第3話
夜、目が覚めた。
寝つきが悪かったのではなく、物音で目が覚めた。
(誰かが、部屋にいる……?)
寝ぼけまなこで状況把握に努める。
「あー、今日も疲れた…………今日入学式じゃん、なんで授業あるわけ? ったく、やってらんねー」
(愚痴ってるし)
誰かは、けだるそうに言った。
直後にソラは何かに押しつぶされた。
「ごフッ」
「痛ッ?」
勝手に部屋に入ってきた誰かが、電気もつけずにベッドに飛び込んだものだから、ソラは上から飛び込んできた人物に思いっきりぶつかった。それはもう盛大に。
「ちょっ、誰よ! 変態!?」
「こっちのセリフだ!! イキナリ襲撃してきやがって!! 殺す気か!?」
眠気なんか吹っ飛んだ。
「な! ドコ触ってるのよ!!」
「イッタ! テメェおもいっきり殴りやがったな!!」
「ランプはどこよ!」
「知るかよバカ!」
「ああ、もう! 『シャインライト』!」
まばゆい光が輝いた。
部屋の上空でまばゆい光を発する光の玉が浮かんでいた。
シャインライトのおかげで、侵入していた誰かさんの顔が浮かび上がってくる。
「アンタ、誰よ」
「……こっちのセリフだよ」
ツンとした釣り目に長髪の藍髪。
「新しい教員? いいえ、そんな訳ないわね。アンタ、何年生?」
釣り目も手伝って攻撃的な表情で詰問する。
「教員でも生徒でもないよ」
「なに、不審者?」
「キミの不審度に比べれば、俺の不審度なんて全然だよ。対する君は?」
「ああ? まさかアタシを知らないの? こりゃホントに不審者だな」
「答えろよ」
「レイナ。ヴィム=ファイブ・レイナ。学園の超優等生」
「その優等生がどうして俺の部屋にいるのか、まったくもって理解できない」
「天才の考えはいつも周りから理解されないのよ」
レイナと名乗る不審者はとぼけてみせる。
「何事も話せば分かるって、ほら、話してみろよ」
「それよりも、アタシはアンタのことが気になるわ」
「俺はしがない臨時事務員さ。今日決まった」
「臨時事務員? ああ、どうりでアタシの耳に入ってきてないわけだ」
レイナはひとり、納得したようだ。
「いい、このことは他の誰にも言っちゃダメだからな、わかったか?」
「悪い、やっぱ天才の言ってることは凡人の俺には理解不能だ。説明不足だよ」
素直に従う気はない。どうして言ってはいけないのか、最低限それを聞くまではソラは脅しをかけるつもりだ。
「…………わかった、言えってことね」
「さすが天才、物分かりが早くて助かる」
「ここに来た理由は、ここが秘密基地だからよ」
「秘密基地?」
「そうよ。この部屋、いろいろ改造してたりするの」
「人の部屋になんてことを」
「まあ、今日はもう帰るしかないようだけど」
「帰る、そうだよ、お前どこから入ってきた? 仮にもここ職員塔だろ?」
警備レベルは相当高いはず、それをどうかいくぐってここまで来たのか。
「凡人は物知らないだねー」
「ナニそれ」
「物知りの逆」
「ああ、なるほど」
「で、さっきの質問の答えは、空間移動の魔法よ」
「空間移動!? そんな上級魔法が使えるのか!?」
「そらもう、余裕よ」
「そりゃあ、すごい」
ソラは純粋にそう思った。
「当然、なんてったってこのアタシだからな」
「それで、」
ソラは話を元に戻す。
「秘密基地って言ったけど、なんでまたこんなところに? バレたら問題にならないのかよ?」
「愚問だな、バレたらもちろん怒られるだろうな」
「だったら――」
「まあ待て話を最後までよく聞けと地元の学校の成績表には書かれてなかったか? お前の言いたいことはわかるが、だからこそなんだよ」
「だからこそ?」
「こんなところに生徒が部屋を改造していろいろやっている訳がない、
「誰しもそんなことは思うはずがないから。――でも、思考外の行動か、意識の盲点を利用してこの部屋のことを守っていたのか」
「そゆこと、だからお前にこの場所をバラされるとかなり困るんだよ、そうゆうわけだからさ、このことは誰にも言うなよ?」
レイナはお茶目に笑った。
(これはチャンスなんじゃないか? 今、俺はこのレイナという生徒の弱みを握っている、向こうはこのことをバラされたくないから、ある程度の条件は飲んでくれるだろう…………よし)
ソラは早く力をつけたい、だからそのためには手段を選んでいる場合じゃない。ウソかホントか、レイナは自分のことを優等生と言った。
「取引だ」
「あっちゃー、やっぱりか」
レイナはこの言葉を予想していたのか、口調は思いのほか穏やかだ。
「で、アンタはこの天才レイナ様に何を望む?」
ソラは、あるお願いを口にした。
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