24
スイッチを入れられたみたいに、枝折はぱっと目を覚ました。
全力疾走した後みたいに、どくどくと心臓が荒れ狂っている。息苦しさと、鳥肌の立つ感触が、夢の
――ツカ、マエ……タ。
耳に残る
「大丈夫?」
水木の
「うん……だい、じょうぶ」
……どうして、こんな夢を見るんだろう。
八瀬高校に来てから、見るようになった。
日に日に近づいてくる
あの夢は、よくない。
枝折の直感が告げる。
「辛かったら、辛いって言っていいのよ。一人で
「頼る……?」
水木の言葉を繰り返して、枝折は首をひねる。
言われた内容は理解している。しかし、周りの人から
だから、戸惑う。
「危険だと思ったら呼んで。あなたの声は必ず九鬼に届くから」
念を押すみたいに水木は言い足す。
……助けてって手を伸ばしたら、それを摑んでくれるの?
胸の奥深くに
軽く朝食を取った枝折は、いつもより早く寮を出た。
女子寮から高校の敷地に入った
幹から背を離すと、柊は枝折に歩み寄る。
「今日は顔色が悪い」
そう告げると、すっと柊の腕が延びて枝折の前髪をわけて
枝折の心臓がひと
「だい、じょう……ぶ」
「無理はするな」
枝折が
「枝折ちゃん、なるべく九鬼の
「一番、安全……?」
水木に背中を押されて歩き出した枝折は、水木に
「こちらの世界である
水木の言葉に
「……水木さんって――」
枝折が水木に話しかけた時、
「おはよう」
と背後から希子の声が届いた。
立ち止まり後ろを振り返った枝折は「おはよう」と挨拶を返す。
「枝折ちゃん、顔色悪いよ。大丈夫?」
希子の隣を歩く優美が心配そうに問いかける。
「あまり眠れなくて……」
「昨日みたいなことがあれば尚更。優美もよく寝れなかったみたい」
枝折の言葉に希子が同意する。
ケタケタと
あからさまな、悪意。
自分たちを目がけるように落下した窓ガラス。
粉々に割れた
昨日――その単語で、情景が脳裏に浮かぶ。
枝折は息を
いつもより早い時間帯のためか、昨日の事故のせいか、学生が少ない校内に暖かい日差しが降り
……昨日のような気配はない。
枝折は
数メートル先で立ち止まり、後ろを振り返っていた柊と視線がぶつかった。無言で枝折を見つめるが、彼の瞳は「離れるな」と語っていた。
柊より手前で枝折を待っている水木たちに気づいて、急いで
「ごめんなさい」
「平気?」
「うん、平気」
気にかける水木に答えてから、枝折は柊に目を向けると、
じっと枝折の様子を観察していた柊は、確認したいことが終わり、校舎に向かって歩を進み出す。
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