第13話 ノヴァと遺産とアリサの秘密

【前回のあらすじ】

 商店街の雑貨屋でアリサと出会った鏡太。アリサは欲しいヌイグルミをノヴァに取られてしまう。鏡太が来なければヌイグルミが買えたと思うアリサ。鏡太はアリサの逆恨みを買う。アリサと別れた後、財布を拾う鏡太。落とし主に心当たりがある鏡太は女神様を探す。そしてファミレスにて再会。財布を渡し女神の名前が判明する。その名はセラ。セラの天然ぶりに翻弄される鏡太。そして行く先々で鏡太を見守る怪しい人影。鏡太の波乱な一日はまだ終らない。


 ファミレスでセラと別れ、商店街方面へと歩いて行く鏡太。天然なセラの事を思い出していた。

「セラさんの天然にはまいったよ。会計の時だって・・・」

「あれれ。お財布が~。泥棒さん私のお財布返して欲しいです~」

「なんて言うもんだから店員さんが通報しようとしてるし」

「ま~色々聞けたし、お近づきにはなれたのかも。暇な時はフリマにも顔出してみよう。そういえばノヴァさんが立ち寄って欲しいと言ってたな」

 そんな事を思いながら鏡太はノヴァの店を目指す。


【商店街路地裏・小人の館】

 鏡太はノヴァの店についた。店の中に入ると(カラン・カラン)来客を知らせる鐘の音。

「ノヴァさーん鏡太です。来ましたよ~」

 店の奥から顔を出すノヴァ。

「待ってたのよ」「すみません色々と所用がありまして。何か用ですか?」

「用無しなのよ」(ガクッ)「なんで呼んだの!」

「暇だったのよ。暇だったのよ。お客いないのよ」

「怪しい店だし買いに来る者好きはいないよね(ボソッ)」

「聞こえてるのよ!失礼だわよ」

(ギクッ!そういえばこの人、地獄耳)

「僕がお客になりますよ。まだ店内も見て回ってないし掘り出し物探します」

「掘り出し物あるのよ。これよこれよ。新入荷なのよ」

「角ケースなんていらんわー!」「公園に落ちてたのよ」

「またネコババですか!まあ、捨てる人の気持ちもわかる気がする」

 ノヴァは何やら袋を取り出すと鏡太に見せた。


「じゃ、これどうよ。むしったばかりなのよ」

 テーブルの上に袋を逆さにするとドサッと大量の白い羽。

「イヤーーー!女神様に返してきてーーー!」

(セラさん絶対にハゲてるよ)

「どうしてよ。今晩のオカズのニワトリの羽なのよ」

「僕もう生きた心地がしません!」

「あれ?あれ?」

 急にノヴァが不思議そうに首をかしげる。

「どうしたの?」「今誰か覗いてたのよ。外よ外よ」

 鏡太は扉をあけて店の外にでる。辺りには誰もいない。店に戻る。

「誰もいませんよ」

「う~ん。いた気がするのよ」

「人気が少ない場所だし気のせいでしょう」

 そう言うと店内を探索する鏡太。


 店内の品は無造作むぞうさに置かれている(埋もれている?)物ばかり。陳列棚も多少はある。ダンボール箱がいたるところにあり店と言うより倉庫だ。

「ランプ・ホウキ・壷・古びた書物・剣や盾などいっぱいあるな~」

「どれも古代遺産なのよ」「えーー!そんな大事な物、無造作に置いて」

「使い方が解らないからガラクタなのよ。鉱山からたまに出るのよ」

「あ、あなたガラクタ売ってるの?」「遺産だから貴重なのよ」

「それもそうかハハハ。」「古代魔法文明の物らしいのよ」

「魔法文明か~確か授業で言ってたな。1万年以上前に栄えた文明らしいけど」

「そうなのよ。スキルと違って呪文でなんでもする人種がいたのよ」

「呪文ね~。そう言うとルビーさんが鎌持って呪文みたいのつぶやいてたな」


「今では吸血鬼と有翼にだけ呪文伝わってるのよ。魔女の大鎌も遺産なのよ」

「あの大鎌も遺産なんだ。末裔まつえいに代々受け継がれてきたのかもしれないね」

(有翼に呪文が伝承されてるなら、セラさんも呪文使えるのかな?)


「呪文といえば品物の所々ところどころに記号の様な文字がありますね」

「ドワーフ国の不思議な石碑せきひにも、それと同じ記号あるそうなのよ」

「トロイヤにですか?」

「そうなのよ。ドワーフの学者さんの話なのよ」

(ドワーフは好奇心旺盛で学者も少数いるって書いてあった)

「石碑を少し解読したら『始まりの地』について書いてあるみたいなのよ」

「始まりの地ね~。聞いたことないな~。ドワーフ国がそうなのかな?」

「学者さんの話ではこの土地の禁止区域と関係してるみたいなのよ」

「それは大発見じゃない!」(何かワクワクしてきた)

「けど調べようがないみたいよ」「確かに禁止区域だから無理っぽいよね」

「この世界の各地には古代文明の遺産や文献ぶんけんが残ってるみたいなのよ」

「なるほど文献か~。口伝くでんであったり名残なごりがどこかにあるのかもね」

(お知り合いになった種族に聞いたり、図書室でも調べてみるかな。新しい発見が見つかるかも知れない。禁止区域のことも気になるし興味が出てきた)


「それで何か良い物あったのよ?」「そう言われても使い方がわからないし」

「適当にえらんで買うのよ!」「あなた売れたら何でもいいんでしょ!」


(ガラガラガラガラ)ガラクタの山が崩れ落ちた。

「わ、ごめんなさい!あれ!この本なんだろう?」

 鏡太はガラクタの山にあった真っ黒な本を見つめる。

「それお宝なのよ!」「え!そんなに貴重なの?」「多分なのよ」(ガク)

「そんな本あったの知らないのよ。多分ガラクタなのよ。記号記号」

「あっ、ほんとだ記号あるね。本みたいだし開いてみるか」

(フガー・フガー)全力を出しても本は全く開かない。

「なんだこれ!開かないよ。本なんだよね?不思議だ~」


「私に任せるのよ!(フギー)」

「僕に無理なんだしノヴァさんには無理だよ」

「開いたのよ!」「マジで!?」「ドアよ」(ズデーン)


「今度は確かに誰かいたのよ。ドア少し開いたのよ。でも逃げたのよ」

(ノヴァさんの踏ん張る顔が怖くて客が逃げたんだね・笑)

「う~ん。この本、不思議な魅力はあるな~買おうかな。ノヴァさんいくら?」

「500万よ!」「あんたふっかけすぎ!高校生にそんな大金ありません」

「100万よ」「400万の差はなに?」「う~んオマケよ」

「オマケでなく守銭奴顔しゅせんどがおのオバケだよ!」「失礼だわよ!」

「10万よ」「それでも高いな~遺産だから仕方ない気もするけど」

「100キルよ」「あんた適当すぎ!そんなんでよく商売が成り立つな」

 と言いつつ100キルだす鏡太。ちゃっかり者である。

「毎度~なのよ。儲かったのよ~」


「ところでノヴァさん表にネカマ(猫耳オカマ)見当たりませんけど」

「魔除けは今から出すのよ」「外置いといて大丈夫ですか?」

(あんなの盗むやつはいないとは思うけど)

「大丈夫なのよ。仕掛けがあるのよ。」「そうですか。それなら」

「じゃ出してくるのよ」

 ネカマを持って外へいくノヴァ。どうやら表のドア横に置いて戻ってきた。

「置いてきたのよ。これで悪霊こないのよ」(悪霊もお客なら喜びそう)

「お客が来るように猫がいい気が、あれじゃ客逃げる気も」

「ね・ねね・・猫はいいのよ!」

(ははーん。小さいから苦手なのか)

 鏡太とノヴァが話してる頃、事件はおきていた。


「ドワーフのお店にやっと着きましたわね」

「ネカマちゃんゆずってもらおうと思っても所在がわからない始末。でも黒井君を尾行したかいがありましたわ」


「見張っていますけど、ほんと中に入ってから出てこないわね。黒井君に見られたくないし困りましたわね」


「ハッ!黒井君出てきますわ!隠れないと。また店に戻りましたわね」

「中の様子が気になりますわね、少しドアを開けてと、今ドワーフさんに見られましたわ!隠れないと。けどソロソロ帰るはずよね?」


「あっドワーフさんがネカマちゃん置いて戻りましたわ」

 ダッシュで駆け寄りネカマを抱きかかえる少女。

「ああ~ネカマちゃん♡会いたかったわ。もう離しませんわ~」

 少女はネカマを抱いてフルフルと体を振っている。

『ガタン!』と看板に当たる少女。『誰だ!』と男性の声。


「どうしましょ!どうしましょ!」

 あわてた少女はネカマを持って走り出していた。


(ガタンッ)と表からの物音に気づく鏡太。

「誰だ!ノヴァさん今、外から物音が!ちよっと見てきます」

 鏡太はドアを開け外へ。走りさる見覚えある後ろ姿。

「あ、あれはアリサ?」

「なんでここに?手に何か持ってたな。もしや」

 入り口付近を調べ異変に気づく鏡太。

「無い!ネカマがない。ノヴァさん置いたはずだよな」

 鏡太は店内に戻りノヴァに異変を知らせる。

「ネカマが無いです!盗まれました」「犯人見たのよ?」

(見たけど確証がない。アリサがそんな事すると思いたくない)

「見ましたけどあまりに遠くて・・・」(今は誤魔化そう)

「安心するのよ。そのための仕掛けなのよ。発信機つけてあるのよ」

「発信機!そんな物つけてたんですか!それなら」

「今、調べるのよ。移動中なのよ」

 ノヴァは腕時計ロウの立体映像GPSを見ながら少女の位置を知らせる。


 公園まで逃げてきた少女。

「誰か出てくると思って咄嗟とっさに逃げましたわ!」

 少女は手に持ったネカマを見つめる。

「泥棒と間違われてますわよね・・・こんなつもりではなかったのよ・・・」

 公園のベンチに座る少女は、今にも泣きそうな目をしている。

「どうしよう・・・」


「公園で止まったのよ!追いかけるのよ」「わかりました!急いで行きましょう」

 ノヴァを抱えて走り出す鏡太。(頼む思いすごしであってくれ)


「公園まで来たけど詳しい位置がわからない。気づかれないようにしないと」

 静かに歩きながら公園を探索する二人。


「いた!ベンチに誰かいます。」

 鏡太とノヴァが近づくと気配に気づいた少女は逃げ出した。

「待って!アリサ!」

 自分の名前を呼ばれた少女は逃げるのをやめ立ち止まる。

「君とは思いたくなかった」

「違うのよ!こんなつもりじゃ・・・」

 取り乱して泣いているアリサ。

「どうしてこんな事したの?教えてよアリサ」

「ヌイグルミが欲しかったの・・でも違うのよ・・違うのよ」

 アリサは涙を流し否定するかの様に首を左右に振っている。

「何か理由があるんだよね?怒ったりしないから、最後まで聞いてあげるよ」

「本当?」「ああ。ちゃんと聞く」


【アリサの事情説明】

 この、ヌイグルミが欲しくて雑貨屋に行きましたの。ところがカードが使えなく、どうしようかと考えているところへ貴方がきましたの。

 次にそちらのドワーフさんが来てネカマちゃんを買いましたの。譲ってもらおうと思いましたわ。けど、ドワーフさんの居所がわからないので黒井君の後を追い掛けましたの。

 お店の外で黒井君の帰りを待ってたらネカマちゃんが置いてあって、抱きました所へ『誰だ』で怖くなり咄嗟とっさに逃げてしまいましたの。

 盗むつもり何てなかったの。信じて下さらないわよね・・・。


 アリサの説明で納得が言った鏡太。

「僕はアリサを信じるよ。でもどうして雑貨屋で速く欲しいて言わなかったの?そうしたらこんな事には」

「だって!だって!秘密を黒井君に知られたくなかったわ。私がこんなの集めてたら軽蔑けいべつするわよね!」

「軽蔑するわけがないじゃないか!友達を侮辱ぶじょくなんてしないよ」

 鏡太の優しい言葉に少し落ち着いたアリサ。

「うん、うん、黒井君は侮辱なんてする人じゃないわよね。以前、凄く侮辱されて皆さんそうだと思い込んでたわ。ごめんなさい」

「そんなの気にしないでアリサ。言いたいやつには言わせておけばいいさ」

「うん」「僕の目の前でアリサを侮辱したら友達だろうと何だろうと許さない!」

「うん。ありがとう・・・」


「そうだノヴァさんに譲って貰うつもりなんだよね。僕がプレゼントするよ」

「それは悪いわ」「元は僕にも責任あるからね。ノヴァさんこれいくらですか?」

「タダでいいのよ。お金いらないのよ。必要な人にあげるのよ」

「ノ、ノヴァさん・・・」

 鏡太の目に涙が溢れた。

「アリサ・・・良かったね」

「有難う御座います。ドワーフさん。大切にします」

 アリサはヌイグルミを抱きしめたままノヴァに何度も頭を下げた。

「ノヴァなのよ。あなたもお店たまに来るのよ。仲良くなのよ」

「わかりましたわ。また寄らせていただきますわ。黒井君もありがとう」

「アリサ遅いから途中まで送っていくよ」

 そう言うと鏡太はアリサを連れ公園を跡にした。


 何かを忘れているが、こうして鏡太の波乱な一日は終わる。


 置き去りにされたノヴァ。

「あっ!ガラクタと勘違いしてたのよ。ぬいぐるみ、お金だしてたのよ」

 損をした事に気づいたノヴァの悲痛な叫びが公園に響く。


【とあるお嬢風生徒の日記】

 今日は散々な一日でしたわ。それにしてもこのネカマちゃん可愛い。

 またコレクションが増えましたわ。ノヴァさんとても良い方でしたわ。

 でも秘密を黒井君に知られてしまいましたわね。

 でも思ったより優しい方でしたわ。

 最後のシーンを思い出すと胸が熱くなりますわ。これは恋なのかしら?

 すごくあなたが気になりますわ。





















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