好きな?好きな。好きな!

あの地獄のような初部活から1日経ち、駄べり部の部室に向かっている。

でもなんだかんだいって優香先輩はいい人だし、桜部長もボンテージさえ着なければ可愛い女の子、奈々先輩もしばかれなければ普通のボーイッシュ系女の子だ。

そう。しかも!三人とも顔面偏差値がありえない位高い!

そこにそこまでイケメンでは無い俺!

……あれだよ。引き立て役みたいなもんだよ。

まあ、いいんだ。あそこで楽しく駄弁ることが出来れば。そんなことを考えながらてくてく歩いているといつの間にか部室の前に来ていた。

昨日のような不穏な音は聞こえない。

ここで一安心。てか部室に入る前に安心しないといけない部活ってなんなの?


まあ、いいんだ。昨日のようなことさえおきなければ。ガラガラと扉を開けるとそこには―。


まるで映画版バイオ○ザード1のビームが出てくる部屋みたいなのが広がっていた。


あれ?ここ駄べり部だよね?うん。駄べり部って書いてある。書いてあるんだけど…。中はバイオハ○ードのような部屋だぜ?なんか違和感がハンパ無い。

立ち尽くしているといきなり後ろから何者かに押された!

「え⁉︎ちょ、待って⁉︎」

俺の懇願もむなしくドアはすぐさま閉じられた!これ、あれだよな?ビームに当たると人体が切断されるっていう…。

なんて思ってるとビームが俺に迫ってきた!

いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや⁉︎怖い怖い怖い怖い怖い怖い!一回でも失敗したら死ぬんでしょ⁉︎やばくねぇ⁉︎

最初はしゃがんで回避!

あっぶねぇ⁉︎髪の毛何本か切れたぞ⁉︎マジモンじゃねぇかよ⁉︎いっきに現実味が増す!

へへへ、こいよ!これでも中学の頃は迫り来るいじめっこから逃げるために体力だけは自信があったんだ!さあ次はなんだ?足元か⁉︎それとも縦方向か⁉︎それとm

その直後網目状で迫り来るビーム!

うおおおおおおおおおおおおお⁉︎おかしいだろおかしいだろおかしいだろ⁉︎だってあと何回かウォーミングアップ的なのが来るかと思ったらこれ⁉︎もうだめだよ!俺の人生短すぎだよ!

もうちょっと楽しい人生送りたかったよ!

もうビビりまくりながらドアの方まで駆けて、こじ開けようとガンガン蹴りまくる。

しかしビクともしない!

ドアにぴったり張り付き、泣きながら鼻水を垂らし、覚悟を決めた瞬間!

目の前でビームが止まった。そしてふっときえるビーム。

た、助かった…?

へなへなと腰が抜けて座り込む。すると奥の扉から奈々先輩が大笑いしながら出てきた。

「あーっはっはっはっは!なにあの情けない顔!あーっはっはっはっはっは、うえっ、ゲホッゴホッ、ううえええぇぇぇ!」

先輩が笑いすぎてむせてる。なんかもう、ツッコミすら出てこない。

そして奈々先輩をどかすようにして桜部長が俺の方に駆け寄ってきた。

「ねぇ、大丈夫?和弥くん?ねぇ、ねぇったらーー!……んみゅっ⁉︎」

さっきの体験が恐ろしすぎてまともな思考回路ではなかった俺は桜部長を抱きしめていた。

ああ、落ち着く……桜部長を抱きしめてるとなんか生きてる実感が湧いてくる。

桜部長がなんか言ってるけど無視。

なんとか立てる程度に回復した俺は桜部長を解放する。

「けほっ、もう!なんで私を抱きしめるのよぅ!うぅ……」

「あ、すいません、桜部長。もう、しませんよ」

「ならいいけどさー!」

幾分か落ち着きを取り戻すと未だに笑い転げている奈々先輩にふつふつと怒りが湧いてきた。

ツカツカと歩み寄る俺を見ると奈々先輩は更に笑い出した。なんで?

「奈々先輩!やめてくださいよ!死ぬとこでしたよ⁉︎」

「い、いや。やったら……ふふふっ!お、おもしろ……ぶふっ!いかなーって………あっはっはっは!」

いや、笑ってんじゃねぇよ⁉︎

「なんでこんなことしたんですか⁉︎」

「楽しそうだったからっ」

笑顔でいう奈々先輩になんも言えなくなる。

確かに俺は死ぬような思いをしたけど、今思えば楽しかったかもしれない。……楽しかった?う、うん!そうだよ、奈々先輩の笑顔が見れただけでも良しとしようじゃないか。というより良しとしないと俺の精神構造上良くないので良しとする!







奈々先輩と俺でバイ○ハザードのセットを取り壊し、元の部室に戻した。

「で、桜部長?今日優香先輩は?」

「ん?日直の仕事で遅くなるってさ。」

まあ、でもバイ○ハザードの下りで結構時間が経ったからそろそろ来るかも知れない。

「そういや、駄べり部って誰が作ったんです?」

俺は気になっていた事を聞いてみた。

「ん?わたしだよー?」

へぇ、桜部長がつくったの?

「私、楽しいのが好きだからさ。友達だった優香ちゃんも誘って、駄べり部を作ったの。」

確かになー。放課後に駄弁るのが楽しいっていう考えは俺と一緒かも。リア充っぽいしな。

ん?リア充?

「桜部長は彼氏とかいるんスか?」

ふと疑問に思った事を聞いてみる。

「う、うぇぇ⁉︎そ、そんなの、い、いるに決まってるじゃないにょっ!も、もう高しゃんだよっ⁉︎」

…………いないんですね。

「なんで⁉︎ねぇなんでそんなあったかい目で私を見るの⁉︎ねぇ!なんでぇ⁉︎」

「奈々先輩はなんでこの部活に入ったんスか?」

「なんで無視するの⁉︎ねぇーぇ!和弥くーん!」

桜部長が誘ったなら優香先輩の入った理由は分かる。でもなんで奈々先輩は入ったんだろう?

「ん?私か?私が入った理由かーっ…。」

ちょっと考え込む仕草をする奈々先輩。忘れるほど軽い理由だったのだろうか?まぁ、思いつきでバ○オハザードのセットを作っちゃうからなぁ。そういう性格なのかも知れない。

「入らないと……親を殺すって……部長が………っ、くっ!」

部長⁉︎

「私なにもしてないよ!」

ボンテージの時か⁉︎あの時の桜部長ならやりかねない!

「ボ、ボンテージの時は…性格悪くなっちゃうけど、そんなことはしないもん!本人のみに苦痛をあたえたいんだもん!」

「可愛い顔してなに言ってんすかあんたは⁉︎」

「か、可愛いって……うぅぅぅ」

なんかわからんが顔が真っ赤になって座り込む桜部長。

「まぁ、冗談だけどさ♪」

「でしょうねっ!」

もう奈々先輩のこれには慣れた。

「まぁ、楽しそうだった!ってのが一番かな。私、楽しいことが大好きだからさ!」

うーん、基本この部活って楽しいのが好きな人が集まるのか?

俺のリア充したいっていう考えもやっぱりその根底にあるのは高校生活を楽しみたいっていう思いだろう。

やっぱり入ってよかったかもと思う。

楽しみたいと思う人間が集まって楽しくないわけがない。

そんなことを思っていると優香先輩が入ってきた。

「ごめんね。今、日直の仕事が終わったわ。ってなによこの大量の木材⁉︎」

さっき片付けた○イオハザードのセットの残骸だ。

「気にすることないですよ、その大量の木材は。ただ俺が殺されかけただけだけですから。」

「いや、人を殺せるような物を学校に持ち込むのはダメだし、殺されかけておいてよくあなたは平然としていられるわね⁉︎」

「過ぎたことですよ?」

まあ、あの笑顔が見れたから良しとするんだ!俺!頑張れ俺のメンタル!

「本人が気にしてないのならいいのだけれど…」

早速四人集まった。なんか俺の場違い感が半端ない。

美少女三人+そこまでイケメンじゃない俺。

どうしよう。帰ろうか。

そんな後ろ向きなことを思っていると桜部長が手を机につき勢いよく立ち上がり、話し始めた。

「部員勧誘期間も終わって、今年の新部員は

和弥君のみ!これからこの四人で駄弁っていきましょう!」

「「「はい!」」」

おお、なんかかっこいいぞ。桜部長が輝いて見える。そして勢いよく立ったからなのか椅子が後ろに傾く。そのまま倒れた椅子は後ろにあったロッカーにぶつかる。ロッカーの上に置いてあったサッカーボールがコロコロと転がる。そしてロッカーの横にあるバケツに入り、バケツが倒れてサッカーボールが部室の奥に転がっていく。そしてなぜかバイオハザ○ドの残骸に転がっていき、ちょうどいい感じにシーソーみたいに積んであった木材の上に転がり、これまたなぜか重そうな角材がサッカーボールの逆の方の板に落ちてきた!サッカーボールはテコの原理で高く飛び上がる。そのまま桜部長の頭の上に落ちてきた!

テンテンテンテン……とサッカーボールがバウンドする音が寂しくこだまする。

吹き出すのを堪える俺たち。ヤバい……これはっ…………抑えきれないっ……!

「「「ぶふっっ……」」」

ほぼ三人同時に吹き出す。

「三人全員強制退部!出て行ってーっ!」

「「「わかりました」」」

さらに桜部長をいじるため三人とも荷物をまとめて出て行ってみる。

「え?え?ちょっと待って、冗談だよ?ほら、勢いで言っちゃっただけなの!待ってよぅ!うぅぅ……ふぇぇぇぇぇん!」

泣き出した⁉︎ヤバい!この先輩メンタル弱すぎる!豆腐メンタルだ!

あわてて優香先輩がなだめに入る。さすがにいじりすぎたようだ。

三人とも荷物を置き帰る意思がないことを伝える。しかしまだ泣きやまない!


―――十分後―――



俺が今度何かおごるという誓約のもと会長は俺たちの事を許してくれた。なんで俺だけがおごることになったんだろう。普通連帯責任じゃね?てか出会って二日の先輩におごるとか聞いた事ねえよ。まあ、おごると言ってもクレープとか、「焼き肉!」とか…って俺の思考に被せないでくれます!?

「高一のお財布に、なんてもん期待してんスか!」

「ほら、和弥くんなら沢山もってそうだし?」

まあ、確かに友達も趣味もなかった俺は親から多めにもらうお小遣いの大半を貯金している。

口座には軽く7桁くらいの額は余裕で入っている。

なんでだろう、お金が沢山あるのはいいことなのに、なにこの虚無感…。

「あー!もうわかりましたよ!こんど桜部長「とみんな」に焼肉をおごり…だから話の途中で入ってくるのやめてもらえます⁉︎」

みんなとか軽く見積もっても一万は超えちゃいそうなんですけど⁉︎

「あ、今日は好きな食べ物について駄弁ろう!」

明らかに話をそらしにかかる桜部長。……もういいよ。おごりますよ。おごればいいんでしょ‼︎‼︎ヤケクソだ!

「私はそうねぇ…あれが好きだよ!ねるねる○るね!」

まじで⁉︎高3でねる○るねるね好きな人とか初めて見たんスけど⁉︎

「あの独特な色合い…そして混ぜるときの高揚感!そして飴をつけて食べたときの幸福感!あれはノーベル賞ものだよぅ………」

ほわほわした表情で語りだす桜部長。…なんだろう、混ぜるときの高揚感って。俺には一生理解できないものなのかもしれない。

そのまま桜部長はねるねるね○ねについて熱心に語りだすので無視。

奈々先輩に話をふって見る。

「奈々先輩は何が好きなんです?」

「肉」

回答早いな!しかも肉って。

「あ、人のな。」

んん⁉︎なんか聞き捨てならない単語が聞こえたきがする!

「ほら、あたしグールだからさ。東京らへんの。」

「まって!そのネタは色々危ない気がします!」

「あたしさ、ある男の子が好きでさ。その人とデートしたんだけど、襲われかけたのよ。その時鉄骨が落ちてきてさ、ギリギリ生き延びてね?で、東京らへんのグールさんの肉体を移植されてなんとか死な」

「アウトォーーーーーー!ダメですよ!それ以上は集○社から怒られます!」

流石に反省したのか真面目に話し出す。

「まあ、人の肉とかはさておき。肉が好きってのは本当だよ。鳥も食うし、豚も牛も食う。肉を食べると元気が湧いてくるんだよなぁ!」

ふーん。俺はどっちかというと肉より魚派だ。でも確かにその気持ちはわからなくはない。

「嫌いな物は?」

気になって聞いてみる。

「ないかな。野菜も食べようとすればもりもり食べるし。せめていうならゲテモノ系?」

「いやそれは好きな人の方が珍しいでしょ。」

ほら、ジャングルの奥地にすんでる人たちが虫とか食べるじゃん?よくわかんないけど。イナゴの佃煮とか。あれは無理だ、見た目的に。

「とりあえずあたしは普通のものならなんでも食う!」

へぇ〜。でも肉が好きってことはめっちゃ食ってるんだよな。それであの体型って…。すごいな、羨ましい。決して俺は太っているわけじゃないがデブらないようには気をつけている。うん、あんな風に気にせずご飯を食べられるのは普通に羨ましい。

じゃ、次は優香先輩。

「優香先輩は何が好きです?」

「そうね、人のお肉とか?」

「だからいつまで引っ張るんですかそのネタは⁉︎」

「あら?私は東京らへんのグールさんでは無くてウォーキングなデッドさんたちよ?」

「もっと危ない!最悪潰されますよ⁉︎この高校!」

「だって、逃げる人をみんなで捕まえてね?やめてやめてと泣きわめくひとのお腹を引き裂いて××××を×××××して、さらにみんなで×××××の××××××を×××××して……」

「アウトアウトアウトォーーーーーー!」

だめだよ!これは放送禁止だよ!さっきまで幸せそうにねる○るねるねの話をしていた桜部長が顔を真っ青にして座り込んだよ!ドSの桜部長を青ざめさせるとかあんた何者だよ⁉︎

「まあ、事実はさておき。」

嘘じゃなかった⁉︎

「好きなものは○ッポね。あの最後までチョコたっぷりなのがなんとも言えないわ。そして勉強してても手が汚れないのが何よりの利点ね。」

ちなみにおれはポッ○ー派だ。

ちょっとむっと来る。

「いや、○ッキー一択でしょう。あの独特のサクサク感、それでいて素朴なプリッ○の味を覆うようなチョコの感じ。ト○ポなんかより数倍うまいですよ。」

「ふ、それはまだ和弥君がまだまだ若い証拠よ。最後までチョコの味を堪能できるトッ○のほうが数倍美味しいわよ。」

「それは違うよ!」

そして優香先輩と俺の○ッポVSポッ○ー戦争は数百年にも及んだ!(嘘)


………………………………………………………



「まぁ、今日はここまでにしときましょう!」

「そうね、それ以上は言っても無駄だわ。」

…なんか優香先輩との間に溝が生まれた気がする。そんなことないよね☆

「そういう和弥君は何が好きなのよ?」

優香先輩が訪ねてくる。

「まって!私があてて見せるわ!」

いきなり桜部長が割り込んでくる。

うーーんと考え出す桜部長。まぁ、少しくらい待ってもいいだろう。

…数分後。

「いや、和弥くんが本当は女子であることを加算すると、A案は覆されることに………でもここで相対性理論を用いると、G案もそこそこ有力な案になって………」

…俺は女子じゃないし、後輩の好物を当てるのになんで相対性理論が出でくるのか。桜部長の頭の中を覗いてみたい。

…数十分後。

「#include<stdio.h>

#include<stdlib.h>

#include<time.h>

int user_number(void);

void print_result(int comp_num,int

user_num);

void explanation(void);


void main()

{

int………」


なんかもう桜部長が俺たちには理解できない言語を話し始めた。

この人俺の好物当てようとしてるんだよね?宇宙と対話とかしてないよね?

「これをコンパイルして…」

…なんだよコンパイルって。なんかの必殺技みたいだな。

「これにより出された答えは!」

やっとか。あれから何十分経ったんだろう。

「シュールスト○ミング!」

「違いますよ⁉︎」

なんでよりによって世界一臭い食べ物が出でくる⁉︎

「だってさっきゲテモノがどうとかって…」

なんでそこだけ覚えてるの⁉︎

「まって、数値を変えてもう一回実行してみるから!」

まあ、待ってあげよう。

「よし!今度こそ!和弥君が好きなのは!

くさや!」

「だからなんで総じて常人が苦手そうなものを!」

「もうそのコンパイルってのはいいですから!普通にラーメンが好きですよ!」

「え、普通。」

「つまんな。」

「だっさ。」

なんで⁉︎なんで好物を告白しただけでそんな罵詈雑言をあびせられるの!?

心にダイレクトアタックだよ!むしろオーバーキルだよ!

そしてださいは関係ないと思う!

「だってあんなに脳内プログラミング頑張ったのに!ただのラーメンって!」

しらねぇよ!桜部長が勝手に難しく考えただけでしょ⁉︎

「あたし…お前に失望したよ…」

だからなんでそんなに期待されてたの⁉︎

「人肉どころかモツが好きなのかと…思ってたのにな…」

悲しそうな目でこちらを見る奈々先輩。

いやだから東京らへんのグールさんとはなんら関係ねぇんだってよ!

「残念よ…和弥君。まさかモツ派だったなんて…。胸鎖乳突筋派の私とは相入れそうにないわね…」

ウォーキングなデッドさんでもないし、優香先輩はいろいろとマニアックすぎませんかね⁉︎

「あのコリコリした食感、噛めば噛むほど出てくる旨味、独特の臭みといい、あれは一度は食べてみるべきね。」

…やだ、なんかすごい美味しそうな顔をしてる。

食ったことあんの?な、わけないよね。うん。

「いいじゃないですか!ラーメン好きでも!」

「「「ハイ、ソウデスネ」」」

「おおう!同意されてんのに納得されてねぇ!」

なんなんだ…このやるせない気持ちは!

「まあ、和弥君がラーメンが好きっていうわりかしどうでもいいことを打ち明けたところで!今日は解散!」

うん…なんだろう。目から溢れ出てきてる汗に近い液体は⁉︎

「ほら、泣いてねぇで帰るぞ?」

自分から攻撃しておいて悪びれもせず帰ろうと誘う奈々先輩はもうぶっ飛んでる人だな。

もういいや、涙も枯れ果てたし帰ろう。



…てか今日は俺がやたらと攻撃された日じゃね?

そんなことに気づいた俺だった。


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