5
「
「九鬼くんって、カッコイイよね」
入学式会場の熱狂
柊の発言で騒然となった入学式は早々に切り上げられ、学生たちはそれぞれの教室へ戻るように告げられた。
大きな熱量の中、身を小さくして講堂から逃げるように出てきた枝折は、朝から
「あの九鬼ってヤツ、
「やめとけ。痛い目見るぞ」
女子とは異なる、男子の険悪な
人いきれの中に
人混みから
立ち止まり、風を感じようと空を見上げた。まだ半日しか
小枝を踏む乾いた音がして、背中に
「あれぇ。こんな所に女の子がいる」
色素の抜けた明るい髪。ネクタイを
逃げ出したいのに、足が
目を合わせたくなくて、枝折は視線を下げる。
ザワリ……。
枝折の背後の空気が
心臓が悲鳴を上げる。
「――へぇ。いい匂いするな、お前」
一人分のスペースを空けて立ち止ると、意外げに目を丸くすると、更に近づき、
「なあ、味見させろよ」
イヤッ!!
瞬間、枝折の背後の空気が
「その手を離して頂けませんか? 先輩」
割り込んできた
「何だ、お前? これからイイコトするんだから、邪魔すんなよ」
不機嫌に告げた生徒の左腕を
「
「あぁ!? 水鬼?」
邪魔した
本能が逃げろと、わめく。
――誰?
スイ、キ……?
好戦的な空気。
ここは、おかしい。
「止めろ。九鬼が出てくる」
やや
……クキ?
「大丈夫?」
ひんやりとした水木の手のひらが、さっき摑まれた箇所に触れた。そして、心配そうに語りかける水木の声。
さっきまでの攻撃的な気配はなく、枝折のよく知る雰囲気に泣きたくなるほどホッとした。
泣き出しそうな枝折の顔を見た水木は、複雑そうに瞳を
ふと、自分の後ろにあった気配を思い出して、意識を背後に向けた枝折が目を
「……ねぇ。スイキって、何?」
水木の笑顔に、枝折は問いかけた。
「ごめん。その疑問に、私は答える権限がない。九鬼に聞いて」
「クキ、って……?」
「九鬼、柊。我々が、従う者――」
枝折の
「安心して。私たちがあなたを護るわ」
一呼吸後に、当然のごとく告げた。
――クキ、ヒイラギ。
その名に、入学式の会場で隣に座った男性が、枝折の脳裏に浮かんだ。
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