11
パジャマに着替えて、枝折はベッドにもう一度横になった。
張り詰めた気持ちのせいで眠れなかったが、学校の始業までかなり時間がある。起きたままで水木に心を
どうしよう……どうしたらいいんだろう。
ここから逃げ出して、家には戻れない。
悩んでも、考えても、解決案なんて出ない。
高校を卒業して就職をして、一人で生活していく。誰の力も借りないで生きていく、って決めた。
目を閉じる。
さらりと、清流を思わせる空気が枝折の
…………――
アラームの音で、枝折は目を
夢を見ていたのに、起きた瞬間、
重い頭を起こして、
「おはよう、枝折ちゃん」
「おはよう……」
気安げな声に、枝折は意識しないまま返す。
ドア付近にいた水木は制服姿で、身ごしらえが済んでいた。既にどこかへ出かけてきた後のような
「枝折ちゃん、食堂行こう」
口ぶりは優しげなのに、
一緒に過ごして、一週間。ずっと
まるで、母親のように。
「……うん」
ドアの前で待っている水木に答えて、ドアの方に向かう。
水木の後について、寮の一階にある食堂に足を運ぶ。学生の少ない食堂の中を見て、枝折は
あまり食欲が
『ここは、人と
一本調子な
……どうして、この学校を選んだんだろう。
「枝折ちゃん、
水木に声をかけられて、枝折は
「――うん」
「じゃあ、混まないうちに学校に行こう」
「……うん」
水木に
植木で囲われた寮の敷地から一歩校内に入った水木の足が止まる。どうしたのかと不思議に思う枝折の耳に、水木の
「心配性……」
複雑な笑みを浮かべる水木の視線の先には、大きな木の幹に背を預けた柊と、彼の横で枝折に手を振る棗の姿があった。
「おはよー」
柊の
「僕、鳥海棗。よろしくね、枝折ちゃん」
棗は
「九鬼が、君のことが気になって仕方ないらしいよ」
枝折より少し背の高い棗が、そっと耳打ちする。その言葉に驚いた枝折は目を白黒させて、柊を見る。
感情の映らない瞳とぶつかる。
樹木に寄りかかったまま枝折を
「ほら、九鬼が行っちゃうよ。早く早く」
まるで柊の横に行けというように、棗が枝折の背中を押す。されるがまま、枝折は柊の後を追う形で教室に向かう。
どうして、私に構うの?
枝折は思わずにいられない。
この学校に来て初めて会った人たちなのに。鬼だという彼らに、こうやって気にかけてもらう理由がわからずに、枝折は
校舎に向かう柊の一歩後ろを歩きながら枝折は
枝折より頭ひとつ背が高く、
学生とすれ違う度、誰もがこちらを見る。
柊に、水木に、棗に。
その視線に、枝折は身を小さくする。
校舎が近づくにつれて、生徒たちの姿が増える。
男子生徒の意外そうな目。女子たちの柊を見る時とは違う鋭い目つきが、場違いだと告げている。
……逃げ出したい。
無理な望みが頭に浮かぶ。
「枝折ちゃん、大丈夫?」
「は、はい」
「……大丈夫」
枝折は自分に言い聞かせるみたいに
その言葉に柊は目線を左に動かして斜め後ろを歩く枝折を眺めただけで、無言のま校舎に入る。
敵意のこもった周りの目から
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