駄べり部は今日も駄べる。

口だけの男

偶然って怖いのね

俺の名前は高校生探偵、工藤○一。

ではなく、斎藤和弥。普通の新高校一年生だ。

俺の通うことになる、ここ会人かいじん高校には沢山の部活がある。

どれくらいかというと星の数くらいある。

ポピュラーなもので言えばサッカー部とか野球部とか美術部とか。

おかしいもので言えばポテチ部とかお腹部とかアームストロング砲部とか。

圧倒的におかしい部活が大半を占めるが。

だれも入ってない部活とかもある。

なぜそんなに沢山あるかというと、この高校に入ると必ず部活に入らなくてはいけないのだ。

しかも部活を作るのは誰でも一人で作ることができる。

それはもう、自分の趣味に走る奴が大勢いるわけで。

いつの間にか数え切れないほど部活ができていた。


おかしいだろ?


そんな沢山ある部活のなか、俺の入ろうと思っている駄べり部も大分おかしい部活の部類に入る。

なぜそんな部活に入ろうかと思ったのかは…


リア充がしたかったからだ。


これだけだ。なんか文句あるか?

中学の頃の俺はもうそりゃあ、ひどかった。

三年間でトイレ以外で飯を食ったことがない。

恐ろしいだろ?修学旅行では必ず五人一組で行動しないといけないのに四人組+一人ってかんじだった。

………待って。涙が出てきた。


まあ、そんなこんなで灰色の青春しか送れなかった俺はリア充というものに対して物凄く憧れを持っている。

ほら?放課後教室とかにたむろって話すのってすげえリア充感あるじゃん?え?ない?あるんだって。俺のなかでは。


だから入学初日、教師から渡された部活の名前が山のように書いてあるプリントをもらった時リア充っぽい部活がないかと3日くらい探してその名前をみつけたのだ。

駄べり部の名前を。

キタァアアア!と思ったね。その瞬間稲妻が走ったよ、俺の体に。

そして今からその駄べり部に入部届けを出しに行くところだ。

プリントの中には部員が三人いると書いてあった。

やはり三人とも先輩だ。中学三年間、人とあまり話さなかった俺はSi○iと春休みに会話の練習をした。

よし。覚悟は出来た。扉の取っ手に手をかける。

引き戸をガラガラ!と思い切り引き!

すいませんと!言おうと!しt


「ほらほら!もっと卑しい声で鳴きな!この糞豚があああ!」

バチィィィィン!

「はあはあ、ぶひいいいい!」


バタン!

………………………………?

あれ?おかしいなぁ?扉にはきちんと駄べり部って書いてあるのになあ。

なかにはボンテージをきた小さな女の子と縄で変にしばられてる女の子がいたような気が。


…あれだよ、三年間あまり人と関わらなかったから幻覚でもみたのかもしれない。

深呼吸。深呼吸。

すぅ――、はぁ―――。

よし。もう大丈夫。もう一回扉を開ける!


ガラガラ!


「さっきから扉の前でウルセェぞ?豚?」

え?


その瞬間俺はハンカチをあてられた。

あれぇ…おかしい…眠くなって………きた……






はっ⁉︎俺は、何を?って痛い⁉︎なにこれ⁉︎なんか起きたらしばられてんだけど⁉︎なんで⁉︎

助けてぇぇぇ!ママーーーー!

なんか状況がわからずにテンパっていると横に眠っている人がいるのに気づいた。

よく見てみるとさっきの部室の中っぽい。

早速その人に声をかけようとしt

「縛られ仲間ですか⁉︎」

「ぎゃああああああああああ!」

びっくりした!びっくりした!

だって話しかけようとしたらいきなり目をガッ!と見開いて、よだれ垂らしながらそんなこと聞いてくるんだもん!


「誰ですか⁉︎あんたは⁉︎」

「雌豚です。」

「いや、名前言えや!蔑称じゃなくて⁉︎」

なんなの⁉︎ここ⁉︎いつの間にかす○きのにでも迷い込みましたか⁉︎


「誰が話ししていいと言ったか!豚どもぉぉぉぉぉぉ!」

バチィィィィン!

バチィィィィン!

「いってぇぇぇぇぇぇぇ⁉︎」

「はあはあ、もっとぉ、もっとくださいぃぃぃ!」

なに言ってんだこの雌豚(仮)⁉︎

てかまじいてぇ⁉︎だれだこんなことするやつぁ!

そこに顔を向けるとさっきのボンテージの人。

「あ?顔向んな気持ち悪い。」

ぐさっ!俺の心に3万のダメージ!

中学の頃何回言われたか……

そのせいで中学の黒い歴史が俺の頭の中にフラッシュバックされた。

さめざめと泣いているとボンテージの人が口を開いた。

「え?なにおまえこの駄べり部に入りたいの?だったら全財産持ってこいや。」

「いや、おかしいだろ!入るのに全財産出さないといけない部活とかおかしいだろ⁉︎。」

なんだこの先輩は⁉︎いきなり全財産よこせとか頭おかしいんじゃねぇの⁉︎

「私は貢ぎまし[バチィィィィン!]はふぅぅぅぅぅぅぅん!」

「喋るなって言ったろうがぁぁぁぁ!」

また横の人が鞭で叩かれた。なんでだろう。どうして俺はこんなすす○のみたいな所に迷い込んだんだ。

「で?貢ぐ覚悟はできたの?」

「出来るか!」

「はい。入部決定。判子をポン。」

うおおおおおおおい⁉︎なんで勝手に判子押してんだ!なんで会って間もない人になんで貢がねばならんのだ!

バチィィィィン!

「うぎゃあああああああん⁉︎」

痛い痛い痛い痛い!足が取れるんじゃないかというくらい鞭でしばかれる。ああ、なんか快感に思えてきた。もう貢いでもいいかなぁ…。

なんて思ってきていると女性が手を叩きながら入ってきた。


「はい、そこまで。ほら二人ともそれ着替えて来なさい!」


誰だ?あの人は。せっかくこれから貢ごうとしてたのに……………ってあぶねぇ⁉︎いつの間にか貢ごうとしてたじゃねぇか⁉︎

「「……はい。」」

さっきのボンテージと雌豚(仮)が揃って返事をした。雌豚(仮)はともかくあのボンテージに言うこと聞かせるとか何者?

「あ、ごめんなさいねぇ。新入生さん?」

おお、この人が神様なのか!初めてこの部室でまともな人を見た!

体を縛っていた縄を神様によって解かれた俺は椅子に座らされあの二人を待った。

席は全部で4つある。急遽俺の席を作ってくれたからだ。あと空いてる席が2つ。俺の向かい側に神様。おれが左側に座ってるから空いてるのは俺の右隣の席と右斜めの席だ。神様はニコニコしながら俺を見ている。

うぅ…人から視線を受けるとかどんな拷問ですか………。

その視線を断ち切るために空いてる席に視線を向ける。

これからくるんだよな、あのボンテージど雌豚(仮)は。正直怖い。いきなり初対面で人をしばく女の子としばかれて悦ぶ女の子だぞ?今すぐ帰りたい。帰って布団に入ってネットしたい!

しかしあの入部届けをボンテージに取られた以上、入らねばならない。どうしようとガタガタ震えているとガラガラと扉が開いた。

やべえ。帰ってきた。どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう……!

さっきのボンテージの人がトテトテと俺の方まで歩いてきた。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!ボンテージの人が口を開く!ひぃぃぃぃぃぃ!

「うぅ……さっきのお兄さん?………いっぱい叩いて………ごめんね?」

誰だこの子は。ボンテージの人と背格好は似てるけど喋ってる言語が違うぞ?

「その子は千堂桜ちゃん。ボンテージを着ると性格が変わっちゃうの。あ、一応3年生よ?」

神様が補足してくれる。え?あのボンテージの人とこのどう見ても小学生にしか見えない女の子が?一緒?そんなの月とスッポンどころか天の川とドブ川くらい違うのに?

「やぁ…そんなに見ないで!あ、あとこの入部届け、ごめんねなんかスタンプ押しちゃって?」

上目遣いでかつ涙目でそんなことを言ってくるこの究極萌え生物はなんなのだ。

俺が困惑しているとさっきの雌豚(仮)が入ってきた。

え?なにさっきの雌豚バージョンからの変わりよう!雌豚の時とは打って変わってボーイッシュな感じの女性は!

「よろしくな!私の名前は山田花子だ!」

「嘘つけっ!今時そんな名前があるか!」

俺がそんなツッコミをいれると彼女が暗い顔をする。

まずい。まさか本当なのか?でも本当ならその名前のせいで沢山からかわれたのかもしれない。からかわれるどころかいじめられたことだってあるかもしれない。いじめの辛さは俺自身が一番知っているはずなのに。

くそっ、第一印象最悪じゃねぇか!

まずは謝ろう。誠心誠意もって謝れば、許してくれるかはどうかはわからないが謝らないよりはマシだ。

俺は床に膝をつけ、地面に頭を擦り付ける。

いわゆるDOGEZAだ。日本古来より使われてきた最上級の謝り方。俺はDOGEZAを中学の頃に極めた。そう、たとえ椅子に座っていようとも1秒未満でDOGEZAを繰り出すことができる。

そして最上級のDOGEZAで謝ろうとし

「あ、私は2年の坂下奈々。よろしくぅ!」

「俺の反省を返せ!このやろう!」

ちくしょう!そんな事だろうと思ったよ!

なんだよ!ちょっと感傷に浸った俺を返せ!返してよ!

最後に神様が自己紹介。

「私はそうね。ゼ○大佐とでも呼んでもらいましょうか。」

「どこのメタ○ギアですか!だったら俺は何ですか?」

「固体の蛇さんね。」

「ソリッド⁉︎」

なんで高校生が大佐やってんだよ!そしておれが固体の蛇さんだったらどうなるの⁉︎破壊しに行くの⁉︎あんなのを!

「2年の坂下奈々よ。よろしく。」

「ドッペルゲンガー⁉︎」

まさかの⁉︎まさかのドッペル!同学年に同じ姓名とか、なかなかなくない⁉︎

あれ?なかなかなくないって口ずさみたくならない?え、ならない?いや、普通なるだろう。

「趣味でヒーローをしているものよ。」

「あなた禿げてないでしょうに!」

ワソパソマソ!それはもうワソパソマソだよ!禿げてないけどワソパソマソだよ!

「昨日もなんか悪そうな怪物を一回だけパンチしてきたわ。一回だけよ?」

「ワソパソマソは一回で十分ですよ!」

なんだこの人!神様と見せかけて邪神か!

「冗談は置いといて、3年の綾瀬優香よ。よろしく。」

さっと手を差し出して来る。まさか、握手?この三年間おばあちゃんとお母さんと妹しか女性の手に触れた事がないこの俺が?こんな綺麗な先輩と?まじすか。

シャツの裾で超高速で手汗を拭い、そろそろと手を伸ばす。そっと握った先輩の手はすべすべで、こんなきめの細かい肌はないんじゃないかと思えるくらいサラサラだった。

ゴッドハンドだ。

あ、俺の自己紹介を忘れてた。

「申し遅れました!俺は一年の斎藤和弥です!よろしくお願いします!」

「「「よろしくね!」」」

「はい!」

………あれ?いつの間にか俺はこの部活に対してさっきまでの嫌な感じがなくなっていた。

なんでだろう?と考えるとなんとなくわかりそうな、わからないような。

さっきまで鞭でしばかれていたにもかかわらず。

でも今のこの気持ちはこの部活に入りたいと思ってるみたいだ。だったら入ってみてもいいかもしれない。まだまだ俺には時間がのこされているから……!


すると優香先輩が悪魔のような表情で一言。

「あ、言い忘れていたけど一度入ったら退部出来ない決まりだからね、この高校。」


「のおおおおおおおおおおおおん!」


前言撤回。この部活に入ったのは16年間の人生で一番の失敗だったかもしれない。

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