第14話 平穏な日々は修羅場の序章だった

【黒井家・鏡太の部屋】

 チュン・チュン・チュン。小鳥の鳴き声が聞こえる平穏な朝。

「ふあ~よく寝た。母さん来る前に起きれてよかったよ」

 時計を見る鏡太。今日は撃たれなくて済みそうだと喜ぶ。

「ソロソロ来る頃だ。隠れて驚かそう(フフフ)」

 そう言うと鏡太はクローゼットの中へ隠れる。

「鏡ちゃーん学校遅れるわよ」

 パタパタパタとスリッパの音を響かせながら陽子がやってくる。(ガチャ)

「あっれ~いないわね?」拳銃片手に?な陽子。


     「母さんここだ!毎度撃たれないよ(ハッハハハ)」


「キャー!鏡ちゃんのバズーカが狙ってる~!」

 いきなり現れたを見て陽子は逃げだした。

「えっ!?バズーカーて?」

 おもむろに下半身ををみる鏡太。

「イヤーーー!か、母さんこれは誤解だよー!」

 いつにも増して巨大にモッコリしていた鏡太だった。


 朝食。食卓をかこむ鏡太と恵。

「お兄ちゃん今日は早いよね。何かあったの?」

「鏡ちゃん朝から反抗期なのよ~。凶器ちんちんで母さん脅すのよ」

「人聞きの悪いこと言わないでー!」(下半身が勝手に暴れてるんです!)

「お母さんいじめたらだめよ。お兄ちゃん」

「いつも僕が虐められてますけど。シクシク」

 たまに早起きしてみても平穏には暮らせない鏡太。


 気を取り直して朝食を食べ始めた。

「やっぱり朝はお味噌汁だよな~」

(安全点検ヨシ!ズズ~はあ~落ち着くな~)

「あれ、あれれ~またないわね。どこかしら?」(ギクー)

「ま、また、お子様ランチか!」

 鏡太は山盛りご飯を真っ二つに割る。

「行儀が悪いよ。それチューリップ?御飯が変な形になってるよ」

 恵は割れた御飯が何かに見えるらしい。


「たまに割れた中からミサイルが出るんだよ!」(ロボットアニメか!)

「ヤダ~お兄ちゃんたら夢でも見てるんじゃないの?」

「恵!現実を見ろ!逃げちゃだめだ!」

「いいじゃない一本くらい」(ブーー!この子は現実から逃げてなかったよ)

「め、恵ちゃんは強い子だね~」「うん」

「速く御飯たべないと遅刻するわよ」

『はーい』と鏡太と恵は急いで朝食をすませ自室へ戻る。

 

「この本(古代遺産)一応、学校に持っていくかな。あとで図書室で紫音ちゃんにでも聞いてみよう」

 そう言うと鏡太はノヴァの店で買った黒い本をカバンへと入れる。

 制服に着替え玄関へ降りてきた鏡太。

「母さん行ってくるね」「鏡ちゃん忘れ物よ。はい、お弁当」

「ありがとう。行ってきま~す」

(この弁当包み嫌だな~。中身のご飯が♡だし)

 鏡太は玄関先で愛妻弁当を受け取り登校する。


「鏡君、おはようございます」

 正門前で元気よく挨拶してくる紫音。

「おはよう紫音ちゃん」

 挨拶をした鏡太は紫音との以前の約束を思い出した。

「あっ!紫音ちゃん今日、屋上で一緒に昼ご飯食べない?」

「はい!ご一緒します。約束覚えててくれたんですね」

「ごめん。言う機会がなくてね、晴れの日なら屋上に圭介といるから、遠慮なく顔だしてよ」

「ご一緒したい時はそうしますね。そういえば圭介さんいませんね?」

「圭介は撲殺ぼくさつ天使:岬ちゃんにやられて気持ちよく寝てるよ」

「そうですか。あとでご焼香しょうこうさせてください」(殺しちゃダメー)


「黒川君、琴川さんおはよう」「サクラ先生おはよう」

「愛田君は今日もお休みなのね」「初七日・・・いや一週間したら戻りますよ」

「あの~撲殺じゃ?」(紫音ちゃんだめー)「撲殺ってまさか!」

「やだな~先生。『僕さ~月が見たいんだよ。婆ちゃん』て圭介が言ってるの!」

「愛田くんも風情ふぜいがあるわね~」

「旅館で祖父母と3人昔話ししてなごんでますよ」

(想像したら泣けてきた・・・)


「おはよう鏡君」「岬さんおはよう」(岬さん余計なこと言わないでね)

「先生、圭介は今日は(ドキドキ)エヘエヘ寝てます」(ホッ)

「まあ、3人仲良くテラスで月見てエヘエヘ楽しい夢みて寝てるのね」

(不気味な想像やめてー)

「風邪ひかないといいですよね」


 圭介の話題を振られると生きた心地がしない鏡太。

(これは大変だぞ。これ以上ややこしくなるとヤバイ)

「あら。皆さんおはよう。朝から楽しそうですわね。あら。圭介君は?」

(僕、魂抜けそうです)

「おはようアリサ。け、圭介は欠席だよ。ハハハ」


 そんな中、岬が話しかけてくる。

「今日はお弁当、鏡君のもあるから一緒に食べよう」

(断ったらエヘエヘにするわよ!)

「鏡君、わたしとのお昼どうするの?(断ってー)」

 先約の紫音は二人きりで食べたいと思っている。

(どちらも青筋出てる!断れないよ~。どうしよ)

「楽しそうですわね。ご一緒しますわ」

(抜けがけは許しませんわ)とアリサまで参加。

(三角が四角になったよ!どうしよどうしよ)鏡太は結論に達した。

「みんなで仲良く食べようか」

『鈍感男!』女子3人の叫び。ビクつく鏡太。

(みんなカガミみてよ~。顔が阿修羅あしゅらだよ!)


 昼休みを知らせるチャイムの音。

「は~。屋上に行きたくないな」

 気が重い鏡太は溜息をつきながら屋上のドアを開ける。(ガチャ)

 屋上に出ると険悪ムードの女子(岬・紫音・アリサ)が待っていた。

「ごめん。待った?」「待ってないですわ」「全然」(みんな顔怖いよ)

「それじゃ、ご飯にしようか」

 全員が輪になり弁当を出す。


「はい!鏡君の分よ♡」

 岬が鏡太に弁当を渡す。

「あ、ありがとう」(問題はこれだ!僕。生きていたいです!)

「開けて開けて自信作よ!」

 岬は自信満々な笑顔で鏡太に弁当を勧める。殺気を感じた鏡太はしぶしぶ弁当箱を開けた。

「(パカっ)こ、これは芸術だ!」

「て食いもんじゃねー!」

 すべてろうで出来ていた。

「食べ物よーレストランのガラス越しにあったもの。私にも出来るかなと思って」

(この人ネジぶっ飛んでるよ。でも食べずにすみそうだ)

「はいはい。これは上手に出来てますよ・泣」

 普通の弁当を作るほうが簡単な気がすると思うほど蝋細工は精密だった。

「嬉しい♡」

 なにを褒められたのか理解出来てない岬は喜んでる。


 紫音が自分の弁当を差し出す。

「鏡君。良かったら食べてください」「ありがとう。この卵焼き美味しいね」

「私が作ったんですよ」(やったー褒められた)

 イヤン♡イヤン♡と体を左右に振っている紫音。


(キー負けられませんわ!私もコレあげますわ)アリサが意気込んでいる。

「これしかありませんけど、どうぞですわ(食べろですわ!)」

 キッとにらむ岬と紫音。スキル嫉妬ジェラシーを覚えた!


「そ、それはもらうわけには・・・」

(これを食べたらゾンビ人生が終わる!)と鏡太は岬をチラ見。

 鏡太が食べたら抹殺しようと待ち構えている岬。

「遠慮しなくていいですわ。ほらほら」(女性に二度も言わせないで!)

 アリサは鏡太の口元へ。無理やり食べさせようとしている。

「食えるかー!遠慮もなにも食いかけのパンじゃないか!」

「今日は学食のつもりでしたので仕方なくパンなのですわ」

(アリサに恥じらいは無いのか!平和にお弁当が食べたいよ~泣)

「鏡君、お母さんの弁当よね。美味しそう」「母さんの料理は美味しいんだよ」

 岬・アリサ・紫音は参考になるかと鏡太の弁当をシゲシゲ見つめる。

「そのアルミホイルで包んだのは?」

 紫音が興味深く中身を聞いてくる。

「油物かな?多分唐揚げだよ。開けてみるね」

(パリパリパリ)ゆっくりと開いてギョッ!とする鏡太。


       「きらきら☆彡ウインナーじゃないかー!」

 紫音・アリサはゲロゲロした。

「(ピピッ)もしもし宅配。特急便で家まで届けたいものが・・・」

 さすがに慣れてきた鏡太。手際が速い!


「鏡君、あれ食べ物じゃないの?」

 岬はあくまで食べ物だと信じこんでいた。

「あんた人間じゃないよ!」「当たり前じゃない!ゾンビなんだから」

「そうでした・・・」(ゾンビなんて大嫌いだー)


 お昼を食べ終えた鏡太・岬・紫音・アリサ。鏡太は皆に相談した。

「みんなに見てもらいたい物があるんだ」

 カバンから黒い本を取り出して皆に見せる。

「古代遺産らしいけど開かないんだよ。ちょうど岬さんいるし開けてみてよ」

 岬に本をわたして期待する鏡太。

「う~ん。変わった所はないわね。それじゃ」

(フン・フィギー・フガーフガー)爆弾岩みたいな顔をする岬。

「岬さん顔が怖いよ!」

「これ無理だわ~びくともしない」

 岬はフルパワーでやったがビクともしないので諦めた。


「岬さんでも無理か~。ここに記号文字が書いてあるんだけど、紫音ちゃんかアリサは何か知ってるかな?」

 アリサは本を見つめて言う。

「授業で見た気もしますけど。知りませんわね」

「私も知りませけど、詳しいことは図書室の本にあるかもしれません」

 紫音の言葉に鏡太もそれしかないかと思っていた。


「鏡君、わたしに聞かないの?」「岬さんは開ける係りで知ってそうには・・・」

「知ってるわよ。てより見ただけ。巨大ハンマーに4文字くらいで小さくあったわ」

「ハンマーに?ありえそうだな」(多分あれも遺産なのだろう)

「古代魔法文明の遺産には全て記号が付いてるみたいなんだ」

 それを聞いたアリサが何かを思い出した。

「どうりで授業で見たはずですわ。先生が参考資料で見せてたもの」

「それだ!てことは、やはり図書室にあるのか」

「鏡君、勉強嫌いなのに熱心ね」

 私に熱心になりなさいよ!と言わんばかりに岬が聞いてくる。

「勉強とこれとは違うよ。何か冒険のにおいするじゃん。男のロマンよ」

「男の子ってそういうの好きよね~」

 岬が言うとアリサと紫音も『ウンウン』と相槌あいずち


 紫音が自分なりに調べた結果を鏡太に教える。

「鏡君のお役に立てればと私も禁止区域など調べましたけど、壁がいつからあるのか、いつ建設されたのか全く不明でした」

「ありがと紫音ちゃん。放課後一緒に本探しお願いね」「はい大丈夫です」

 図書委員の紫音ならと頼み込む鏡太。それがアリサと岬に火をつけた。

(キー二人きりはダメですわ)(この人抜けがけするつもりね)

 ジェラシー爆発で紫音をにらみつけるアリサと岬。

「それじゃ放課後いくからね~」

 こうして女の戦いは終わった。かに見えた。


「偶然のふりして図書室行こう」

 岬とアリサは不敵な笑みを浮かべていた。















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