番外編 二人の音【信じ続けた少女】

時はさかのぼり紫音と鏡太が出会う4年前。紫音12歳。季節は春

「朱音、昨日も夜ふかし?いつも何してるの?」

「お姉ちゃん。えーと内緒。」「いつもそればかりじゃない」

「お姉ちゃんにも教えてよ~(こちょこちょ)」朱音をくすぐる紫音。

「や・やや・ウフフ・やめてよ・ウフフ・お・教える」笑い転ぶ朱音。

「えとね。この前、駅前の本屋さんに変わった本あったの。何か男の人が抱き合ってるの。お店の人に聞いたらBLて教えてくれたの」

「BLてな~に?」「誰も教えてくれないからわからないの」

「う~ん。Bはバストかな~Lはなんだろレッグ?SLじゃないのよね~」

必死に略を考える紫音。

「私が思うにはボーズ・ロリコンなの。そうに違いないの」

「うん!それ当たってるかも。でもなんだか危険なお坊さんね」

「お姉ちゃんもそう思う?その本たまに坊主頭の人出てくるの。薔薇ばらとかくわえてるの。あれとても不思議なの」

「ハイカラなお坊さんね。お墓におそなえするのかしら?」

「朱音の本、なんだか面白そうね。お姉ちゃんにも見せて?お部屋行っていい?」

「うーん。いいよ。見せてあげるの。お姉ちゃんも好きになるの」


「久しぶりに部屋に入れてくれたけど本増えたね~」

「色んな本集めるの楽しいの。これなのBL」

「わーホントに抱き合ってる~でも何で抱き合ってるんだろう?」

「それ友情なの。ふんどし姿もあるの」

「お相撲さんかしら?。お相撲さんいつも裸で抱き合ってるものね」

「お姉ちゃんするどいの。」

「バスケのキャプテンとかのシーンもあるね。友情ぽいね。コレ体育倉庫で何してるのかな~」

「秘密特訓で間違いないの。そのあと全国大会に出るの」

「お前のために頑張るよ!てセリフもあるの。ハアハア言ってるの」

「お姉ちゃん理解わかった!それは多分。努力よ!スポーツマンガにあるわ」

「おねえちゃん正解なの。ムチでバシバシ叩かれて我慢している人もいるの」

「わー痛そうね。我慢強い人なのね。根性あるよね」

「友情・努力・根性なんて青春だよね」

「勇気てあるの?」「ロウソクらす人、あれ勇気いるの」

「誰かにロウソクとか、お姉ちゃんにはそんな勇気ないわ」

「愛は抱き合ってるのがそうなのね。友情という名の愛なのね」

「青春と感動いいわね~。朱音、凄いの見つけたじゃない」

「えへへ。そう思うでしょ。大発見なの」

「けど、夜ふかしはどうしてなの?」

「それから沢山BL買ったの(ドサッ)少しずつ見てるの」

「わーたくさんだね。お姉ちゃんにもたまに読ませて。お願い」

「私がいるときならいいの。でも宝物だから大事に読むの」

「うん。理解った。大事に読むね」

「あとパパとママには内緒なの」「うん。絶対話さない」


紫音12歳。季節は夏。

「朱音。今日も暑いね~今日は何読んでるの?見せて」

「お姉ちゃん近づくと、よけいに暑いの。汗で本が汚れるの」

「だってお姉ちゃんも見たいもん。じゃこっちのカッコイイお兄さんの見ていい?ホストの花園て書いてあるのだけど」

「読んでいいの。それ芸術なの」

「う~ん。セリフと顔はいいけど、何やってるのかわからないね」

「これは根性ものかしら?サブと兄貴てタイトルだけど」

「それは青春もの。浜辺をフンドシで走ってるの。たまにハアハアなの」

「どれみてもハアハアなのよね。これ何してるんだろう?」

「私、マンガ書けないから本を真似まねて小説書いてるの。なかなか大変なの」

「男性を観察しないと書けないかもね。想像力もいるかしら」

「そうなの。だから取材もしてるの」

「朱音は体が丈夫じょうぶじゃないから危ないとこはダメよ」

「大丈夫なの。この前は本屋さんの店員とお客を題材にしたの」

「面白そうね。どんな風に?」

「店員さん言うの『そんなにコレが欲しいのか』客が言うの『我慢できません』て

展開で書いてみたの」

「お客さんよほど本が欲しいのね。らされて可愛そうな気もするけど」

「勉強するとこれがBLなの。奥が深いの」

「朱音は勉強熱心ね。お姉ちゃんも協力して題材見つけるね」「うんなの」


紫音12歳。季節は秋。

「朱音~学校行こう。遅れちゃうよ~」

「待ってなの。今大事な本いれてるの。先行ってなの」

「しょうがないな~学校に教科書以外はダメなんだからね。先行くね」

「大事なものなの。持っていくのOKなの」

朱音は学校へと急ぐ。道端で数人の男子が話してる。


「前ら仲良しだよな~いつも一緒にいてさ。こいつら男同士でキモいよな」

「ホントホント。なんてたっけこう言うのB何とか」

「BLだろう。男同士でやらしいことするんだぜ」

(今BLて聞こえたの!なにか情報聞けるの。隠れて見るの)

朱音は立ち止まり聞き耳をたてる。

「BLなんの略だっけ?」「お前バカだな~ボーイズ・ラブだよ」

「そっか!アハハ。男が男好きなんだよね」「男同士でエッチなことするんだぜ」

「どんなのよ?女子にしてるようなのか」「そうだよ」

(お姉ちゃん解ったの。ボーイズラブなの)

「おい!そこのお前(私なの?)お前だよ!何聞いてんだよ!」

「隠れてないで出てこいよ!」

朱音は男子達の前へ恐る恐る出て行く。

「私はその。BLて聞こえたから。その」

「なんだよ!BLに興味あるのかよ!はっきり言えよ!」

(怖い・怖いよ・お姉ちゃん)

「私、ただ本が好きなの?興味があっただけなの。もう行くの」

「待てよ!のーのーばかり言ってよう。ウゼ~んだよ!」(ドンッ!キャ)

朱音は突き飛ばされカバンの中身が散乱した。

「なにコイツBL本なんて持ってるぜ」「ホントだこいつ腐女子だよ」

「キモイよ!お前!あっち行けよ!」「クラスにもこんな女子いないよな」

「学校にBL本なんて持ってきてよ!」「おい!みんなに言いふらそうぜ!」

(おねえちゃん。なんで私がこんな目に会うの?悪いことしてないの)


「朱音いる~?部屋入るわね。どうして泣いてるの?」

「なんでもないの。そうだお姉ちゃんBLて解ったの。情報つかんだの」

「朱音すごいね。それでなんの略なの?」

「ボーイズ・ラブなの。私ずっとこれ好きなの」

(お姉ちゃんには本当の事言えないの。ごめんね。お姉ちゃん)

その後、朱音はBLでイジメられている事を隠し、来る日も。来る日も。学校に休まず行き続けた。


紫音12歳。季節は冬。

「朱音、具合はどう?少しは熱下がったかな?学校お休みの連絡しとくね」

「ありがとう。お姉ちゃん。でも学校行くの」

「寝てたほうがいいよ。熱まだあるじゃない。無理すると長引くよ」

「大丈夫なの。今は気分がいいの」

「具合悪くなったら先生に言うのよ。わかった?」「わかったなの」


「琴川さん。貴方大丈夫?もう家に帰って休んだほうがいいわ」先生が心配する。

「BL女、熱あっても学校きてるぜ。学校こないでいーてのアハハ」

こそこそと男子の悪口が聞こえる。

「お昼までで帰りなさいね」「はいなの」


昼休み。

「朱音大丈夫?お姉ちゃんも一緒にいようか?」

「大丈夫なの一人で帰るの。お姉ちゃんまたBL見せてあげるね」

一人下校する朱音。本屋の前で立ち止まる。

「あれは。新しいBL本なの。お姉ちゃん見せたら喜びそうなの」

「ハーハー。熱出てきたの。急ぐの。ハーハー。お姉ちゃん楽しみにしててね」


紫音12歳。雪が降る寒い日の午後。

「朱音お姉ちゃんずっと付いててあげなくてごめんね。あの時一緒に帰っていればこんなことには・・・最後のこの本お姉ちゃん大切にしてるよ」

墓前に花を添え泣き崩れる紫音。

朱音は事故にあって命を落とした。事故現場の話では朱音は本屋で買ったBL本を最後まで手放さず大切に持っていたという。その後の噂でBLの事で学校でいじめられている事も知った。ただ純粋にBLを好きだった朱音の無念。紫音は共に生きようと決心する。


朱音の部屋。一冊の本を持ち無念を思う紫音。

「あなたは生まれつき再生機能が弱く、いつもお姉ちゃんのそばにいたよね。本も沢山見たかったよね。悔しいよね。安心して。これからは、お姉ちゃんが朱音になって本を買ったり見たりするからね。ずっと一緒にいようね」

突如とつじょ、紫音はまばゆい光に包まれる。二人の紫音が誕生した瞬間である。


朱音の死で極度の精神的ショックを受けて開眼した特殊能力。

その名は『ドッペルゲンガー』分身。S級スキルである。今はその使い方をまだ知らない。通常時はテレパスだけを使用している。

現在の紫音の記憶は朱音が亡くなる以前のもので欠落部分が多い。

※これは二人の紫音が誕生するまでのお話です。その他、詳細はご想像でお楽しみください。












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