに疲れたにゃん・・・」

 魔導兵器が消えたのを確認した鏡太は、倒れているキムの元へ一目散いちもくさんに駆け出していた。

「キムさん!腕が!腕が!今止血します!」

「鏡太、大丈夫にゃ~よ。暫くすれば再生するにゃん。それより役に立てて嬉しいにゃん」

「ありがとうキムさん!キムさん居なかったら攻略できなかった・・・。本当にありがとう」

「ありがとうはいらないにゃん。仲間にゃ!それより速く目的達成するにゃ~よ」

「ルビー魔導具の方は頼むよ!僕は心配だからキムさんについてるよ」

『わかったわ』そういうとルビーは魔導具のほうへと歩きだした。他のメンバーもそれに続く。

 ルビーはダリア遺跡の柄の部分と鎌を組み合わせ始めた。

 2本の刃を持つ、風月扇ふうげつせん『リリカント』は完成した。


「やったわ鏡太!ついに完成よ!これで魔導具が2つ。次は封印解除ね」

「そうだね。そろそろ情報が入ってるかも知れないね」

「鏡クンやったわ!ドーラム上手く詠唱できて良かった!」

「岬さんギリギリ間に合って良かったよ。ホントお疲れ様」


 鏡太のパーティーはキムの回復を待ちポプラ遺跡を跡にした。


 ネクロに帰ってから数日が過ぎた頃、バレンタインの石碑の場所と封印呪文が解ったと知らせが来た。

 呪文はシルバーさんの知人の学者さんの研究で解ったらしい。石碑は人が立ち入らないローズの山奥に眠っているとのことだ。

 鏡太は皆に連絡。再びパーティーを組み現地へ足を運んだ。


 苦労の末、石碑を発見!今まさに、その場所で封印を解く鏡太達。

「それじゃ封印解除やるよ」

 鏡太は風月扇『リリカント』を石碑の前に置いて呪文を唱えた。

『ヒル・メキア・オン』

 石碑は発光し、まばゆいい光が辺りを覆う。発光が収まった黒い石碑は緑色に変化していた。

「恐らく色が変わったから成功だと思う」

「そうね。テトの時と似てるわ。さあ目的達成したし帰りましょう。今日は家でごちそうするわよ!」

 ルビーの言葉に晩餐ばんさんを期待しながら山を降りるパーティー。行きよりは気分が爽快であった。


 それから再び数日が過ぎた。

「鏡太おはようにゃん!このおウチは中々、住み心地いいにゃんよ」

 キムさんはポプラ遺跡の後、うちに来たいと言い出した。

 母さん説得にどれだけ苦労したことか。もうロリコン罵倒の嵐!

 でも思わぬ事をキムさんがやってのけた。キムさんのスリープは応用で催眠みたいなことが出来るらしく、どうやら親戚扱いとなった。

 それで今は黒井家の庭に家を立てて住んでいる。建てたのは岬さんとノヴァさんとパパさんだったりするんだけど・・・。


 ある日の事。キムさんが僕の部屋に来ていた時、思わぬことを口にした。

「鏡太この杖どうしたにゃん?」

「それオカマの人にもらったんですよ。それが何か?」

「これ魔導具にゃんよ。昔、見た覚えがあるにゃん。名前は忘れたけど確かパカーて海面を割る杖だと思うにゃん」

「ほ、ホントですか!てことはジャポネアかペンタグラムのどちらかの魔導具てことですね。また一つ前進です!」

 思わぬところで手がかりを得た鏡太。さらに情報を得ようと行動する。

「これは魔理さんかベルさんにもう一度聞く必要が出てきた。ちょっと出かけてきます」


 鏡太は公園にやってきた。ベルの露店に一目散に足を向ける。ベルは元気よく声をかけてきた。

「よう鏡太!今度こそデートの誘いかい?」

「違いますよ!この杖なんですが海面を割る道具らしいんです。そこでそんな噂とか古い話とか聞いたことないかと、知りませんか?」

「う~ん。あたいが小さい時に童話か何かで聞いたことがあるような。ペンタグラムには海底神殿が近くにあるんじゃないかと、昔から噂はされてるよ。本当にあったとしても行く手段がないと思うけどね」

「それだ!これはペンタグラムに行って情報収集するしか無いかな。ありがとうベルさん!良い情報が聞けました」

 鏡太は道すがら次の目的がハッキリ見えたこと、新しい土地への期待感でワクワクしていた。

「次の目的地はペンタグラムの海底神殿だ!」


【第一部・完】











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ゾンビなんて大嫌い! 高見 雷 @taka-mirai

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