第4話 [コントロールルーム]

ハビタットは三交代制で運営されていた。

20時のオラクルの交代時刻の5分前に俊一はコントロールルームに

到着した。今から27時までの7時間が俊一の持ち時間だ。13時から

今までを担当していたもうひとりのオラクル田辺雄二が、この半日

の出来事を申し送った。

「またヘッドシーフが出るようになった。中央軍のアバタたちがい

きりたって捜査しているよ。」

「こまったちゃんアバタが多くていやになるね。また僕が魔法でこ

らしめてやるよ。」俊一は答えた。

「いや、今度のヘッドシーフは今までのと少し感じが違う。」

田辺は少し不安そうな顔をした。

「なんていったらいいか・・・すごく凶暴な感じがする。いたず

らではすませられない、なにか嫌な感じがする。あなどらないのが

いいよ。」そういって田辺は去っていった。


俊一はコントロールルームの中にはいった。

そこはだだっ広い体育館のような場所で、フロアの入口手前に

コントロールデスクが一個ぽつんと置かれているほかは、何の

インテリアも無い。特徴的なのは、壁は四方とも窓がなく、全面

にコンピューターのディスプレイがびっしりと敷き詰められ

ていることだ。そればかりではない。天井と床もやはり同じ

ようにディスプレイで埋め尽くされている。ひとつひとつの

ディスプレイにはハビタットのリージョンが映し出されてい

る。ディスプレイの集合はそれ全体でハビタットのマップと

なっているのだった。従って、数えればディスプレイの数は

300を越えるだろう。


入口の向こう正面の壁が、泉のあるダウンタウンのマップに

なっている。向かって左の壁が第三、第四居住区のマップ。むかっ

て右の壁が第五、第六居住区のマップ。そして床面が第一、第二居住

区になっており、天井は公園になっていた。また俊一が入ってきた

入口のドアのあるこちら側の壁面が大平原と迷いの森になってい

た。


手前のコントロールデスクにはキーボードと一台のディスプレイ

がセットされており、これがカレント・リージョンつまりオラクル

の存在するリージョンとなっている。オラクルとしての俊一は、

このディスプレイを通じて自分の分身であるアバタを操作する。

しかし、システムの管理者としての俊一はこの部屋の上下左右天地

を見回すことで、いながらにしてハビタットの全てのリージョンの

出来事を知ることが出来るのだった。

「ヘッドシーフはこっそりやれば判らないと思っているだろうが、

オラクルは全てお見通しなんだ。馬鹿な奴・・・・」

つぶやきながら俊一は位置についた。

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