第15話 図書室で新発見?女子バトル勃発!

【前回のあらすじ】

 ひょんな事から紫音、アリサ、岬と昼食を共にすることになる鏡太。そこは嫉妬しっとが渦巻く戦場だった。鏡太は昼食後、皆に不思議な黒い本を見せる。岬の能力をもってしても開かない本。アリサの情報で、てがかりは図書室に在ることが判明。鏡太は図書室に詳しい紫音に助けを求めた。それをこころよく思わないアリサと岬が不穏な行動をする。



 授業終了のチャイムの音。放課後がやってきた。

「さて、調べ物もあるけど禁止区域についての本も探さないとね」

 鏡太は鞄を持ち図書室を目指して歩き出す。


【図書室】

(ガラガラー)図書室の扉を開け室内を見わたす鏡太。

「な、なんで岬さんとアリサがここにいるんだ!」

「あら偶然ですわね。ちょうど借りたい本がありまして寄っていましたわ」

「わたしも、たまには御料理の勉強しようかな~て本探しに」

 別々のテーブルにて本を見ながら挨拶した岬とアリサ。二人の顔はかなり引きつっている。

(何か嘘っぽいな~)と怪しむ鏡太。アリサの側へ寄るとたずねてみる。


「アリサは何の本探してるの?優等生だし、ここで勉強でもないよね?」

「あ、あれですわ。手芸でもしようかと思いまして、本を探してましたの」

 アリサの手元のテーブルには手芸本らしきものが置いてある。

「ふ~ん手芸ね。手作りのマフラーとかプレゼントされたら嬉しいだろうな」

「ホントですの!」

 と大声をあげたアリサは注意された。

「アリサ誰かに編んであげるの?」

 と言いながら多少興味がでた鏡太はアリサの隣に座る。

「そうですわね~お父様かしら」(あんたよ!アンタしかいないわ!)

「へーお父さんにか、かなり喜ぶと思うよ。母さんか恵、僕にくれないかな」

(既製品か父さんのお古だしな~銃弾で穴あくから仕方ないんだけどさ)

(マフラーか~。私も鏡君に作ろうかな~)

 二人の会話に聞き耳をたてている紫音と岬も便乗しようと思っている。

「セーターよりはマフラーが作りやすく無難かもしれないね」

 鏡太の言葉にメチャクチャ反応した女子達。

 アリサ:(わたしはどちらも編みますわ!)

  紫音:(わたしはセーターにしようかな~)

   岬:(マフラーが簡単なのね!鏡君まっててね~♡)

 アリサ、紫音、岬の闘争心に火がついた。


「それで岬さんは?・・・みんなどうして近くにいるの!」

 後ろの席に座ってるはずの岬に声をかけた鏡太。だがいつの間にか全員、鏡太のそばにいる。

「話しやすいし、まあいいけど」(あまり乗り出して来ないで~)

「岬さん料理て言ってたけどその本、空手だよ」

「や~ね~鏡君。空手揚からてあげてのがあるのよ。知らない?」

唐揚からあげでしょ!そんな技しらないよ。あったら怖いよ!」

(岬さんが料理勉強なんてしないの、わかってるんだからね!)

「岬さんには後で僕が探してあげます」「やった!ありがとう」

(無駄な努力だと思うけどねw)


 今度は料理と聞いてアリサがボソッと言い出した。

「私も、お料理勉強しようかしら?。作ったことありませんの」

「そういえばアリサ学食ばかりだよね」

「お父様とお母様は忙しいですの。お手伝いさんもいますけど、なんといいますかお弁当が豪華すぎて」

(冷やかされて持ってこないのか)

「アリサ。作ったら僕が試食してあげるよ」

「ホントですの!」

 鏡太の思いがけぬ言葉に嬉しくて大声を上げるアリサ。また注意された。

(何か冷たい視線が突き刺さる)背筋に悪寒を感じた鏡太。


「きょ~く~ん私のは~」

 岬がしおらしく試食を催促さいそくする。やはり来たか!と思う鏡太。

「初めてのお料理からやってください!」

 とスルーする。

「料理に関しては紫音ちゃんに聞くのもいいと思うよ」

「絶対ヤダ!」

 アリサと岬、それだけはと断固拒否。二人はなぜか仲良くなった。

「岬さんとアリサで初めからだね。本探してきなよ」

「アリサちゃ~ん」「はい。お姉さま~ん」

 二人は手をつないでルンルン♫と何処かへ消えた。

(ふ~。二人がいないと本探し、はかどりそうだしな)

「それじゃ紫音ちゃん二人でそれらしい本探そうか」

「はい。それでは私はこちら見てきますね」

「じゃ僕こっち見るよ。」

 鏡太と紫音はそれぞれ別々に分かれ本を探すことになった。


 鏡太は【カ~コ】の本がある区画に来ていた。

「とは言ってもこの量はな~。禁止区域だし『キ』の本棚見てみるか」

「キ~はこのあたりだね。キ、キ~と。『禁止用語』か(気になる!)」

「今度産むね・・・満子(みつこ)ね・・・鏡太ね・・・!!!」

「僕は歩く禁止用語か!これ絶対に圭介だよね(許せん!)」

(その他、珍宝ちんぽうてのもあったな・・・なんだろ?)


「キ、キ~と。『禁断の花園』・・・誰だこんなの置いてるのは!」

(絶対中身はアレだよ!紫音ちゃんが並べたのかな?)再び探し出す。


「キ、キ~は『君は誰?』 僕、鏡太!て何言わせんだよ!」

「なんてタイトルなんだ答えたじゃないか!」


「え~と『キ』でも多いな~。おっこれは『禁断の地』これかもな薄いけど」


【禁断の地】

 今より1万年以上昔、かつて、この世界には一つの大陸に一つの種族しか存在しなかった。大陸の名は『パラノイヤ』。種族の名は『ミリアン』特徴は不明。

 土地に住む人々は魔法を使い文明を発達させていったが、なぜ、いつ滅亡したのかは謎である。

 研究によれば特に道具の使い方が現代とは異なる。道具にある種の呪文語を刻み詠唱一つで自由に使いこなした事が解っている。尚、呪文が発動した状態の道具もあるらしい。

 現代においては大陸は分裂し各土地に呪文や遺産が残されているのみで使い方に関しては全く不明である。


 鏡太は本を閉じるとたなに戻し、そして考えてみる。

「なるほど。パラノイヤにミリアンか。これが禁止区域と関係あるのかは解らないけど貴重な情報には変わりないな。学者さんも調べてる段階だし僕が理解できるのは本で調べたことだけだね。紫音ちゃんも何か見つけてたらいいけど」


 そんなところへ岬の声。

「あれ鏡君、ここで何してるの?」

 振り向くと岬とアリサが立っていた。

「僕は禁止区域の本を探してただけだよ。そっちは?」

「これ『キッチンの使い方』呼んでたの」

 なるほどキの欄だから二人がいたのか、と納得する鏡太。

「なかなか難しいのよね」

「基本ではあるけど、それがわからないと何もできないよw」

 岬に対してアリサが自信満々で応える。

「私はだいたい理解できましたわ。オホホ」(大丈夫なのかな)

「レンジにいれてチンッでできますわよ。お料理簡単ですわ。オホホ」

「それ料理じゃないよ!いや料理なのか?レンジを使うのもあるしな~」

 鏡太はこの二人にどう説明すればいいか悩む。


「鏡君、わたしもこれならできるかも。ポットからお湯いれて3分待つのよ」

「岬さんのは完璧に料理じゃありません!自分で作らないとダメですよ」

「なにが違うのかしら???自分でお湯入れたけど」

『ウガーーー!』頭をかきむしる鏡太。

「私もお湯につけると、できるのは簡単ですわ」

「二人共、手抜きはだめですよ~出来ているのでなく自分で作りましょう」

「僕は手料理が食べたいです。レトルトは禁止」

「もう初めからそう言って下さればいいのですわ」「言いましたよ!」

 鏡太も大声あげて注意された。

「僕はしばらく調べ物しますから、下準備までは勉強してね」

 そういうと鏡太は二人から離れ違う区画に移動する。


「キの欄に有力情報はもうないな。紫音ちゃんを探そう」

「どこかな。『シ』の本棚に来たけど。あっ!いたいた紫音ちゃん」

「あっ鏡君。何かわかりましたか?」

「うん『禁断の地』てそれらしいのは見てきた」

 鏡太は内容を紫音に伝えた。

「へーそんな種族いたんですね。驚きです」

「紫音ちゃんは何か発見あった?」

「え~と禁止区域ではないんですけど生態の本に面白そうな記述がありました」

「どんなの?詳しく聞かせて」


 紫音が調べて理解わかった事を話し出す。

「えーと、現在の世界の人種は元から存在してなくて、ある種族によって遺伝的に生み出されたというものです。仮説ではあるんですけど」

「なるほど。何か繋がりだした気がする」

 鏡太は先程、読んだ禁断の地で少しずつ理解出来てきた。

「一万年以上前に存在してたのがミリアン1種族だけならば、ミリアンが作り出した可能性が大だ」

「そういうことになりますね。それで大陸分裂で種族が分かれたのもうなずけます」

「それで他にも情報あった?」

「シの欄に『始祖しそ』て言う本がありました。これにも似たような記述がありますね」

「それによると古代人の特徴は、これも推測ですが現在の種族を合わせたものではないかと書かれていました」

「それありえるよ!だって遺伝で作ったのなら、遺伝情報は古代人からだしね」

「そう考えると特徴は金髪・角・牙・翼・小人てなるけど想像すると何か可愛いし怖さの欠片もないよね」

 鏡太は想像してみたが何かピンとこない。再び考える。


「多分、小人が違うのかな?もしかして耳か!ドワーフのとがった耳だ」

「それで考えると凄く恐ろしいですね」

「ミリアンの特徴はそれだと思うよ。髪色や肌色は遺伝上どの種族も当てはまるけど、推測だから会ってみないと何とも言えないね」

「種族も現在では数多くいるので他にも特徴があるかもしれませんね」

 現在では主な5種族以外にもゴブリンや人狼など多数の亜人種がいる。紫音の言葉で確かにそうだと思う鏡太。

「今、集めた情報はこれだけだね。図書室にある本すべてを調べるには時間がかかりすぎるし、ピンと感じる物も見つからない」

「また次の機会ですね。鏡君、少し休憩しませんか。図書室の隅に休憩する場所あるんですよ」

「いいね。僕も歩き回って疲れたよ」「こちらです。ついて来てください」

 紫音のあとを着いて行く鏡太。


 紫音に案内されて休憩所に行く途中、岬とアリサも合流。休憩場所についた。

 そこは図書室の隅にある小さなテラス。皆はテーブルへと腰掛けた。鏡太は皆の活動状況を聞いてみる。

「そちらは進展あった?僕たちは大発見したよ。学者の受け売りだけどね」

「そうなんですの?私たちは下準備まで覚えましたわ」

 大発見て何かしら?とキョトンとしているアリサ。自分の成果を満足気に鏡太に知らせる。

「へえ~それはたいした進歩だね」

(ちょいとテストしてみるか)自信がありそうなアリサに鏡太は質問を開始した。

「お米はどうやるの?」

「それは簡単でしてよ。お水でぐのでしたわね」

(川までいきますわ。お急ぎなら池で洗いますわ)と思うアリサ。


「ほ~ちゃんと勉強したんだね。次は人参、ジャガイモ、玉ねぎは?」

「皮をくんですわよね」

(ウチの馬に剥かせますわ!人参は得意ですわよ)


「お~すごいね!これで最後。牛肉は?」

「肉は簡単でわよ下味付ければいいのよね」

(牛肉て生きたままかしら?A5ランクだから生でもいいわね)


「アリサもう完璧じゃない、あと少し勉強すればカレーとか作れるよ」

「ホントですの!今度作って差し上げますわ!」

 鏡太は隠れた真実をしらない。


「お茶が入りましたよ」

 紫音がお茶菓子とお茶を持ってきた。

「ありがとう。紫音ちゃん」

(岬さんの進歩も見てみるか。アリサばかりだと不機嫌そうだし)

「岬さんはどこまで進歩したかな?」

「私は切る・焼く・煮る・しぼるる・いためるができるわ。テストしていいわよ」

「ほほ~そうきましたか。自信ありそうだけど大丈夫なの?」

「簡単。簡単。これできなくちゃ、鏡君たべてくれそうもないし。どうぞ」


「じゃいくね。魚はどうするの?」「簡単よ!しぼるよ!」

「それめるでしょ!(読み方違い)それにしぼってもダメ!お魚さん内蔵出るだけよ・・・」


「御飯は?」「切るよ!どうすごいでしょ?」

「おみそれしました!」

 恐怖で土下座した鏡太。

「次はコンニャク」「楽勝よ~しぼるでしょ」

「糸こんにゃく作れるよ!あんなヌルヌルよく絞れるよね」

(この人やはり不向きだ。ネジ飛んでるどころか本体からイカれてる!)


(二人に勝ったわ!)紫音は不敵ふてきな笑みをこぼす。


「それじゃソロソロ帰ろうか。次の休みにでも図書館で禁止区域は調べてみるよ」

「次の休みは遊園地じゃ?あっ」

 紫音はうっかり、しゃべってしまった。

「そういえば遊園地だったね。あっ」

 鏡太もうっかり釣られてしまった。それを聞いたアリサと岬の表情が変わった。

「あんたたち~まさか~」

 鏡太は必死に言い訳を考える。

「二人で行くんでしょう?どうなのよ~」「詩音ちゃんじゃないよ」

「遊園地て男と行かないよね?圭介は今寝てるし~」

 岬にするどいとをこつかれる。

「怪しいですわね~」

 あわてた鏡太は『母さんとだよ』と嘘をつく。それを聞いた岬は何やら腕時計をいじっている。

(ピピッ通信)

「もしもし陽子さん鏡君と遊園地行くんですか?」

「わー!やめてそれだけは・・・終わった・泣」

 もう正直に話すしかないとあきらめた鏡太。皆に事情説明。

「ルビーさんとカクカク・云々うんぬんなんだよ」

「へー女の子とね~。隠れて二人っきりね~」

 そう言う岬は今にも鏡太を抹殺しそうな顔つき。そこへアリサが真っ先に遊園地行きを申し出る。

「私も遊園地行きたいですわ」「それじゃ私も行きたい」「あの~私も」

 アリサに便乗して岬・紫音も自己表明。挙手している。

「もう好きにしてー。ただし全額持ちませんよ」

(気が重いけど、あとでルビーさんに連絡しとこ)

「それは大丈夫よ。ついて行くだけで自分で出すから」

 参加できれば何とかなると思う岬。

「お金の心配はいりませんわ。オホホ」

(二人で行きたいですわ)と思うけど参加出来たことが嬉しいアリサ。

「私も大丈夫です。お弁当持っていこうかな」

(食べ物で釣れたらいいな)唯一の武器の料理でハートをつかもうと考える紫音。


 女子の思惑が入り乱れる中。鏡太は予定を伝える。

「じゃ待ち合わせは次の休み公園8時に。雨天は中止で」

(波乱な一日になりそうな気がするな~)

(やったー!黙って着いて行くつもりだったけど、堂々と行ける~)

 棚からボタモチで喜ぶ紫音。

「それじゃ解散しようか」「はーい」

(どうして遊園地行きを紫音ちゃんは知ってたんだろ?)

 鏡太は紫音が心が読める(テレパス)なのをまだ知らない。

 帰り道、後ろから誰かを呼んでる声がする。誰だろ?
















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る