第29話 ポプラ遺跡② ー犠牲ー

【前回のあらすじ】

 ポプラ遺跡へ来た鏡太パーティーは初めに水路を進み巨大ハリネズミと遭遇。圭介のオトリと岬の機転により鏡太が剣舞を使い見事に撃破した。次に骸骨兵士と遭遇。これは拾った金貨が原因だったため、金貨を捨てると以外とあっさり通過できた。

 そしてパーティーは2つの難関を乗り越え3つ目の部屋が見える通路に来ていた。


【パーティー構成】鏡太・圭介・岬・アリサ・ノヴァ・朱音・ルビー


「アリサ何か見える?」

 鏡太は透視するアリサの結果を待つ。

「う~んココも何も見えないわね。所々、部屋の地面に穴見たいのが見えるわね。後、見えるのは小山の様な物かしら。部屋は円形で奥に入り口があるわね」

「なるほど。穴が怪しいね。穴を避けて壁伝いに入り口まで移動しようか」

「その方が良さそうね。きっと何かいるわ!」

「みんな離れずに僕とルビーについて来て」


 一同は部屋に入り壁伝いに歩いていく。すると小山から5cm程度のアリが出てきてパーティーへと向かってくる。

「なんだ!このアリ普通より大きいよ!」

「サイズが違うわね。イタッ!噛み付いてきたわ!」

「数が増えてきてますわ!」

「えいっ!えいっ!鏡クン、これめば倒せるけど数が多すぎ!」

 岬は何度も踏みつけ、アリを倒している。

「倒しながら入り口まで走ろう」

 皆は攻撃しながら走り入り口を目指す。


 そして入り口まであと少しという場所まで来た時、異変が起こる。

 ゴゴゴ・・・と閉まりだす扉。とても間に合わない最悪な状況。


「な!ダメだ入り口が閉じた!どうしよう・・・。」

 みんなせまり来る小型のアリを牽制けんせいしている。考える鏡太。

「このままではヤバイ!一度来た道へ引き返そう!」


 その言葉に皆は方向転換しアリをかわしながら来た道を引き返す。

 そんな中また異変が起こる。部屋の中央から土煙つちけむりが巻き起こり巨大アリの頭が姿を見せる!


「な、なによアリ!いやアレ?」

「アリサ冗談言ってる場合じゃないよ!速く通路へ」


 後方のアリサの声で中央を向く鏡太。

「な!巨大有田!いやアリだ!みんな急げ!僕が牽制する」


 パーティーは必死に走る。鏡太はイチかバチか剣舞けんぶはなった!(キーン!)

「ダメだあれは硬い!もう少しで通路だ走れー!」


 鏡太の剣舞は巨大アリに効かない。必死に走るパーティー。かろうじて通路に到着。小型のアリは追ってこないで巣穴に戻る。巨大アリは警戒して姿を見せたままだ。


 ハアハア・・・と息も絶え絶えのパーティー。

「何とか助かったわ。でもあれどうすればいいの?」

 ルビーが問いかける。

「僕の剣舞も威力が足りないのか効かなかった。どうしようか」

「あれ硬そうだよな。姉貴ならへこませるくらいはできるかもな」

「凹んでも倒せないと先へはいけないわ」

 岬も困った顔をしてる。

「あの小型のアリも大変ですわ。けど今は巣に戻りましたわね」

「アリサ。巣に戻ってから何か周りに変化はある?」

「見てみますわ・・・。奥の入り口がまた開いてますわ!巨大アリはまだ外にいますけど」

「開いてるのか~。う~ん。もしかすると小型のやつを攻撃すると扉が閉まるのかな?それだとしても小型を無視して入り口に行くのは危険すぎるな~。それに大型に見つかれば危険度が増すし。う~ん」

 鏡太は手立てが見つからず悩む。

「私たち不死族だし大型がいない時に急いで駆け抜ければ行けるかも。でもかなりリスクが高いわね。多分、物凄く痛いと思うわ」

 ルビーが大胆な提案する。


「大型が居なくなるまで待つのはいいけど、危険には違いない。でも、それしか方法はないのかな。なるべくリスクを減らしたいけど」

「俺がやるよ!一人ずつでも向こうの入り口へ運べばいいだろ」

「圭介マジで言ってんの!足が速いから可能ではあるけど小型の団体の中を行くんだよ!ただじゃ済まないよ!」

「ああ。わかってるよ。けどな女の子に危険な真似はさせられないだろ。俺の取り柄は逃げ足くらいだしな。任せておけって」

「圭介・・・。わかった。僕は一番最後に自分で走るから女性の方お願いするよ」

「ああ。わかった」


 どれほどの時間が過ぎたのだろうか。巨大アリは地中に姿を消した。圭介は女性陣を抱える準備をする。まずはルビーからだ。

「それじゃ行きますか。みんな俺だけど我慢してくれ」

「い、いいわよ。頑張りなさいよね」「ああ・・・」


 ルビーを抱きかかえた圭介は壁伝いに走る。すぐに姿を現す小型アリ。圭介目掛け飛びかかる。

「痛っ!ルビー平気か?もうすぐ着くからな」「平気よ。でも貴方・・・」


 圭介はルビーを無事入り口の通路まで運び戻ってくる。扉は閉まらない。

 続いてアリサ。

「アリサも俺で悪いけど少し我慢してくれ」

「貴方・・・そんな姿で・・・見直しましたわ」

 アリサは涙目で圭介を見つめる。圭介はアリサを抱きかかえ走り出した。


 圭介はよろけながらもアリサを通路に送り届けた。

「もうやめて・・・。ボロボロで見てられません・・・」

「やり遂げてみせるさ・・・」


 次を運ぼうと戻ってくる圭介。次はノヴァと朱音。

「ノヴァは肩車な。朱音ちゃんは抱えていくよ」「圭介・・・。ガンバルなのよ」

「お、お願いなの」

 小型アリは増え続け攻撃が増す。二人を連れ通路へ到着。

 ノヴァと朱音はボロボロの圭介を見て涙が止まらない。

「圭介もうやめるのよ。無理なのよ」「も、もうやめてなの」 

「まだいけるさ・・・」


 圭介は戻ってくる。次は岬の番。

「姉貴つかまれよ・・・」

「圭介アンタ・・・馬鹿。わたしは一人で走れるわよ」

「いいんだ・・・。姉ちゃん俺に守らせてくれよ・・・」

「ほんと・・・あんたは」

「これで全員だ・・・。僕も一緒に走るよ」

 岬は圭介に抱きつく。圭介は岬を抱え鏡太と走り出す。

「痛・・・ウガッ・・・ウッ・・・」

 圭介は入り口の扉まで後少しの場所で倒れ岬は投げ出される。


 無数のアリが圭介に飛びつき噛みつく。アリで埋もれていく圭介。

「圭介ーーー!しっかりして!」

「鏡・・・姉ちゃんを頼む。すまない姉ちゃん・・・」

「この馬鹿ーーー!姉ちゃんを助けるんじゃないの!ホラ立ちなさい!」

 岬は泣き叫びアリを払いのけると圭介を抱える。

 アリに食いちぎられ無残な姿の圭介。

「圭介・・・圭介・・・」

「僕が念動力でしばらく動きを止める!岬さん圭介を通路へ!」

 岬は圭介を抱え通路へと逃げ込む。続いて鏡太も逃げ込む。横たわる圭介。


「馬鹿。馬鹿。アンタなんでここまで・・・」

 ルビーはボロボロの圭介をみて涙が止まらない。

「しっかりしなさい!あんたのおかげで皆助かりましたわよ!」

 圭介を揺らしながら泣いているアリサ。

「死んだらいやなの。もういやなの・・・」

 朱音も心配し涙をながす。

「圭介あんたヒーローなのよ。立派なのよ・・・」

 ノヴァも圭介の手をにぎり号泣。

「圭介。お姉ちゃんアンタがここまでやるとは思わなかったわ。前に鏡クンが言ってた通りね。やるときはやるって・・・うっ。うっ。アーーー」

 岬は圭介に抱きつき泣き崩れた。


「圭介のおかげで皆無事だけど。お前馬鹿だよ・・・そんなになるまで・・・」

 鏡太は涙が止まらなかった。少ない犠牲ぎせいで無事先へ進めたパーティー。だが普通なら死んでいる圭介の傷を見ると素直には喜べない。不死のおかげで助かった事をみな感謝した。


どれほどの時が過ぎたのだろう。圭介は少しだけ再生し目を覚ました。

「オレ死んだんじゃないのか・・・。姉ちゃんは?守れたのか?」

「圭介ーーー!心配したんだからね!姉ちゃん置いて先にったら地獄まで追いかけるんだからね」

 怒りながらも安心して涙する岬。

「そうか。みんな助かったのか。それは良かった」

「圭介、心配したよ。でも、もうしばらくは寝てて。まだ冒険できる体じゃないからね。圭介が回復するまで岬さん頼みます。僕とルビーとアリサで少し先の様子を見てきます」

「わかったわ。任せておいて」


 鏡太・ルビー・アリサは先の通路を歩き出す。すると上りと下りの二股の通路へでた。

「アリサどちらへ行けばいいかわかる?」

「え~と下りの方は行き止まりね。けど下り階段が見えるわね。上りの方は凄く大きな空間に機械らしき物?う~ん何か武器らしい物が見えるわね。かなり大きいわよ」

「機械か~。それは厄介だな。僕の剣舞は機械などには効かないからね。何かの兵器とかだと太刀打ちできないよ」

「地下も不気味だわね。どこまで続いてるかわからないし」

「そうだね。今、地下へ行くのは危険だと思う。対策を立てる為にもここは上りで様子を見るのがいいかな」

「そうね。様子を見て危ないなら引き返しましょう」

「上りの通路は部屋の前に大きな扉があるわ。そこから様子見ですわね」


 鏡太・ルビー・アリサは上り通路を進む。大きな扉の前に来た。

「これダリアと同じだよ。いかにも出そうじゃない」

「確かにボス部屋て感じがするわ」

 ダリアのボス部屋の扉と形状が似ている事に確信を持つ鏡太とルビー。

「巨大な機械兵器がボスかも知れませんわね」

「てことはここが最終地点か。敵がわからないと先へ進めないし、中の様子だけ見ようか」

 覚悟を決めた3人。扉を開け様子を見る。

「右奥のアレが兵器みたいなものだね。確かに何かを発射しそうな角見たいのがあるよ。それと中央の祭壇にあるアレは双頭の鎌だ!刃の部分だね」

「どうやら間違いなさそうね。ここが終点だわ」

「あれですわね。あの鎌取るとお約束ですわよね」

「やはりそうだよね。絶対あの機械の攻撃来ると思うよ」

「どうにかならないかしらね?う~ん」

 ルビーとアリサは悩んでいる。妙案がある鏡太は二人に伝える。

「お約束があるかどうか試すことはできるよ。機械がどんな攻撃するか解ると思うけど」

「何やるの?」

「簡単なことさ。僕の剣舞で鎌を持ち上げるんだよ。遠隔だから攻撃が来てもすぐに逃げられる」

「ああ。なるほど~」

 それなら安心ねと思うルビーとアリサ。

「それじゃ逃げる準備してて、やるよ!」

 鏡太が念動力で剣を飛ばす。剣をクロスさせ鎌を引っ掛け持ち上げる。


『ビー、ビー、ビー、侵入者。直ちに攻撃に移行。シュピーーー!』


 機械からビームが発射され、鏡太達の目前の床にボスっと落ち黒焦げになる。

「ひ、ヒーー!」鏡太・ルビー・アリサの叫び

「ヤバイ逃げるぞ!」

 機械は鏡太達を補足。前進してくる。走りだす3人。

「ん?あれは」鏡太の視界に何かがチラッと見えた。

 三人は鬼のような形相で必死に逃げた。


「ハアハア。あ、あれはヤバイ!ヤバすぎ!」

「た、確かにアレは無理でしょ!黒焦げになるわ」

「死ぬかと思いましたわ!あんなの勝てるわけが無いですわ!」

「何か光線出てたよね。あんな速い攻撃されたら避けようがないよ!」

「そうよね~諦める?そして私と幸せ家族計画でもする?」

「それがいいかも。て何言わせるの!」

 ルビーは大真面目で言ったつもりが鏡太にスルーされた。


「でもヒントていうか逃げる時に気になるもの見たんだよね。あの機械さ記号らしき物があったんだよ。多分、古代兵器なんだと思う」

「魔法兵器てことね。う~ん魔法には魔法しかないけど・・・。あんなの倒せる魔法てあると思う?」

「確かに今の僕達に倒せる術はないな~」

「セラさんの呪文なら可能かも知れないけど、目覚めないし、起きてたとしても、あの爆炎使うと次どうなるかわからないわよ・・・」

 一度の禁呪で目覚めないセラを思うと鏡太は使うべきでないと思った。

「確かに爆炎使うにもしてリスクが高いね。それに機械に効くかとなると不安も多く残る。何か方法は無いのかな」

「まだ行ってないエリアはあるわね。下りの方向の先。地下に何か手刈りがあればいいけど・・・」

「今はそれしか無いか。危険だし一度みんなと合流して向かおう」


 鏡太・ルビー・アリサは圭介達が待機している場所へ戻った。

 調べた結果を皆に話す。

「それで圭介が回復次第、下り通路の先。地下へと行こうと思う。魔法兵器をどうにか出来ればいいんだけど、もし何もなければ一度調査はやめて帰ろうと思う」

「私も鏡太に賛成だわ。倒せない敵に挑むのは無謀だし、外で倒せる手がかり見つけてからでも遅くないと思うわ」

「そうですわね。リスクは少ないほうがいいですもの」

 身を持って機械兵器の恐怖を体験したルビーとアリサは鏡太に賛成する。

 ノヴァ、岬、朱音も偵察に行った3人の意見に問題ないようだ。

 パーティーは一先ひとまず圭介の回復待ちとなった。




















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