第30話 ポプラ遺跡③ ー精霊と真実ー

【前回のあらすじ】

 巨大アリがいるエリアに辿り着いたパーティー。小型のアリのせいで先へと進めずにいた。そんな時、圭介が自分が女性を通路まで運ぶと言い出す。アリに食いつかれながら懸命に女性全員を通路へ運んだ圭介。だが、圭介は深手を負ってしまう。圭介が回復する間、探索にでた鏡太、ルビー、アリサ。ボス部屋を発見。様子を見ようと中へ入るが予想だにしない攻撃を喰らい逃げ帰る。ボス攻略の糸口を見つけるため圭介の回復を待ち、パーティーは進んでいない通路を目指す。


 圭介は再生し歩けるようになった。目的は二股に分かれた下り階段の先。

 地下へと古代兵器を倒す手段を求めパーティーは足を進めた。

【パーティー構成】鏡太・圭介・岬・アリサ・ノヴァ・朱音・ルビー


「まだ未知のエリアが先にある。みんな気をつけていこう」

 鏡太のパーティーは地下への階段を降りていく。階段は地下深くまで伸びているようだ。圭介を待つ間に休息を取れた事もあり、一同に疲れの色はうかがえない。長い階段を下りると直線通路にでた。


「こっこからは直線通路みたいだね。今までの通路に比べると何だか虫一匹いないし雰囲気が違うね」

「確かに言われたらそうね。何か魔法じみた空間のような感じがするわ」

 ルビーも今までと雰囲気を感じている。

「ドワーフの森の感じに似てるのよ。精霊がいるかも知れないのよ」

 ノヴァは精霊を見たことがあるみたいだ。

「精霊てどんなのかしら。見たこと無いですわ」

「形あるものじゃないのよ。光のようなものなのよ」

「へ~。僕も見たことないから見てみたいな」

 ノヴァの言葉に興味が出てきた一同。何か神聖な感じがする通路を進んでいく。


 目前に扉が見えてきた。

「扉だ!だけどボスがいた扉と雰囲気が違う気がする」

「何か神聖な感じがするわね。装飾とか不気味な感じがしないわ」

 ルビーが言うとおり装飾がボス部屋と全く違う。

「アリサ一応、透視してみて」

「わかったわ。・・・ダメだわ!コレ結界なのかしら?全然何も見えませんわ」

 透視が効かない事に疑問を感じる鏡太。

「ボス部屋は見えたのにコレは見えない。う~ん、どういうことだろう?」

「邪悪なものでなく、神聖で特別な部屋だから何かで透視出来ないのかも」

「嫌な気配は無いし開けてみよう。いくよ!う~ん・・・アレ開かない?」

「鏡クン私がやるわフン!・・・フギー・・・ポッポー・・プスンプスン」

 ビクともしない扉。岬は力尽きた。


「なんだこれ?今度は全員でやってみよう」

 全員で扉を押してみるが開かない。

「ダメだ!岬さんと全員でも開かないとなると仕掛けか?」

 辺りを見わたす一同。


「仕掛けは無いね。これはまいったぞ」

「みんな、だらし無いのよ。私がやるのよ。下ろしてなのよ」

「まさか~ノヴァさんにできるわけないじゃない」

 小さく非力なノヴァに出来るわけが無いと一同うなずく。

「やってみないと分からないのよ」


 テクテクとノヴァは扉の前に行くと手をあてる。ピカー!ギィーバタン!

 一瞬、扉が光ったと思うと簡単に開いた。

「開いたのよ。ヘヘンなのよ」

「す、スッゲー!もしかして岬さん以上の怪力?」

「んなわけないのよ!でもどうして開いたのよ?」

 さあ~?と同時に首を左にかしげる一同。

「そんなことよりアレを見て!」

 ルビーが示す方向を全員が見ると巨木が一本立っている。

 その周りには光の玉がたくさん飛んでいた。

「なんだこれ!見たことも無い光景だよ」

「なんて幻想的なのかしら」


 部屋の中は丸い空洞のようで中心に巨木。辺りには咲き乱れる草花。丸い光の玉が浮いてたり、飛行するのが見て取れる。邪悪な気配は一切無い。


「何か神聖な部屋のようだね。怪物がいた部屋とは全く違うよ」

「精霊いたのよ!ほらあそこなのよ!」

 ノヴァが光の玉を指差す。

「えー!どこ?まさか、あの光の玉?」

「そうなのよ。あれが精霊なのよ。精霊いるってことはココは神聖な場所なのよ」

「そうだったのか!こんな場所に神聖な場所。精霊か~。何か重要な物があるのかも知れないね。みんなで少し探索してみようか」

 そう言うと鏡太は辺りを見て回る。

「は~何だか嘘みたいな場所ね。落ち着くわ」

 ルビーは花畑に寝転んでいる。

「綺麗な花なの。花冠はなかんむり作るの」

 朱音は花をんでいる。

「精霊さん初めましてですわ」

 アリサは花畑へ座り精霊に話かけている。

「学校行くよりココにずっといたい気分になるな」

「なあ鏡。あそこの巨木て怪しくないか」

「確かに一番怪しいのはあそこだね。行ってみようか」


 鏡太と圭介は巨木に近づく。すると透明な壁みたいな物にぶつかった。


「痛~。なんだこれ?先へ行けないぞ!」

「痛っ!ホントだ行けないね。どうしてなんだろ?あれノヴァさん中にいるよ」

 鏡太と圭介が見つめる先には巨木に近づくノヴァの姿。


「何で入れるんだろ?そういえば扉もだよね。う~ん」

 しばらく鏡太と圭介はノヴァを観察する。ノヴァは巨木前まで来ると突然、宙に浮いた!

「う、浮いてるよ!」

 唖然あぜんとする二人。5m程宙に浮いたノヴァは眩い光を発し始めた。

「ま、眩しい!」

 あまりの眩しさに二人は目を閉じる。


 光が収まりノヴァは巨木の前の地面に立っている。

「何が起きたんだ!ノヴァさん大丈夫!」

 二人は駆け寄ろうと近づく。

「あれ壁見たいのがない!よし巨木まで行ける!」


 ノヴァに近づく鏡太と圭介。他のみんなも異変に気づきやってきた。ノヴァは目をつむり立っている。明らかに様子がおかしいのに皆気づく。

 突如、ノヴァの口が開いて語りだす。


【異変のノヴァ】

 清き心を持つ冒険者よ。なんじらの行動は見ておりました。

 よくぞ苦難を乗り越え辿たどり着きましたね。

 私は精霊の代表者『セーヌ』。

 清き者の力になればと、このノヴァなるドワーフの体をお借りしました。

 困難に立ち向かう勇気。仲間を助ける為、自己犠牲をいとわない自愛の心。このドワーフからも気持ちが伝わります。

 私達には与える者はありませんが、ここまで辿り着いた其方そなたたちにむくいる為、知る範囲で知識を与えましょう。


 鏡太が代表して色々な疑問をぶつけた。

「どうしてノヴァさん何ですか?ココに入れた事、貴方が体を借りてる事です」

 セーヌ:私共が最も信頼している種族ドワーフだからです。

     その血を持つ者だけが精霊の封印を解けます。

     私達の降臨に適した体もしています。

「なるほど。では禁止区域について何か知っていますか?」


 鏡太は確信をつこうと質問した。だが宛が外れる。

 セーヌ:その事については私共も存じません。精霊が近づけない区域なのです。

「そうなんですか。では古代兵器などに対抗する手段はありますか?」


 セーヌ:それはこの遺跡の宝物殿ほうもつでんの魔導兵器のことですね。

     対抗するすべはあります。魔導具だけが可能にするでしょう。


「その魔導具とは一体なんですか?」

 セーヌ:古代人ミリアンが作りし魔法武具です。

     この遺跡の宝物庫にある物もその一部です。

     私が知る限りではドワーフのつちも魔導具です。


「なんだって!それの使い道はわかりますか?」

 セーヌ:爆雷のつち『ドーラム』の使い方はわかります。

     古代呪文の詠唱により真の力を具現します。

     ですがドーラムは使い手を選びます。

「使い手か~。巨大ハンマーがドーラムだとすると僕には無理だ。あれを軽々扱えるのは岬さんだけだ」

 セーヌ:岬とやら前へ。

「私!は、はい!」


 セーヌ:どうやら素質がありそうですね。

     分かりました貴方に古代呪文を授けましょう。

     あなたの脳裏に直接刻みます。目を閉じて下さい。


 岬の脳裏にセーヌは何かをしてるようだ。しばらくすると口を開いた。

 セーヌ:刻印こくいんは終わりました。

     ドーラムを所持すれば自然と詠唱えいしょうできるでしょう。

「鏡クン。よくわかんない言葉が頭に流れてきたよ。とても覚えられない感じ」

「だから脳裏へ刻み込むのか。肝心な時に詠唱できないと無意味だしね」


「ドーラムで宝物殿の兵器は倒せますか?」

 セーヌ:容易たやすいでしょう。通用しない者もいるとは思われます。

    他に聞きたいことはありますか。


「宝物殿にある双頭の鎌も魔導具と言いましたけど、古代呪文はわかりますか?」

 セーヌ:存じます。どなたに授けましょう。

「ルビー。君しかいないよ。次なる冒険の為にも力が必要だ」

「わかったわ。セーヌさんお願いします」

 セーヌ:貴方も素質はあるようです。ではいきます。

     ルビーの脳裏にも呪文が刻まれる。

「頭に流れ込んでくるわ。なんとなくだけど理解できる」

 セーヌ:終わりました。貴女方が言う双頭の鎌ですが名称があります。

     風月扇ふうげつせん『リリカント』が本来の名前です。

「リリカントなんだ~。鎌のイメージから双頭の鎌と思ってたよ」


「他の呪文と道具の場所はわかりますか?」

 セーヌ:・・・聞きすぎです。

「すみません。ごめんなさい。聞きすぎましたーー!」

 鏡太はセーヌに土下座しまくる。

 セーヌ:冗談です。呪文も場所も具体的な所在は不明です。

     残りの魔導具がある大陸の名はわかります。

     光の魔導具はパルテノン。水の魔導具はペンタグラム。

     火の魔導具はジャポネアです。


「精霊さんも冗談言うんだねw。場所が解るだけでも助かります」


「最後の質問です。古代人ミリアンについてわかりますか?」

 セーヌ:古代人ミリアン。頭に小さな角を持ち耳は小さくとがっています。

     髪色と肌は多色、背中には黒翼こくよく

     多種多様な魔法を操ります。


「なるほど。大体は推察通りです。滅びた原因はわかりますか?」

 セーヌ:わかりますが、それを知ったら貴方の冒険は終わります。

「それヤダ!まだバッド・エンド迎えたくない!自分の力で解き明かします」

 セーヌ:では旅の無事を祈ります。


 精霊セーヌは消えノヴァが目を覚ました。

「あれ?私なにしてたのよ?」

「ノヴァさん気がついて良かった」


 鏡太はノヴァに眠ってる間の出来事を説明した。

「精霊様の役に立つなら歓迎なのよ。これからどうするのよ?」

「一度テトに戻ることになるね。けど命からがら来た道を帰るのはかなり辛い。もしかするとココにも入り口へ戻る仕掛けがあるかも知れない。探してみよう」

 鏡太達が探索を開始。意外とあっさり仕掛けは見つかった。

「巨木の裏に台座があるとはね。この魔法の剣は助かるよ。パパさん様様だね。では、みんな行くよ!」

 鏡太の周りに集合したみんなは何処どこかへ飛ばされる。


「あれココて初めの水路?台座がココにあるってことはココから精霊の巨木に戻れるのかな?」

 鏡太は戻れるのか試した。巨木と水路をつなぐ装置と判明。水路の行き止まりに台座がある。道なりに水路を歩くと初めに降りてきた通路が見える。


「ここに出たのか。降りてきて初め右へ行ったけど左へ行けば安全だったのか」

「仕方ないわよ。誰もそんな事、始めからわからないんだし」

「そうだね。次が楽になっただけでも助かるからね。前向きに行こう」

 うんうん。と皆も同意見のようだ。鏡太パーティーは入口へでた。

「やっぱり外はいいな~。何日ぶりだろ」

「ホントね~。すぐには遺跡に戻りたくないわね」

 突然、朱音が思い出したように言う。

「鏡君。重大な事が解ったの!」

「えっ!何か遺跡でわかったこあるの?」

「私のテレパスの出番がないの!楽しかったけど複雑なの」

「そういえばそのような・・・。作者に文句言ってね!」

「そうするの。後で苦情メール1000通送るの!」

 朱音は怒りに震えていた。


「今日はネクロに帰って疲れを癒し、明日みんなでテトへ行こう」


 鏡太パーティーはネクロで解散となる。このあとテトで謎の少女と出会うとも知らず鏡太は家路いえじについた。















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