番外編 二人の音【信じ続けた少女】
時は
「朱音、昨日も夜ふかし?いつも何してるの?」
「お姉ちゃん。えーと内緒。」「いつもそればかりじゃない」
「お姉ちゃんにも教えてよ~(こちょこちょ)」朱音をくすぐる紫音。
「や・やや・ウフフ・やめてよ・ウフフ・お・教える」笑い転ぶ朱音。
「えとね。この前、駅前の本屋さんに変わった本あったの。何か男の人が抱き合ってるの。お店の人に聞いたらBLて教えてくれたの」
「BLてな~に?」「誰も教えてくれないからわからないの」
「う~ん。Bはバストかな~Lはなんだろレッグ?SLじゃないのよね~」
必死に略を考える紫音。
「私が思うにはボーズ・ロリコンなの。そうに違いないの」
「うん!それ当たってるかも。でもなんだか危険なお坊さんね」
「お姉ちゃんもそう思う?その本たまに坊主頭の人出てくるの。
「ハイカラなお坊さんね。お墓にお
「朱音の本、なんだか面白そうね。お姉ちゃんにも見せて?お部屋行っていい?」
「うーん。いいよ。見せてあげるの。お姉ちゃんも好きになるの」
「久しぶりに部屋に入れてくれたけど本増えたね~」
「色んな本集めるの楽しいの。これなのBL」
「わーホントに抱き合ってる~でも何で抱き合ってるんだろう?」
「それ友情なの。ふんどし姿もあるの」
「お相撲さんかしら?。お相撲さんいつも裸で抱き合ってるものね」
「お姉ちゃん
「バスケのキャプテンとかのシーンもあるね。友情ぽいね。コレ体育倉庫で何してるのかな~」
「秘密特訓で間違いないの。そのあと全国大会に出るの」
「お前のために頑張るよ!てセリフもあるの。ハアハア言ってるの」
「お姉ちゃん
「おねえちゃん正解なの。ムチでバシバシ叩かれて我慢している人もいるの」
「わー痛そうね。我慢強い人なのね。根性あるよね」
「友情・努力・根性なんて青春だよね」
「勇気てあるの?」「ロウソク
「誰かにロウソクとか、お姉ちゃんにはそんな勇気ないわ」
「愛は抱き合ってるのがそうなのね。友情という名の愛なのね」
「青春と感動いいわね~。朱音、凄いの見つけたじゃない」
「えへへ。そう思うでしょ。大発見なの」
「けど、夜ふかしはどうしてなの?」
「それから沢山BL買ったの(ドサッ)少しずつ見てるの」
「わーたくさんだね。お姉ちゃんにもたまに読ませて。お願い」
「私がいるときならいいの。でも宝物だから大事に読むの」
「うん。理解った。大事に読むね」
「あとパパとママには内緒なの」「うん。絶対話さない」
紫音12歳。季節は夏。
「朱音。今日も暑いね~今日は何読んでるの?見せて」
「お姉ちゃん近づくと、よけいに暑いの。汗で本が汚れるの」
「だってお姉ちゃんも見たいもん。じゃこっちのカッコイイお兄さんの見ていい?ホストの花園て書いてあるのだけど」
「読んでいいの。それ芸術なの」
「う~ん。セリフと顔はいいけど、何やってるのかわからないね」
「これは根性ものかしら?サブと兄貴てタイトルだけど」
「それは青春もの。浜辺をフンドシで走ってるの。たまにハアハアなの」
「どれみてもハアハアなのよね。これ何してるんだろう?」
「私、マンガ書けないから本を
「男性を観察しないと書けないかもね。想像力もいるかしら」
「そうなの。だから取材もしてるの」
「朱音は体が
「大丈夫なの。この前は本屋さんの店員とお客を題材にしたの」
「面白そうね。どんな風に?」
「店員さん言うの『そんなにコレが欲しいのか』客が言うの『我慢できません』て
展開で書いてみたの」
「お客さんよほど本が欲しいのね。
「勉強するとこれがBLなの。奥が深いの」
「朱音は勉強熱心ね。お姉ちゃんも協力して題材見つけるね」「うんなの」
紫音12歳。季節は秋。
「朱音~学校行こう。遅れちゃうよ~」
「待ってなの。今大事な本いれてるの。先行ってなの」
「しょうがないな~学校に教科書以外はダメなんだからね。先行くね」
「大事なものなの。持っていくのOKなの」
朱音は学校へと急ぐ。道端で数人の男子が話してる。
「前ら仲良しだよな~いつも一緒にいてさ。こいつら男同士でキモいよな」
「ホントホント。なんてたっけこう言うのB何とか」
「BLだろう。男同士でやらしいことするんだぜ」
(今BLて聞こえたの!なにか情報聞けるの。隠れて見るの)
朱音は立ち止まり聞き耳をたてる。
「BLなんの略だっけ?」「お前バカだな~ボーイズ・ラブだよ」
「そっか!アハハ。男が男好きなんだよね」「男同士でエッチなことするんだぜ」
「どんなのよ?女子にしてるようなのか」「そうだよ」
(お姉ちゃん解ったの。ボーイズラブなの)
「おい!そこのお前(私なの?)お前だよ!何聞いてんだよ!」
「隠れてないで出てこいよ!」
朱音は男子達の前へ恐る恐る出て行く。
「私はその。BLて聞こえたから。その」
「なんだよ!BLに興味あるのかよ!はっきり言えよ!」
(怖い・怖いよ・お姉ちゃん)
「私、ただ本が好きなの?興味があっただけなの。もう行くの」
「待てよ!のーのーばかり言ってよう。ウゼ~んだよ!」(ドンッ!キャ)
朱音は突き飛ばされカバンの中身が散乱した。
「なにコイツBL本なんて持ってるぜ」「ホントだこいつ腐女子だよ」
「キモイよ!お前!あっち行けよ!」「クラスにもこんな女子いないよな」
「学校にBL本なんて持ってきてよ!」「おい!みんなに言いふらそうぜ!」
(おねえちゃん。なんで私がこんな目に会うの?悪いことしてないの)
「朱音いる~?部屋入るわね。どうして泣いてるの?」
「なんでもないの。そうだお姉ちゃんBLて解ったの。情報つかんだの」
「朱音すごいね。それでなんの略なの?」
「ボーイズ・ラブなの。私ずっとこれ好きなの」
(お姉ちゃんには本当の事言えないの。ごめんね。お姉ちゃん)
その後、朱音はBLでイジメられている事を隠し、来る日も。来る日も。学校に休まず行き続けた。
紫音12歳。季節は冬。
「朱音、具合はどう?少しは熱下がったかな?学校お休みの連絡しとくね」
「ありがとう。お姉ちゃん。でも学校行くの」
「寝てたほうがいいよ。熱まだあるじゃない。無理すると長引くよ」
「大丈夫なの。今は気分がいいの」
「具合悪くなったら先生に言うのよ。わかった?」「わかったなの」
「琴川さん。貴方大丈夫?もう家に帰って休んだほうがいいわ」先生が心配する。
「BL女、熱あっても学校きてるぜ。学校こないでいーてのアハハ」
こそこそと男子の悪口が聞こえる。
「お昼までで帰りなさいね」「はいなの」
昼休み。
「朱音大丈夫?お姉ちゃんも一緒にいようか?」
「大丈夫なの一人で帰るの。お姉ちゃんまたBL見せてあげるね」
一人下校する朱音。本屋の前で立ち止まる。
「あれは。新しいBL本なの。お姉ちゃん見せたら喜びそうなの」
「ハーハー。熱出てきたの。急ぐの。ハーハー。お姉ちゃん楽しみにしててね」
紫音12歳。雪が降る寒い日の午後。
「朱音お姉ちゃんずっと付いててあげなくてごめんね。あの時一緒に帰っていればこんなことには・・・最後のこの本お姉ちゃん大切にしてるよ」
墓前に花を添え泣き崩れる紫音。
朱音は事故にあって命を落とした。事故現場の話では朱音は本屋で買ったBL本を最後まで手放さず大切に持っていたという。その後の噂でBLの事で学校でいじめられている事も知った。ただ純粋にBLを好きだった朱音の無念。紫音は共に生きようと決心する。
朱音の部屋。一冊の本を持ち無念を思う紫音。
「あなたは生まれつき再生機能が弱く、いつもお姉ちゃんのそばにいたよね。本も沢山見たかったよね。悔しいよね。安心して。これからは、お姉ちゃんが朱音になって本を買ったり見たりするからね。ずっと一緒にいようね」
朱音の死で極度の精神的ショックを受けて開眼した特殊能力。
その名は『ドッペルゲンガー』分身。S級スキルである。今はその使い方をまだ知らない。通常時はテレパスだけを使用している。
現在の紫音の記憶は朱音が亡くなる以前のもので欠落部分が多い。
※これは二人の紫音が誕生するまでのお話です。その他、詳細はご想像でお楽しみください。
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