第27話 帰郷。ーそして決意ー

 鏡太は祖母がいるレイスで過酷な修行に耐え、念刀術ねんとうじゅつ奥義・天翔剣舞てんしょうけんぶを覚えネクロに帰郷ききょうした。

 鏡太は久しぶりの故郷をみて感慨かんがいにふけっている。

「やっと帰ってきた。ひと月ぶりになるのかな?随分、なつかしく感じるよ。母さんや恵、友達のみんな元気にしてるかな~」


 ようやく実家が見えてきた。

「ふ~。到着~。うっ!何だか家の周りがのオーラに包まれてる感じがする」

(ドヨヨ~ン)玄関を開ける鏡太。

「ただいま~。ウッ!何だこの圧迫感あっぱくかんは!(ドヨ~ン)返事もないな~」

 異様な空気を感じた鏡太。まずは自分の部屋に行こうと、恐る恐る家の中を歩いていく。

「母さ~ん。いないの~。どこか出かけてるのか?先に荷物おいてくるかな」


 鏡太は自室に荷物を置いて背伸び。

「は~自分の部屋は落ち着くな~。そういやノドも乾いたな」

 長時間の旅でのどがカラカラの鏡太。冷蔵庫があるキッチンへ向かう。


「オレンジジュースでいいか」

 そう言うと鏡太は冷蔵庫からパックを取り出し飲み始める(ゴクゴク)

 そんな鏡太の横をヌラ~と通り過ぎる影。チラッ横目でみる鏡太。

「ブーーー!か、母さんいたの!返事くらいしてよ~。ビックリするじゃないか」


 鏡太の言葉が聞こえないのか陽子は花瓶かびんの水を取替えリビングへ消えていく。

「母さん?おかしいな?ちょっと待ってよ。僕、帰ってきたよ~」

 鏡太は陽子を追い掛けリビングへ行く。

「なんじゃこりゃ!母さんこれどうしたの?爺ちゃん用?」

 鏡太の目前には巨大な仏壇ぶつだん!お花を置いて手を合わせる陽子。

「ねえ母さんたら・・・。何で僕の遺影いえいがあるの!もしも~し。母さ~ん」

 陽子が振り向き鏡太を見てつぶやく。

「あら?弾道だんどうさんお帰り~」

「父さんじゃないよ!鏡太です!しっかりしてよ母さん」

「親不孝な鏡太はひと月も連絡せず風の噂でノヴァて方と消息不明とシクシク」

「ごめんなさい。ごめんなさい。生きてます!連絡しなくてすみません」

 陽子に土下座しまくる鏡太。


「あなたも鏡太に線香せんこうあげてくださいな」

「じゃ~せっかくだし爺ちゃんに線香あげておくか」

 鏡太は線香に火を付ける。すると仏壇に気になる物を見つけた。

「ギョ!何でおそなえ物に手榴弾しゅりゅうだんがあるの?」

 たずねた瞬間、陽子の不気味な笑い声。

「フフフ。鏡ちゃ~ん」

 陽子はひもを持って走る。それを見つめる鏡太。


「えっ?(ピンッ)」チュドーン!『かあさーーーん!』吹っ飛ぶ鏡太。

 陽子は逃げながら手榴弾に付いた紐でピンを外していた。


「わたしに連絡しないバツなんだからね!鏡ちゃんがいない間、寂しくて死にそうだったのよ!もう許さないんだから~」

「あんたウサギですか!けど本当、僕が悪かったです。ごめんなさい」

「うんもう!そこまで土下座されたら許すしかないじゃない。それじゃ留守の分まで母さんなぐさめて~♡」

 そう言いながら脱ぎ出す陽子。

「するか!それは父さんの役目だよ!もう、マッサージならしてあげるけど。ところで恵は?」

縁側えんがわにいるわよ~」

 恵は縁側に座りボーと空を見上げている。

「縁側か~。おっいた!恵ただいま~」

「あっ、ゲロちゃん!」

 恵は鏡太を見ると抱きついてきた。

「誰がゲロちゃんなの?(ヒクヒク)」

「お母さん新しいのありがとう。古いゲロちゃんにお別れ行ってくる」

 そう言うと庭先に降りていく恵。


「恵。ゲロちゃんの事、忘れないからね」(パンパン合掌がっしょう

    『ゲロのはか』『ロリコン兄ちゃんのばか

「死んでないよ!ついでにロリコンやめてよ!てあれ?恵がいない?」

 墓に書かれてある小さなルビに気づかない鏡太。墓を排除しようと近づく。


「ホント縁起えんぎでもない!こんなもの(墓)カチッ!」

『チュドーーーン!めぐみーーー!』地雷でフッ飛ぶ鏡太。


「お兄ちゃん!恵も寂しかったんだよ。これで許してあげる♥」

 一ヶ月の間、連絡をしない鏡太のツケは大きかった。


【森林公園】

 陽子と恵の熱烈な帰宅歓迎を受けた鏡太。まずは近況報告もありルビーに会おうと公園に来ていた。鏡太は近くのベンチへ座る。

「どのあたりにルビーいるのかな。色々話したいことあるんだけどな~」

『だ~れだ』不意に後ろから目隠しをされる鏡太。

「この声はルビー!会いたかったよ!」

「私もよ。けどなんで少しくらい連絡しないの?かなり心配したんだからね」

「ごめん。修行で集中してたし、山の中で通信できないし、滝飛び込みやらされて腕時計も壊れるしで、仕方なかったんだ。ホントごめん」

「それじゃ仕方がないわね。許してあげる。それで何か成果はあったの?」

 そう言ってルビーは鏡太の横に腰掛ける。


「レイスの御影みかげ婆ちゃんに念刀術ねんとうじゅつというのを習って来た。修行は大変だったけど、これがかなり凄いんだよ。今度は戦力になって見せる!」

 ルビーに熱く語る鏡太。両の拳をギュッと握りしめる。

「会わない間に雰囲気も変わったし、何か凄く頼もしい感じするわよ」

「力は付けた!今度こそは皆をルビーを守る!」

「鏡太(うっとり)き、期待してるんだからね」

 精悍な顔つきの鏡太にルビーは惚れなおした。鏡太の肩に顔をあずけるルビー。

「あ、ああ。期待を裏切らないようにするよ」

(何か良い雰囲気なんですけど!でも昼間だしな~。それにまだ話がある)


「ねえルビー。これからの事なんだけど。次の遺跡に行こうと思う」

「当然。私はついて行くわよ。あなたが行くならどこまでもね」

「ありがとう。けどパーティーメンバーの補強をしないと行けないと思うんだよ」

「そうね~。セラさんはまだ起きてないわ。ノヴァさんも病み上がりってとこだしね。誰かあてはあるの?」

「それなんだ。あのさ圭介を元に戻してやってよ。あいつの足はもしもの時に逃走でも役に立つんだ。多少は力もあるから数人持ち上げて走れると思う」

「あいつがね~。鏡太がそこまで頼むなら理解った。元に戻すわよ」

「ルビーありがとう。今からアイツ呼ぶから、お願いするよ」


  ピピッ・・通話開始。

「圭介。鏡太だけど久しぶり。あのさルビーがのろいてくれるらしいから公園まで来て」

「おう鏡。久しぶりだな。マジで呪い解いてくれるの!今から行く!」

 通信終了。しばらくして圭介が走ってきた。


「呪い解いてくれるんだよな?ありがて~。じゃ頼みます!」

 圭介は両手を合わせてルビーにお願いする。

「鏡太の頼みで仕方なくやるんだからね。今度変な事したらカエルにするわよ」

「はいーー!もうしません!お願いします!」

「じゃ行くわよ!」

 ルビーが呪文を唱えると尻デカ圭介は元に戻った。

「やったー!ありがと!ありがと!やっと地獄から開放されたぜ」


「良かったね圭介。治ったところで圭介にもお願いがあるんだ。次の遺跡探検について来てよ。力が必要なんだ」

「そんなことか、水臭いな~。俺達親友だろ!頼まれなくてもついていくぜ!」

「ありがと圭介。さすが親友だよ。これで3人!」


「久しぶりなのよ鏡太。速く冒険いくのよ」

「えっ!ノヴァさん!どうしてここに?怪我はもう大丈夫なんですか?」

「怪我は大丈夫なのよ。退屈で散歩してたのよ。鏡太の顔みれて嬉しいのよ」

「良かった~。これで4人!」


「鏡く~ん!帰ってきてたんだね!圭介の後、追いかけてきたの!何も連絡ないから心配してたんだから」

「岬さん!ご無沙汰してすみません」

「いいのよ。いいのよ。それで、みんな集まって何してんの?」

「遺跡へ行く相談です。岬さんあの~」

「行くわよ!前も言ったじゃない。鏡クン行くならついて行くって水臭いわよ」

「ありがとう岬さん。これで5人!」


「鏡君。何してるの?みんな集まってお祭りなの?」

「朱音ちゃん!どうしたのBL本買い?」

「そうなの。鏡君久しぶりなの。みんなでどこかいくの?」

「ああ。う~ん。ちょいと冒険にね」

「私もいくの。冒険楽しいの。テレパスあるから力になるの」


※朱音と紫音はテレパス(心を読む・考えを伝える)が使えます。


「えー!テレパスなの!てことは今までの僕の考えバレてた?ヒクヒク」

 顔がひきつる鏡太。

「必要なとき以外は使わないの。冒険連れて行くの」

「そうなんだ~ホッ。わかった、お願いするよ。これで6人!やはり透視能力は必要だよね。アリサに連絡してみよう」


 ピピッ・・・通信開始。

「アリサ今、公園にいる・・・プー。あれ切れた!」

 ドドド・・・。しばらくしてアリサが走ってくる!

「そこにいましたわね~!なんで連絡しないんですの~」

「ハーハー。ほんと心配したんですわよ!連絡くらいして欲しいですわ!」

「ハハハ。ごめんアリサ」

「仕方ないですわね。それで、この集まりは冒険なんでしょ。行きますわよ。私を置いて行くなんて、ありえませんわ!」

「ありがとうアリサ。これで7人!みんなよろしく頼むよ」

 鏡太・圭介・岬・ルビー・ノヴァ・朱音・アリサの計7名のパーティーが出来た。


「この前の遺跡からすると今度も険しい遺跡探検になると思う。もう無理はしない。危ないと感じたら一度逃走し体制を立て直そう。その都度、作戦を立てながら遺跡を進もうと思う。みんなの協力無しではやれない。力を貸して欲しい」

 ルビーも鏡太を後押ししてくれる。

「みんなで協力して困難を乗り越えましょう」

「こういう時ってアレだよな。手を合わせるやつだよな。恥ずかしいけどよ~」


 圭介の提案に皆も賛同した。鏡太は手を差し出す。

 鏡太『それじゃ行くよ。一人はみんなの為に』

 パーティー全員『みんなは一人の為に』

 鏡太の手に手を重ねた一同はそう答え新たな冒険への決意をする。


「それでみんなに僕の新しい力の事を知っておいて欲しい。いきなりだと戸惑うと思うし、作戦に支障がでると思うから」

「それは賛成だな。それぞれの能力把握してないと動きにくいもんな。でその力てどんなのだ?」

「念刀術て念動力で複数の剣を自由自在に動かす技なんだ。今は剣がないから見せられないけど」

 鏡太が説明したあと、ノヴァが口を開く。


「剣なら店にたくさんあるのよ。どんなのがいいのよ」

「そうか!以前店で見たときに剣おいてあったんだ!それなら持ち運びに便利な細い剣がいいんですけど」

「細めのレイピアなら店にたくさんあるのよ。取りにいくのよ」

「ホントですか!取りに行きます!みんなの時間が大丈夫ならここにいて。実技見せるから」

 OKと皆は返事した。実技をみるのが楽しみで待つようだ。


 鏡太とノヴァは店に行き10本ほどレイピアを持ち公園に戻ってきた。

 皆に実技をみせる鏡太。

「では行くよ!ハッ!」

 上空高く持ち上がるレイピア。消えたように錯覚するくらいのスピードで四方に飛んで行く。突如、レイピアは細い木の側へ現れたかと思うと切り刻んで倒した。


「これが念刀術奥義・天翔剣舞だよ」

  圭介:すっげ~!とんでもない技覚えてきたな!鏡お前なんかカッコイイぞ。

 ルビー:これほどなんて。ホント信じられない!

 アリサ:カッコよすぎますわ!

  朱音:鏡君すごいの!。感動したの!

   岬:素敵!なんて華麗なの。それに凄い威力だわ!

 ノヴァ:鏡太とんでもないのよ。これなら私くらい浮かせられるのよ。


「何かそんなに言われると照れるな~。これも弱点はあるんだ。狭い場所では威力が落ちるから使えない。広い場所でなら多分、この前の蜘蛛くもくらい倒せる威力が出せると思う。加速させれば、させるほど威力絶大だからね」


 皆が感心する中。ルビーも新しい力をつけたことを告げた。

「それは頼もしいわ。私も力になれないかと呪文関連など色々調べたのよ。そして強化術を身につけたわ。新しい魔法『エンチャント』よ。武器などに属性をつけて強化できるわ。今できるのは風と火の属性だけどね」

 ルビーの新魔法に驚く鏡太。

「それは凄いよ!セラさんが動けない今は属性強化は凄く助かる!みんなも僕がいない間、強くなる特訓してたんだね」

 圭介も負けじとアピール。

「俺も足速くなったぜ!土偶どぐう姿で姉貴に追い掛け回されてたからな、筋力も付いたし逃げるときは任せておけ!」


「私も透視できる距離が伸びましたわ。モンスターを先に探知できますわよ」

 アリサも透視能力を強化してきたようだ。

「う~ん私は。謎の拳法を覚えたわ!」

 岬の怪力と拳法。鏡太はどんなに凄いか期待する。

「それはすごいね!どんなの?」


「アタッ!オメエはもう死んでいる!」

「やめてーーー!」


「みんなずるいの。私も練習したの。これみるの」

 朱音はスケッチブックを鏡太に渡す。

「どれどれ・・・これは!イヤン・・・」

 男を全裸で書く練習だった。


「まあ最後はアレだけど、みんな力を付けてるよね。油断はできないけど、前よりは戦闘がやりやすくなるし、作戦の幅も広がると思う。これで全員が仲間の能力を把握はあくしたけど、あとは準備と日取りかな。みんなが良ければ今度の休みに遺跡へ行こうかと思う。問題なければ挙手きょしゅをお願い。どうかな?」

 全員が手を上げる。


「決まりだね。じゃ日曜、朝8時に公園集合で。武器や装備がいる人はノヴァさんの店で買いそろえよう。圭介も丸腰じゃね~w」

「おし!俺も剣買うぜ!」「私もナックルとかあれば買おうかな」

「私も超合金のBL本があれば買うなの」(ノヴァさんの店ならあるかも)

「私もレイピアくらいなら使えますわ。頂こうかしら」

「ありがとなのよ~。何でもあるから買って欲しいのよ」

 ノヴァの店は久しぶりに大繁盛である。

 

 こうして鏡太の次なる遺跡への冒険が始まる。






















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