第26話 妖艶ばあちゃん登場!~新たなる力~

【前回のあらすじ】

 ダリア遺跡の惨劇から生還した鏡太は不甲斐ない自分を思い自責の念にとらわれていた。そんな鏡太を勇気ずけてくれる友。鏡太の落ち込んだ心を救う。そして再び惨劇を繰り返さない為に力が欲しいと願う鏡太。てがかりを探している時、陽子から貴重な情報をもらう。鏡太はレイスの祖母が同じ念動者と聞きアドバイスをもらおうと夏休みに旅立つのだった。


【ジャポニア・地方都市レイス】 

 鏡太は力を付ける為、郊外にある祖母の家を目指す。

「郊外って言っても地図じゃ山だよ。結構登って来たけど全然つかないな~」


 周りは木々におおわれている森。一本道をひたすら昇る鏡太。

 辺りを見渡すと木が不自然に倒れているのが目に入る。


「この木の倒れ方なにか変なんだよね」

 不規則に倒れている木をみて首をかしげる鏡太。

伐採ばっさいなら切り口が一本なのに複数あるし、メッタ斬りした感じになってる。どうやればこうなるんだろ?」


 山道を登っていると突然。ヒュン!と鏡太の足元に剣が飛んでくる。

「ひっ!いきなり誰だ!(返事はない)一本道なのに選択肢、間違えたのか?」

「家でゴロゴロが正解だったかも!バット・エンドの匂いがするぞ」


 その後、何者かの攻撃は無く、山小屋が見えてきた。

「あれが婆ちゃん家みたいだ。やっと一息できるよ」


 祖母の家の玄関にはチャイムがなく鈴紐すずひもがぶら下がっている。

(チリン・チリン)と鳴らしてみる。

「出ないな。婆ちゃん鏡太です。いないんですか~」

「誰が婆ちゃんだい!(ゴーン!)ゲフッ」

 誰かに木刀みたいなもので背後から殴られ、鏡太は気絶した。


「う~んココは?なんで寝てたんだろ?」

 起き上がる鏡太に女性の声。

「どうやら起きたみたいだね。こんなとこに何しに来たんだい?」

 目の前にいる綺麗な爆乳お姉さんが聞いてきた。

「祖母を訪ねてきました。お姉さんはどなたですか?」

「お姉さんとは嬉しいね~。あんた名前は?」「黒井鏡太です」

「なるほど。弾道の息子だね。小さい時しか見てないから誰かと思ったよ」

「そうですが、父を知ってるんですか?」

「知ってるも何も私の息子だよ」

「えーーー!てことはお婆ちゃん?」「婆ちゃんじゃないよ!(ボクッ)」

「あの~おいくつですか?」「年のこと何て忘れたよ。200てとこかな」

「妖怪ババアだ!(ゴンッ!)だって若くて綺麗すぎますよ!」

「あら綺麗だなんて嬉しいわ。イヤン♡」


『黒井 御影みかげ』年齢推定200歳。鏡太の祖母(ゾンビ)

 身長165cm程。黒髪。爆乳。眉目秀麗びもくしゅうれい。見た目は30歳前後のモデル体型。胸にサラシを巻き、胸元が開いたコートの様な着物を羽織っている。


(ヒクヒク。何か母さんにも似てるぞ。イヤンて何か可愛いけど複雑だ)

「それで何しに来たんだい。遊びに来たのかい?」

「遊びではないけど。ば」「ば?てなんだい?」


(ここはチョロイぜ戦法でいくか)


「いや綺麗な御影みかげお姉さんは念動力に詳しいなど聞いたもので」

「あらやだ~。綺麗なお姉さん何て坊やなんでも教えるわ」

(チョロイぜ使えた!キラン)


「教えるって言っても体でだけど。手とり足取りね」

「えーーー!(母さん墓場確定です!)童貞だから優しくして。ポッ」

「エッチでないよ!まあ、それも悪くはないけどね」

 爆乳に弱い鏡太。合うサイズのブラが無いからサラシなんだろな~と考えながら顔より胸ばかり見ている。

「あたしは念動力使いでSクラスだから多少はアドバイスはできるけど」

「Sですか!何でもいいです。強くなりたいんです!」

「簡単に強くなれるとは思わないことだね」

 御影のその言葉に鏡太はやはり簡単には無理か~と思っていた。

「鏡太。死ぬ覚悟は出来ているかい?」

「そう言われても・・・」

「私が教えるのは『念刀術ねんとうじゅつ』と言って、普通の念動力使うのとはわけが違うよ」

 何か凄い技かもと感じた鏡太は決意する。

「念刀術?死ぬ覚悟で強くなれるのなら頑張ります。教えてください!」

「鏡太の覚悟はわかった。アンタ、今の念動力ランクはいくつだい?」

「Cです。それが何か?」

「Cか~念刀術使うならA近くまでは、持っていかないとね。それから技を教える」

「Aか~。どうやったら上げれるんです?」

「それじゃ、ランク上げる特訓やるからついてきな」


 御影に連れられて山の中を歩く鏡太。滝の音が聞こえてきた。

「ここだよ」「滝しかないですが?」「落ちな!」「えーーー!」

 滝を覗き込む鏡太。滝壺たきつぼまで数百メートルある。


「これ死にません?」

「死ぬかもね。打ちどころが悪ければだけど。まあ頭さえ守れば死にはしないよ」

「ヤダヤダ!こんなん無理!」

「アンタさっき死ぬ覚悟ができてるって言ったよね。あれは嘘かい?」

「それに。これくらいしないとAなんて到底無理だよ。あたしもSになるまでに何度死に損ねたことか。これは不死だからこそ出来る荒業なんだよ」

(死ぬ気でやらないと到底たどり着けないレベルか~)

「御影さんもコレやったんですか?」

「ああやったよ」(それの半分くらいで)とウソをつく御影。

「じゃ僕もやります!」

「よく言った!骨は拾ってやるよ。安心しな」

「縁起でもないこと言わないで!」

(マジでそれ飛ぶのかい?どうなってもしらないよ)

「それじゃ鏡太いっきまーす!(ピョン)」


「ヒーーー!死ぬ死ぬー。頭だけ守って・・・ヒーーー」(バシャーン!プカー)

 鏡太は全身の骨が砕け、気絶して滝壺に浮いていた。

「あらら。本当に飛んだよ。いい音してたね~あれは腹から落ちたね」

 そう言うと御影は宙へ浮き滝壺まで降りていく。

「ほんと世話が焼けるね~。ホイッと。回復してまた再開だね」

 念動力で宙に浮く鏡太。御影の家に運ばれ寝かされた。


 数時間は経ったのだろうか鏡太は目を覚ました。御影が話し出す。

「目が覚めたかい。回復したらココから滝行って落下を繰り返しな」

「は、はい・・・。めちゃ怖いけど頑張ります・・・」

「恐怖に勝てればランクは自然と上がるはずさ」

(恐怖以前の問題だよ。マジで体がバラバラになると思ったよ)

「上達すると滝壺に落ちる直前に念動力で停止も出来るんだけどね~」


 鏡太が滝へ飛び続けて一週間。

「どうだい?少しは恐怖は消えたかい?」

「だいぶ慣れましたよ。躊躇ちゅうちょすることはなくなりました」

「そうかい。そこにある石を念動力で持ち上げてご覧」


 御影が指差す先にボーリングの玉ほどの石がある。


「分かりました。(ぬぬぬ~)えっ!前より念動力が強くなってる!」

 石は1mほど浮いた。

「その石を楽々、頭上より高く持ち上げることができれば合格だね」

「と言っても初歩だよ。やることは山ほどあるから!滝と石上げ頑張りな」

「御影さんの修行のおかげで確実に力はついてる!頑張るぞ~」


 さらに一週間が経過した。

「どうです?もう滝も怖くないし、石も高く上げれます!」

「まあまあだね。技に入る前に一つ奥義を見せるからついておいで」


 御影は鏡太を連れ森を歩き、広い空き地へ連れて来た。

 そこには100本はあるだろうか、剣が地中に刺してある。御影は鏡太に奥義を見せるべく構える。


「よく見ておきな。ハッ!」


 100本の剣が中に浮く!遥か上空で停止しを描いているかと思うと、四方に凄い速さで消えた。そして近くの大木の前にいきなり現れたかと思うとメッタ斬りにして倒した。


「スッゲー!なんですかそれ?」

「これが『念刀術奥義・天翔剣舞てんしょうけんぶ』だよ。念動力で剣を自由に動かす技さ。けど今のアンタじゃこの数は無理だね」

「天翔剣舞か凄い技です!念動力にこんな使い道があるとは驚きです。僕にはすぐに出来そうにないから、まずは1本から始めてみます!」

「そうだね。徐々に増やしていけばいいさ」

「剣を自由自在に動かせないと技は成立しない。集中力と精神力を使うよ」

「結構、疲れそうですね」

「滝壺、石上げの基礎訓練と合わせて毎日練習しな」

「それと疲れたら、家に小さな露店風呂あるから入ればいいさ」

「お~露店風呂いいですね。あとで入ります」


 毎日、滝飛び込みと石上げをやりつつ、剣1本は自由に動かせるようになった鏡太。疲れを癒しに露店風呂へと向かう。


「いや~。修行がハードだから癒されるな~。この調子なら休み期間中に形にはなるかも知れないな」

「ホントだね~。鏡太の進歩は目を見張るものがあるよ」

「そうですか~。・・・何で入ってんですか!」

「自分家の風呂はいるのに遠慮する者はいないだろう。何だ欲情したのかい?」

「だって裸じゃないですか!ヨボヨボならまだしも、プリンプリンの肉体だと変な気分になりますよ!」

「そうかい?ほれ!ほれ!好きなだけ今のうちに見な」

「いやーやめてー!誘惑しないで~」

 御影は爆乳を揺らしながら、しげもなく鏡太に見せている。

「まだまだ子供だね~。ゾウさんばかり大きくしちゃって。ハハハ」


 その夜。温泉に入り疲れもあるせいか眠たくなって寝床につく鏡太。

「ねえ~鏡太。そっちに行っていいかい?」

 御影の突然の言葉に鏡太は動揺する。

(えーー!もしかして!これはヤバイ!あっ布団の中に入ってきたよ!)

「うちのが死んでから寂しいんだよ。久しぶりに人肌が恋しくてさ」

(ヒエー!どうしよ。どうしよ。何か背中に爆乳当たるんですけど~)

 鏡太の背中に抱きつき顔を埋める御影。

「鏡太の背中暖かいな。男の匂いがするし、何か変な気分がしてきたよ」

(やばいです母さん!僕マッハで階段登りそうです!)

「このまま抱いてていいかい?」

 ムニュ。ムニュ。爆乳連続攻撃!プッチン!鏡太の理性は飛んだ!


「もう我慢できません!僕のパパのパパになりまーす!」(ガバッ)

「スースースー」

「寝つきよすぎ!それにしても悩ましい婆ちゃんだな~ハァ~」


 1本ずつ剣を動かす練習をして一週間が過ぎた。鏡太の上達ぶりを見る御影。

「百本は無理だけど5本くらいなら自由に動かせるようになりましたよ」

「それは大したものだよ。まだランクが足りてないから、数はそんなとこだね」

「剣舞てほど数はないが良しとするか。ついてきな」

 そう言うと御影は木が密集している場所へと連れてきた。

「あとは精神力を高めるためこれやりな」

 木に大量の剣が吊るしてある。御影が揺らすと剣が高速で不規則に動く。

「剣に当たらずに避けな」

「マジですか!これは滝と恐怖の度合いが違うな」

「自分や味方に当たらないよう剣を扱うためには必要なことさ。基礎は出来てるからコントロールさえつけば修行も終了だよ。最後のめだ頑張りな」

「わかりました!」

 鏡太は再び朝から晩まで修行を繰り返した。


 高速で動く剣。初めは数本刺さっていたが、一週間後かろうじて合格LVまで到達した鏡太。最終テストがやってきた。御影が見守る中、鏡太の成果が試される。


「では、やってごらん。あんたの剣舞を!」

「はい。いきます!ハーー(上空に浮かぶ10本の剣)ハッ!」


 空中で左右に5本ずつ別れ飛び去る剣。凄い速度で空中から消え、突如、現れ1本の木を無数に切りつけなぎ倒す。数は少ないが天翔剣舞の完成である。


「合格だ。修行期間が短い中よく出来たものだよ。ご褒美ほうび(チュッ)」

 御影は鏡太のホッペにキスをしてやる。鏡太はデレ顔。

「念刀術の基本は出来てるから自分なりに応用もできるし、本数を増やしていけば無敵の剣になる」

「但し、狭い空間では威力が落ちるから気をつけな。毎日訓練して地道にはげめよ」

 頭を下げる鏡太。

「ありがとうございました。チューのことは忘れません!」

「あんた剣舞のこと忘れてないだろうね?ハハハ」

「久しぶりに楽しかったよ。鏡太また遊びにきな。今度は夜の特訓だね」

「その時は、お願いします!寂しいですが御影さんも、お元気で」


 夜の特訓の意味を知らない鏡太。

 念刀術奥義『天翔剣舞』を覚えてネクロの帰途についた。












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