第19話 夢を託す者と託される者

【前回のあらすじ】

 巨大ハンマーを返すためルビーの助けを借りようとする鏡太。ボート乗り場にてルビーと再会する。そして、愛田家よりハンマーを持ちルビー、朱音、ノヴァと共にトロイヤを目指す鏡太。テトにつきノヴァのパパとの情報交換。ハンマーを返すだけのつもりが石碑をひと目見ようと鉱山探索することになった。だが鏡太は日が暮れていることもあり、パパの家の周りでテントを張り野宿することにした。 


 テントを張る鏡太、ルビー、ノヴァ、朱音。


 鏡太:テントて作るの難しいね。まずはくいを打たないとね。ここに1本と。

ルビー:私も手伝うわよ。このあたりでいいのかしら?じゃ1本ね。

 朱音:私も手伝うの。この辺りでいいの?エイッ。1本なの。

 鏡太:ここが最後だね。では1本と。大きな杭だと突風も平気だね。


「杭じゃないのよ!あんたの人生最後にすんのよ!」

 鏡太に持ち抱えられ激怒するノヴァ。完全にわざとである

「杭と間違えたよ~ごめんごめん」

「そんなに細くないのよ!とがってるのは耳だけなのよ!」

 冗談を言っているとパパが呼びにきた。

「皆さんお風呂が沸きましたのでどうぞ。まきはそこにあるので遠慮なく追いきしてください」

 パパがまきがある方向を指差す。

「わたしマキじゃないのよ!」(シクシク)

 まきはノヴァの後ろにあった。


 パパさんは大きな鉄釜てつがまの露天風呂を用意してくれた。

 一番風呂に入っている鏡太。

「あ~気持ちいいー!露天風呂もいいもんだね~。このプカプカ浮かんでるのは落ち着かないけど。パパさんついでに食材もいれたんだね」


 水着を着たルビー・朱音・ノヴァが来た。

「私達もお邪魔するわよ(チャポン)いい湯加減ね。疲れが飛ぶわ~」

(ルビーは赤のビキニか~。ブラのサイズあってない気がする)

「露天初めてなのよ。いつも小さなお風呂なのよ」

(ノヴァさんの水着ってシマシマで囚人しゅうじんみたいだなw)

「お風呂入るの。鏡君ジロジロ見ないでなの。恥ずかしいの」

(朱音ちゃん大人しそうに見えて競泳水着でハイレグてガン見しちゃうよ)

「私も見てたわよね。それも胸ばかりみて。あんたロリコン?」

(そりゃ~ブラから胸チラしてるから意識しちゃうよ)

「鏡太、わたしも見るのよ。ナイスバデーなのよ」(ペッタンコ~)

「・・・」

「読者も作者も全員、目つきが失礼なのよ!」

 と所構わず激怒するノヴァ。


「露天だと冷めるのが速いですね。僕、まきくべてきます」

 鏡太は釜風呂を出て薪を入れていく。

「どうですか?」「まだ入れていいわよ」「ぬるいの」「平気なのよ」

 ルビー、朱音、ノヴァはマキを追加して欲しいようだ。

「みんな熱いのが好きなんだね。沢山入れとくか」


 鏡太が風呂へ戻ると温度が上がってきた。

「お~キタキタ!これぐらい熱いのがいい。でも釜風呂だと食べられる気分だね・・・」

「そうね。何だか落ち着かないわね」

「そこに浮いてる野菜美味しそうですの」

 朱音は水面に浮かぶモジャモジャした緑色の野菜を指差している。

「この浮いてるのも食材なの?」

「なんだか不味そうね・・・。食べ物なのかしら?」

「野菜はよく煮込むと美味しくなるの」

 そこには、のぼせて沈むドワーフの姿があった。


 翌朝。装備(リュック)を受け取り、鉱山を目指す鏡太、ルビー、ノヴァ、朱音とパパさん。

「僕のだけやけに重いよ。何入ってるだろ」「アンタそれよそれリュックの上」

 ルビーが指差す先にちょこんとノヴァが座ってる。

「レディーに重いとは失礼だわよ」

 重いのは装備のせいかもとパパがリュックの中身を説明してくれる。

「遭難した時のため数日分の食料と、あと小型の剣も入れています」

「剣が必要なんですか?色々使い道はあるとは思うけど」

「いや~廃坑の中で得体の知れないものを見たって噂もあるもので用心の為にと」

「物騒な話ですね。けど怪物じゃなく遺跡の可能性もあるし行かないと判断できませんよね。だけど冒険て感じはしてきたな~」

 超能力以外使ったことがない鏡太。剣やモンスターと聞きワクワクしている。


「モンスターさんにもBLあるとおもうの。見つけるの」

「怪物嫌なのよ!食べられるのよ!死ぬのよ!」

 平穏に暮らしてきたノヴァは怪物と聞いてジタバタしている。

「ノヴァさんは不死じゃないので僕が守りますよ」「たのんだのよ」

(怪物相手だと小さなノヴァさんは役にたてそうもないしね)

 そんなときパパから思わぬ発言が。

「剣も昔、廃坑で出た遺産ですよ。使い方は不明ですが、切る程度なら普通にできますよ。今朝の朝食でも使いました」

「何に使ってるの!けど遺産か~。なんだか期待できそうですね」

(ドワーフにとって遺産は珍しくなく価値基準低いのだろうね)


「空中で野菜切るの難しいのよね。もう少し小さな鎌ならいいんだけど」

「遺産なんだと思ってるの!」「道具よ」「う~ん確かに」

 ツッコミを入れた鏡太。けど確かにそうだよね~と納得した。

(ルビーは空間跳躍に使うし、便利道具なんだろね)


 パパの案内で石碑があるという廃坑入口についた。

「わたしが案内できるのはここまでです。お気をつけて」

 そう言うとパパさんは来た道を引き返した。


「こら八兵衛もたもたしてると、置いていきますよ」

「八兵衛て誰なのよ!お腹減ったのよ!」

「では皆さん参りましょうか」

 鏡太御一行は歩き出した。


(バサバサバサバサ)コウモリの群れ。


「ノヴァさん変わったリボンだね」「ぶっ殺すのよ!」

 大きな黒いリボンをつけているノヴァ。コウモリが止まっても違和感がない。


 廃坑の中は掘りかけの穴やトロッコ、ツルハシが散乱している。


 ルビー:薄暗いし薄気味悪いとこね。いかにも何か出そうだわ。

  朱音:変わった石もあるの。穴だらけなの。

  鏡太:廃坑になってかなり経つのよ。あと私、ノヴァなのよ!

  鏡太:これどちらに行けばいいんだろう?適当だと迷いそうだよ。

 左右の二つの分かれ道にでた。


「石を積んで石山を作るのよ。目印なのよ」

「お~ノヴァさんにしては良いアイデアだね。それで行こう」

「しては余計なのよ。鏡太を積むのよ。てなんで私が置かれてるの?」

 石山の上に積まれたノヴァ。

「よし!これでOK。右から進んでいこう。辺りがかなり暗いね。それにパパさんの装備ランプだもんな~。全く先が見えないよ」

 近代装備を期待していた鏡太。先が見えないことに不安を感じている。

 ピチョン。ピチョンとあちこちで水滴が落ちる音がする。

「キャッ!もう何か背中に落ちてきたわ」

「かなり湿気があるね。水脈でも近いのかな」


 一行はさらに奥へと進む。ルビーがいきなり騒ぎ出した。

「何かお尻がムズムズするわ!鏡太どさくさに触ってないでしょうね」

「そんことするわけが!?」

 ルビーは内股でモジモジしている。トイレを我慢してるような格好だ。

(なんだあれ?ルビーの胸元に何かついてる気が)

「何ジロジロ見てんのよ!このスケベ!」

「ごめん!」

(気のせいか?何かおかしいぞ。胸元の服が縮んでる気がする)


「このロリコン!また胸見てるわね!」

「そうじゃなくて」(む、胸が!見えそうに)

「そうじゃなくてなによ?」


「ルビー胸の亀裂に何かいる!(ボグッ)アウッ!」

「亀裂って何よ!馬鹿にしてんの!」

 思い切り顔面を殴られた鏡太。謎の透明な生き物を取ろうとルビーに近寄る。

「じっとしてて(プニュ)『どこ触ってんのよ!(ボカッ)』これだよこれ」

 鏡太はネバネバした透明な生き物をつまんでルビーに見せる。

「何それ気持ちワル~い。早く捨てなさいよ」


「あの~私も胸の辺りムズムズするの。これ恋なの?」

「朱音ちゃんもか!谷間についてる!」(目の毒だ速く取ろう)


「アンタさらりと谷間て言ったわね!私、へこんだわ。傷つくわ!」

 ルビーは扱いの違いに落ち込んだ。


「なんか胸に付いてるのよ。取ってなのよ」

「ルビー、朱音ちゃん大丈夫?痛いとかない?このネバネバなんだろね」

「無視すんじゃないのよ!傷ついたのよ!」

「はいはいとりますよ~」

 どうせ見えてもペッタンコだろと思いながら鏡太はノヴァのを取ってやった。


 ノヴァはネバネバの生き物に心あたりがあるようだ。

「これ多分スライムなのよ。坑道によくいるって言ってたのよ」

「服を食べるスライムか。もう少し遅かったら真っ裸だよ」

 鏡太はそれはそれで見たいかもと思っていた。

「一応、私服の下に水着は着てるし、少しで助かったわ」「そうなの?」

「うん。つけてるのよ」「はい。着てきたの」

(スライムさんもう少し頑張って!)

 鏡太は黙っていたら見えてた事に気がついてない。


「ここに居るのも危険だね。奥へ行こう。いきますよ八戒はっかい

『・・・』ノヴァは泣いていた。


 鏡太一行は奥へ進み、広い空間のある場所へでた。

「オオー。これは凄い!」

 鏡太、ルビー、ノヴァ、朱音は驚きの声をあげる。

「なんて幻想的な場所なんだ。こんなとこが存在するなんて」


 辺りにはキラキラ光る水晶、流れ落ちる滝。滝下には綺麗な泉。その周りに咲く色とりどりの草花。それに水晶のせいもあるのか、なぜか明るい。その光景に一同は見惚れていた。


  朱音:とても綺麗なの。お姉ちゃんにも見せてあげたいの

 ルビー:ほんと綺麗だわ。こんなとこがあるなんて信じられない。

     透き通る泉もあるし、泳げそうよね。水着できて正解かも

 ノヴァ:水晶綺麗なのよ。たくさん持って帰って売るのよ~

  鏡太:どうせ僕が持つんだから少しだけですよ。

     それにしてもランプ無しで明るいのは、このコケのせいなのかな

 コケを手に取り辺りを見渡す鏡太。


「あれ~ここって先がないよ!行き止まりだ。どうしよう。みんな集まって」

 散策しているルビー、ノヴァ、朱音を呼び戻して状況を言う鏡太。

「どうするのよ?また引き返すのよ?」

「そうなるね。みんなすぐ引き返す?それとも休憩してから行く?」

「わたしは水晶まだ集めたいのよ。あと泳ぎたいのよ」

「そうね。私もノヴァさんに賛成。あんな綺麗な泉、泳いでみたいもの」

「わたしも疲れたの。あと綺麗だから風景の写生がしたいの」


「そっか~無理はできないしね。それじゃ休憩してから戻ろうか」

 休憩となり、みんなは鏡太のそばから離れた。


「さて、リュックでも確認するか。使えそうな物見ておかないとね」

 リュックの中身を出していく鏡太。


「これが剣か。確かに記号がついてるな。それ以外は普通の剣だね。僕に使いやすいくらいの長さだし刃の鋭さから切れ味は良さそうだね」

 鏡太は剣を振り回してみた。

「ほかは(ゴソゴソ)本か。どれどれ、なんだ水着写真集か。ドワーフだから色気がないな~。なんだこれ?」

 一枚の紙切れが写真集から落ちる。読み上げる鏡太。

『使ってください』「使えるか!!!パパさん何考えてんのよ!」

 パパさんの行為はちりになった。


「あとは食料とロープ、ロウソクで終わりか。やはりノヴァさんが重いのかな?」

「鏡君、上手に描けたの。見て欲しいの」

 そう言って朱音が近くにやってくる。スケッチブックを覗き込む鏡太。

「ほ~綺麗に描けてるね。でも何で泉で抱き合う男性がいるの?」

「いたらいいと思ったの」「それ空想だよ!写生じゃないよ」

「鏡君、意地悪なの。次のページは大丈夫なの」「どれどれ」


『いくよ圭介!』滝の上で飛び込もうと構える鏡太。

『速くこいよ!』パンツが脱げ、尻丸出しの圭介。

「・・・」

「朱音ちゃんこれな~に?」「BLなの」

 鏡太は滝よりどん底に落ちた。


 そんな時、泉で泳いでいるルビーとノヴァの呼ぶ声がする。

「鏡太も来るのよ~。泳ぐのよ~」「アンタも来たら。気持ちいいわよ」

「僕、深いとこはダメなんだよね。二人で遊んでてよ」


 ルビー、ノヴァが泉で遊んでいる最中さなか、目の前にバシャーン!と水しぶきが湧き上がる!

 突然、見たこともない巨大な怪物が出現した。危険と感じた鏡太は叫んだ。

「あれはカエル?トカゲか?二人共危ない!速く岸に上がるんだ!」

「岸まで遠いのよ。すぐ無理なのよ」

 鏡太の心配をよそに怪物は手を振りかざし、ノヴァを捕まえる。

「鏡太~助けてなのよ~」「私が行くわ」

 そう言うとルビーは大鎌を持ち怪物に立ち向かう。

(僕も剣でなんとかしよう)剣を持ち岸辺に立つ鏡太。


「このデカ物、離しなさいよ!ハッ【ルビー会心の一撃!】やった離れた!そっちいったわ!鏡太受け止めて」

 怪物の手から逃れ宙を舞うノヴァ。鏡太がいる方向へ飛んでくる。

「わかった。任せて!さあ来い!」

 鏡太はノヴァを待ち構える。


「カキーーーン!会心の一撃」「何すんのよーーー!」

 再び怪物へと飛んでいくノヴァ。

「あっ!はずみで打っちゃった。テヘッ」


『パクリッ』ノヴァは怪物に飲まれた・・・。


(腹壊せ!腹壊せ!腹壊せ!・・・)と鏡太は祈る。が怪物は平気だ。

「鏡太!祈ってる場合じゃないわ!私がそちらにおびき寄せるから、二人で何とかするわよ!ほらデカ物こっち来なさい」

 ルビーは怪物を鏡太がいる方へ誘導。泉の岸へ連れてきた。鏡太は構える!

「よし!こちらに来た!行くぞ(ブスッ)」

 怪物の腹に剣が突き刺さる!(ノヴァさん刺さってたらゴメン!)

「怪物がひるんだわ。いくわよ!」(シュピン・シュピン)

 大鎌で怪物の首を跳ね真っ二つにしたルビー。怪物より生まれた新たな生命。


「桃太郎じゃないわよ!(ゼーゼー)必死に避けたのよ!(ゼーゼー)」

「ま~無事でよかったじゃない」

「めちゃ心配したよ。ここは危険だし行こうか」

 激怒のノヴァをよそに出発して誤魔化そうとする二人。

「覚えてるのよ!」


 鏡太、ルビー、ノヴァ、朱音は二股の道へ引き返し左の道を行く。

「また分かれ道だ。今度は数が多いな。どちらに行けば石碑に出るんだろ?」

「手分けして少し調べてみましょう」

 ルビーの提案で皆は複数ある洞穴の壁や入り口付近を調べだした。


「鏡君、ここに何か目印があるの」

 朱音は鏡太を呼ぶと目印が在る通路へ案内する。

「ほんとだ壁に小さく矢印があるね。もしかすると学者さんが付けたのかも」

「考えてても仕方がないわね。進みましょうよ」「そうだね」

「また分かれ道だ。目印がないか調べよう」

「こっちに目印あったのよ」「じゃこっち行こう」


 複数の別れ道が何度も有り、目印を頼りにかなり奥まで来た4人。


「なんか見えてきたぞ!あれが石碑みたいだ」

 鏡太達は石碑へ目掛けて走り出した。

 大きな広間の真ん中にポツンとある黒い石碑(モノリス)。


「これがトロイヤの石碑か~。確かに記号が書かれてる。予想はしてたけど石碑以外に他は何も見当たらないね」

「へーこれが石碑ね。大変な道のりのわりに何もないわね」

 鏡太もルビーも少し拍子抜け。

「そうなのよ。一番大変なの私なのよ」

 ノヴァは怪物に食われたことを根に持っている。

「遺物と同じ文字書かれてるの。でも何もないの」

「石碑には手がかりはないし、あとは周りを調べるだけだね。仕掛けとか罠とかないか注意して見てみよう」

「了解」「うん」「わかったなの」

 皆は返事をして付近を探索しだした。


「う~ん。それらしいものはないな。ねえそっち何かある?」

「何もないのよ」 「何もないの」

「ねえねえ。これって何かしら?」

 ルビーが何かを発見したのか鏡太を呼ぶ。


「どれどれ。これなんだろね?壁に突起とっき見たいのがあるね」

 触ってみると凹む。鏡太は何度か押してみたが何も変化はない。

「ボタンみたいなものかな。けど押しても何も起こらないよね。何の為に使う物だろう?」

 壁に並んだ3つの突起を見つめ考える鏡太。


「鏡太~こっちに何かあるのよ!」

 ノヴァの叫びで駆け寄る鏡太。

「なんだこれ?何か差し込むようなくぼみの穴があるな」

 鏡太は地面を見つめる。

「よく見つけたね。こんなのノヴァさんしか見つけられないよ」

 身長が高い人には見つけにくい程、穴は小さい。

「この穴は何かを入れるみたいだね。差し込み口からすると平たい物だけど」

「私の大鎌は平たいわよ」

 ルビーが大鎌の先端を鏡太に見せる。

「鎌ね~。試しに入れてみて」

 ルビーが大鎌の先端を差し込むが何も起こらない。鏡太はピンときた!


「僕たちにある平たい物って言えばこれだ!」

 ドヤ顔の鏡太。ルビーの胸を指差し地獄を見た。

「あんた冗談はドヤ顔だけにしなさいよ!」「ずみまぜん。冗談でず」

 そんな時、朱音が言う。

「剣なの。鏡君がパパからもらった剣なの」「それだ!よし入れてみるよ」

 朱音の言葉で剣を差し込む鏡太。だが何も起こらない。


「あれおかしいな。」「もしかしてさっきのボタンじゃないの?」

 ルビーの言葉で確信を得た鏡太。

「それだ!でも3つあるから迂闊うかつには。罠かもしれないし」


「押したのよ~」

 朱音に抱きかかえられ、ボタンを押しているノヴァ。


(ゴゴゴゴゴゴ・・・)

「えっ!なんか地響きがするよ!大丈夫なのかな?」

 そう思った瞬間!鏡太が立っている地盤が崩れ落ちる。

「うわーーーーーーー!」

 差し込んだ剣もろとも鏡太は地面に吸い込まれた。

「キャー!鏡太ー!」

 いきなりの出来事にノヴァ・ルビー・朱音が叫び声をあげる。


 崩れた地面により地中深く落ち目覚めた鏡太。

「ここはどこなんだ?僕、落ちたんだよね」

 上空を見つめると天井には小さな穴が見えている。鏡太は体を動かそうとしたが左足から激痛。

「痛っ!血も出てるし、これ足折れてるよ。これは再生に時間かかるな」


 鏡太はココはどこなのか?と辺りを見わたす。広い空洞のようだ。

 状況整理が出来ない中、鏡太のはるか先で人らしき姿が見える。

「あ、あれは人?誰か倒れてるのか?まだ再生してないけど行ってみよう」

 足を引きずり倒れてる人のそばにたどり着いたがすでに息絶えていた。

「この人も落ちてきたのかな。何か手に持ってるな」

 亡骸から紙切れを取ると何か書いてある。鏡太は読んでみた。


【冒険者の遺言】

後の冒険者へ。この手紙を読んだら私の意思を受け継いで欲しい。

私は学者で冒険者でもある。石碑の解読に成功し、ここまでたどり着いた。

石碑は禁断の土地の封印を解くためのものらしい。

封印を解くためには5つの道具と呪文が必要なのが判明した。

だがその所在はわからない。初めにトロイヤ石碑を調べ1つの呪文は判明した。

私はもう長くはない。呪文を残すので謎を解き明かして欲しい』

『ラ・マ・オン』呪文はそう書かれていた。


【読み終えた鏡太。考え中】

 謎は全て解けた!と言いたいけど関連性だけは飲み込めた。道具と呪文を集めるのが目的になるけど、どこに何が必要なのかが解らない。

 この学者さん、もとい冒険者が生きていれば重大発見だったと思う。もしかしたら、他にも解読した人がいるかもしれないな。

 ここを脱出できたら、また考えてみよう。


 鏡太は罠で命を落としたであろう亡骸なきがらに手を合わせ辺りを見回した。

「あそこに台座がある行ってみよう」

 空洞の右奥に見えた台座に歩み寄る鏡太。

「これも剣を差した穴と同じだ。剣はあるけど罠があるとも限らないな。怪しい場所が無いか調べてからにしよう」


 辺りを探索したが何も見つからない鏡太は決心し剣を差す。その瞬間、鏡太の姿は消えた。


「あれここは?」

 鏡太は石碑の前にでた。突然、石碑から現れた鏡太に駆け寄る3人。

「鏡太!分割ぶんかつ、踏み倒されたかと心配したわ!」

「ルビーひどいな~」

「うそよ。うそよ。本当に心配したのよ。そこが見えない穴だし通信も届かないし、ロープで降りようかとも考えたわ」

「通信か~。足折れてたし綺麗に忘れてましたよ」

「鏡太~心配したのよ。帰り歩くの嫌なのよ。おんぶなのよ」

「ノヴァさんの心配微妙すぎ!」

「鏡君、大丈夫なの?怪我は痛くないの?BL素材大事なの」

「朱音ちゃんも微妙すぎる!w。でもみんな心配かけたね」

 なんとか皆の元へ無事に帰れた鏡太は安心した。

「落ちた穴で重大な事が理解わかったんだ!まずはココを出て帰ってから話すよ」


 鏡太、ルビー、ノヴァ、朱音は学者の目印を頼りに廃坑入り口に戻ってきた。

「はあ~。外の空気が美味しいな~」

「ホントね。坑道は埃ぽいし、疲れたわ」

 鏡太もルビーも思いっきり背伸びをしている。

「泉のとこは良かったのよ。あっ何か忘れているのよ?」

 ノヴァは怪物の恨みをもう忘れていた。

「BLさんはいなかったけど楽しかったの」

「みんな、パパさん家までもう少しだ。頑張ろう」「おー」

 ノヴァの実家まで皆は歩き出した。


 パパさんの家に戻りテーブルを囲む4人。

 鏡太は冒険者の手記のことを、みんなに話した。推論をまとめてみる。

 「でね、トロイヤ石碑の呪文が解ったけど、道具がいるみたいなんだ。道具はゆかりの物だと思う」

 鏡太の話を興味深く聞くルビー、ノヴァ、朱音。

「それで僕なりに推測した結果、トロイヤに伝わる物で思い浮かぶのは、あの巨大ハンマーだ。祭事にも使われてるからね」

「なるほどね。アンタにしては冴えてるじゃないの。まあ、試してみないと解らないわね」

 ルビーは鏡太の推論に納得したようだ。

「パパのハンマーず~と昔からあるのよ。謎なのよ」

「私も鏡君と同じ答えなの。でも使わないとわからないの」

「石碑まで運ぶの大変だけど、やる意味はあると思う。流石に降りてきたばかりだし、体力的に無理だから明日みんなで行こう」

 そうと決まり翌朝までテントで野宿となった。


 翌朝準備を整え迷うことなくまた石碑へやってきた4人。

「ぜーぜー。コレやっぱりしんどいな~。なんでこんなに大きくしたんだよ」

 運搬役の鏡太は疲れきった様子。

「しょうがないわね。古代人が考える事だし理解できないわ」

「帰りは軽いのよ。ノヴァだけなのよ」

「鏡君、お疲れ様なの」


 一息ついた鏡太はさっそく準備を始める。

「それではやってみようか。まずハンマーを石碑前に置いてと。そして呪文だね」

              『ラ・マ・オン』

(ヒュイーン・ヒュイーン・・・)と呪文を唱えると石碑から音が鳴り出した。

「これは!?石碑が光ってる!ま、眩しい!」

 閃光が走る。暫くすると光だした黒い石碑は発光が止まり。白く変化していた。


「あの光はなんだったんだ!それに石碑が白色にかわってる。これで封印が解けたのかな?」

 鏡太の疑問に『かな?』と首をかしげる一同。

「う~ん。変化はあったし成功なのかもしれないね。でも封印はあと4つだし、全て謎を解かないとココが解除されたのか確証はないかな」

「ほかに変化は無いし帰りましょうよ」「そうしようか」

 鏡太、ルビー、ノヴァ、朱音は鉱山の石碑をあとにする。


「疲れたわ~血ちょうだい。分割の約束忘れてないでしょうね~」

「覚えてるよ~48回払いでしょ」「アンタ増えてるじゃないの!」

「えっ、そうだっけ?僕あたま悪いからな~」

 口笛を吹き誤魔化そうとする鏡太。

「ホントのバカにしましょうか?明日からエヘエヘ言ってなさい!」

 大鎌をもって追い掛け回すルビー。


「私もネカマの代金もらってないのよ。払うのよ」「あんた感動台無し!鬼だな」

「わたしもBL破かれたの」「それ僕じゃなーい」

 ココぞとばかり言われた鏡太。次の目的と推測を皆に伝える。

「まっ、冗談はさておき、今後の封印解除だけど手がかりがありそうなのはルビーの故郷バレンタインだね。呪文が多く伝承されてるから可能性が高い」

「トロイヤのパターンでいくと大鎌が可能性はあるけど」

 だが、その可能性はルビーに否定された

「どうだろ。私の大鎌だけどほとんどの人が持ってるわ。大量生産されてる遺産だと思うわよ」

「そうなんだ!それだと違うかもしれないな。別の何か、それか大きな大鎌でもあるのかな?大大鎌て何か変だよね」

「大きな大鎌があるなら噂くらい聞くと思うけど全然だわ。年長の人か学者らしき人がいれば何か話聞けるでしょ。帰ったらママにでも聞いておくわよ」

「ルビーが有力情報つかめればいいけど。お願いしておくよ」

「任せておいて。でも期待はしないでね」


 鏡太はこの際だとドサクサにまぎれてルビーに言った。

「それと言いにくい事なんだけど、遊園地に二人で行く約束だったけど、人数増えちゃった。テヘッ」

「テヘッ。じゃないわよ!そんなこと早く言いなさいよ!こっちの予定もあるんだからね!」

(二人で楽しもうと思ったのに~。でも仲良くなって血をもらう計画は成功してるのよね。分割だけど・・・)

「ごめん。ごめん。けど子供達で行けない理由もあるし、母さんも保護者で参加するから許してよ」

「それもそうね。許してあげるわ」


 この時、鏡太が落ちた空間で異変が起きていることを誰もしらない。


 石棺からでて辺りを見回す少女。

「ここはどこにゃ?私はだれにゃ?」


































 

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