第2章
第6話
「――……と、いうことがあったんですよ」
「へー、なんか寝不足っぽいと思ったら昨日の夜そんなことがあったなんてねー。私なんかその時間、酒瓶抱えて寝てたよ。朝になって風呂に入ってないことに気が付いてもうびっくり、贅沢に朝風呂しちゃったわよ」
「あー、それ俺もッス」
朝、生徒の朝食の時間が過ぎた食堂で、ソラは昨夜のことをソルミレンに話しておいた。ナレッドとの因縁を作った張本人には一応ことの顛末を話しておかなければと思ったのだ。もちろん、レイナやセレンのことは伏せてはいるが……。
「でも、あんたよくナレッドを呼び出せたわね、あいつゲルニアからの生徒指導すら呼ばれても行かないのに」
「あはは……」
「まあ、因縁の相手はどうしても倒したかったのね」
ソルミレンは一人で納得して、朝食の焼き魚にかぶりつく。ちなみに三匹目、ソラの分は既にとられている。
「これに懲りて、あいつも妹にちょっかい出さなくなればいいんだけどねー」
「それよりも、今日の予定はなんです?」
急な話題転換かとおもったが、これ以上突っ込まれてレイナたちのことがバレるとも限らないのだ。
「あー、うーんと、たーしーかー…………銃使い科に弾薬の補充と、戦士科になんかと……」
「なんかって何ですか、アバウトですね」
「まあ、一度部屋に戻ってスケジュール帳を確認するから。問題ないでしょう」
「そんなんでよく事務長勤まってますね」
「まあ? ぶっちゃけ事務員なんて雑用係だし、学園じゃ体裁こそ先生の立場だけど、ろくに魔法が使える奴なんてほとんどいないし、ガチバトルで一端の生徒よりも弱いわよ。ああ、別に今は関係なかったわねこれ」
(ほとんど実権はないようなものか、その中でも俺は臨時って付くし、この学校で一番権限無いんだろうな)
「まあ、アレよ。わたしたちはこの学園における、便利屋さん的なポジションよ」
「今ふと思ったんですけど、事務員って何人くらいいるんです?」
「私とあんたも合わせて六人ね」
「少な!」
「そんなもんよ、学園の慈善事業みたいな制度だもんコレ。多く事務員を増やすことはないわよ」
「こんな広い学校なのにそんな人数で大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫、前話したかもしれないけどさ、忙しい時期は今だけだから。そしてどうしても手が回らない時は、暇な先生が手伝ってくれるから」
それでは事務員の意味がないのでは? と思ったが、滅多なことは口にしないソラであった。
「そういえば、さっき言い損ねましたが……」
「ん? なになに」
「銃使い科ってなんですか?」
「あー、そういえばあんたの生まれはシノンだったわね、あそこ田舎だからなー」
「どうして俺のふるさとが中傷されないといけないんですか」
「銃ってゆうのはわかるわよね?」
「昔話の、勇者の仲間が使っていましたから一応は」
「あれほど高性能じゃないけど、銃はちゃんとあるのよ。非魔力保持者でも強力な力を手に入れられるようにってのが発想元ね。勇者の仲間が銃を伝えたって噂があるけど、流石に眉唾モノよね。まあそれで、うちの学園でも銃の使い方を教えようと開設されたのが二年前の出来事。ちょうど私とルナが学園でお世話になり始めた時期と同じね」
一気にしゃべって疲れたのか、朝食についてきたジュースでのどを潤す。
「まあでも、あんたみたいに銃のことを知らない人が多いのと、火薬に魔力が混ざれば爆発を起こす理由が解明されてないのが原因で、銃使い科に入学する生徒はほとんどいないのが現状ね」
「ちなみに、銃使い科って合計で何人います?」
「二十人いなかったわね。他の科との合同で爆弾の使い方を学ぶ授業があるんだけど、それがなくなれば、銃使い科は存続の危機ね。火薬もそれなりに値が張る物だし、正直学園のお荷物みたいに扱われているわ」
「なんだか、ずいぶんと冷遇されていますね」
「同情しちゃった? でも同情は銃使い科の子に失礼よ、あの子たちは好きで銃使い科に入ったんだから」
「そうですね、じゃあそろそろ仕事の時間にしましょう」
「あと一匹!」
「……………………」
この猫先輩はどれだけ食い意地が張っているのだろうかと、ソラは内心で溜息を吐いた。
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