「医学の歴史」より抜粋
今から百年前、医学は暗黒期だったと云える。微生物の概念が無かった当時、衛生面は特に酷いものだった。街は糞尿に塗れ、病院でさえ傷口に虫が集る有り様だったという。魔法技術も今ほど進んでいなく、特に治療魔法が扱える者は珍しかったため、庶民は神官の祈祷に頼る他なかった。
戦場では綺麗な水や薬は貴重だった。そのため傷口を尿で洗い乾かした馬糞で止血した。また、死体はそのまま放置される事が多かったため、破傷風や疫病で死ぬ者が絶えなかったという。
細菌の存在を訴え顕微鏡を発明し微生物を世に知らしめたのが、ジオーニック商会の創設者、セラム・ジオーネである。彼女は早くから衛生観念の重要さを提唱し、消毒や清掃を奨励した。また、火葬の慣習を広め、死体は特に丁重に供養した。今では土葬の慣習が残っているのは一部地域だけである。
ジオーニック商会は様々な分野で活動しているが、もっとも力を入れているのが医療関係である。これはジオーニック商会の成り立ちが消毒薬などの薬や医療器具の開発から始まっているためであるらしい。セラム・ジオーネも「最も尊い事業」として大切にした。
医学の歴史において彼女の功績は多大であり、「医の女神」として聖女アウローラと並び称されている。
マッティア・スカリ著「医学の歴史」より
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