「英雄の軌跡」より抜粋その2

 歴史書によると彼女の初陣は貴族達の反乱の鎮圧時とされている。この時既に軍の総大将として采配を振るっている。歴史上間違いなく最年少、異例の抜擢である。

 だがここに一つ疑問が生まれる。例え前将軍の娘であっても彼女は当時十二歳である。戦時特別法案で志願兵に年齢制限は無いとされているものの、何の実績も無い少女にいきなり総大将を任せられるものだろうか。

 実は既に実戦経験があり、何らかの手柄を立てているのではないかと考えるのが自然であろう。となると何故どの歴史書にもそのような記述がないのか。歴史の闇に葬られたその謎こそ彼女の神秘性を膨らまし、数多くの学者の心を掴んで離さないのだ。

 前将軍が死んでから彼女が総大将を任されるまでの間何があったのか。歴史背景や事件を交えてこれから説明していこうと思う。彼女が何をやり、どのような経緯でその立場を手に入れたのか、その謎を紐解いていこう。

   「ルドヴィコ・サリ」著「英雄の軌跡」より

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