25
ひっそりとした校舎の中、三階を目指す柊の後ろに優美と希子が続き、少し遅れて枝折と水木が優美たちを追う。時間が止まったかのように、何の気配もない廊下を歩く。
がらんとした教室には、学生たちの見え隠れしている感情がなく、枝折はほっとした。
柊がクラスにいるだけで、室内の空気が変わる。女子たちの色めく
わずかに感じる
『現世と幽世を繋ぐ門を監視している彼は強いわよ』
さっきの水木の言葉を聞くまでは――
『我々は、君たち人間が
続けざまに、理事長室で言われた葵の
「誰もいない教室って初めて。何か新鮮」
優美の浮かれたような声に枝折は目線を向けると、窓際まで進んだ優美が窓を開けていた。
「枝折ちゃん来て。風が気持ちいいよ」
自分の机にバッグを置く枝折を見て、優美は胸の高さまで上げた右手を上下に動かして
気持ちいい、という言葉に
「本当。気持ちいい」
気持ちよさげに
ざわり――
枝折の背後の空気が警戒感を増したのは、二時限目の授業の
……何かが、いる。
目を
揺らぎが、徐々に形取る。
長身の
その視線が、窓の外に向けられているのが、はっきりとわかった。
ズキリ。
左のこめかみに痛みが走ったのを無視して、枝折は
痛みの間隔が段々と狭くなる。
それに合わせるかのように、人の
中性的な横顔。黒く長い髪を後ろでひとつに束ねている。
脈を打つように痛みが響く。
ゆっくりと長身の人影が枝折の方を向く。
目が合った。枝折はそう感じた。
見ていたことを悟られた。
……誰? どうして、私の近くにいるんだろう。
「先生。引目矢さんが体調悪そうなので、保健室に連れて行きます」
早口でそう告げた声が遠くで聞こえた。
脈打つ激しい痛みが思考を邪魔する。
……いたい。たすけて。
痛む苦しみから涙が
……助けて――
脳裏にぱっと
立ち上がるように優しく
「大丈夫?」
心配げな問いかけと一緒に、額に冷たい手が触れた。
いつもと同じ
「ごめんね。少し
何を謝るんだろう。
「……きもち、いい」
ひんやりとした感触に、少しだけ痛みが和らいだ気がした。
「そう?! じゃあ、少しこのままで」
枝折は深くゆっくりと呼吸を繰り返す。そんな枝折を水木は静かに見守っていた。
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