6
少し前を歩く枝折たちの姿を観察していた
「入学式早々、襲われそうだったよ」
気配が隣に着くタイミングで、棗は視線は前に向けたまま軽い口調で喋りだした。
「知っている」
そう不機嫌に返した柊は、横目で脇に立つ少年を眺めた。
柊の肩くらいの身長に、ほっそりした体形。柔らかそうな栗色の猫っ毛に、茶色の大きな瞳。
柊と同じ制服に身を包み、彼は
柊は、棗と同じように枝折の背中を見つめた。明らかに緊張している後ろ姿。
少し前、柊の心に直接届いた声なき悲鳴は恐怖に染まっていて、重く彼の胸に突き刺さり、とっさに枝折の姿を
最悪の事態は想定していない。枝折には常に二名がついて守護している。
それなのに、何故、少女の姿を見つけ出そうとしていたのか。
「……」
柊は自分の衝動的な行動を、不可解に感じた。
「入学したばかりなのに今から大変だねぇ。どれだけ、引き寄せられるのか…楽しみだね」
興味本位に呟く棗をきつく睨み、柊は吐き捨てた。
「いい加減にしろ」
柊の気配が一瞬で
「へぇ。そんなに大事なの」
「冗談を言ってないで、護れ」
棗の言葉には触れず、柊は別のことを口にして、そのまま目線を棗から枝折の背中に戻した。この話は終了だ、と言わんばかりに。
「僕を誰だと思っているの? 九鬼の命令は、
にっこりと笑い、
「よく知っている」
感情のない瞳を枝折に固定したまま、柊は嘆息した。
不意に振り返った枝折は、棗の凶悪な存在感を察知して、気配の
「――凄いね、彼女」
「これ以上、警戒させるな」
やり
遠目にもわかるほど強張った背中。青ざめた面差しで辺りを見渡す枝折に、隣の水木が
常に、
八瀬高校に来て一週間。その状況は一向に変わらない。むしろ、日に日に警戒心が強くなっているようにも見受けられた。
普段は物静かな水木にさえも気を張っているという。
「水鬼が、手こずっている」
「へぇ、そうなんだぁ……」
柊の言葉に、棗の目が輝いた。
水鬼をからかうネタができたらしい。
見た目に
嬉々とした
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