5B
ギアが入らなくなったバーキン氏のワゴン……を、シェヴラテインで
まず、シェヴラの頭部が受けたダメージの確認である。ずっとワゴンのお尻に食い込んでいたから、さぞかし……と思っていたが。バンパーとフェンダーの境目が若干ずれて広がった位で、後ろ寄りに付いているライト・ユニットは無傷であり。実際に左右とも正常に点灯したので、かなり驚いたが。奇妙なことに、それだけで。何か、勇気みたいなものが湧いてくるのだ。
次に、僕等が前後二台に分乗した後のコミュニケーションをどうするか。やはりモバイルフォンを使うことになるが、何であれ
(時々忘れそうになるけど、僕も「自動車メーカー」の従業員の端くれだし……)
そうなると、プラ袋をねじった紐で。何とかして
「もう連絡は諦めよう。予め計画を立てて、そこに無いことはしない……とするしかないさ。」
そうバーキン氏は言って、あっさりと修理工場の探索に切り替えた。それで僕の方も、ロープで繋がった車たちを何処でUターンさせれば良いか?を、ナビゲーション画面で探し始めた……今いる路肩から走り出すと、一旦はO州にお尻を向けることにならざるを得ないのだ。それで色々調べたが、結論から言えば。いったんハイウェイから降りて、上がり直すしかない……というのも。この先の車を入れられる施設のなかに、逆側の車線まで回せるようなところはなかったし、インターチェンジもUターン可能な構造には見えなかったのだ。
シェヴラの助手席でスマートフォンを操っていたバーキン氏は、何度か通話に切り替わったあと、目的を果たせたようで。
「……よし、ここに決まったぞ。ナビの目的地に入れられるか?」
「住所を頂けますか?」
「ここだ。」
それでバーキン氏のスマートフォンを預かって、ナビゲーションの住所選択メニューを州名から順に降りて行った。
(ここ、
「設定しました。ルート探索中……。」
「ほう、いったん降りろとさ。同じ結論かい?」
「ええ。」
ちょっと感心したが、シェヴラのナビゲーション・システムは「車の向き」なども考慮に入れているようで、結果的に「答え合わせ」ができた。
「よし、V字に曲がったりする必要はなさそうだな。」
「そうですね。」
「ここのパーキングまで曳いてもらえば、あとは業者がやってくれるだろう。こっちのナビにも設定するよ。ああ、そっちのサイトを見ておいてくれ。」
バーキン氏はそう言うと、スマートフォンを回収せずにワゴンに向かった。何が「そっち」だって?……と、webブラウザ画面の「タブ」をタップしたところ。修理業者のwebサイトのほかに、もう一つ画面が出ていた。
(えーと、「牽引の際に注意すること」……なるほど。)
一通りスクロールして読み終わったあたりで、
「そっちと同じルートを設定した。曲がる箇所はそんなにないが、ハイウェイでは車線変更せざるを得ない場面もあるかもだな?」
「ですね……これ、お返しします。」
「ん。そういうときは、早めに
……などと。それなりに取り決めをして臨むことになったが、結論から言うと。牽引での帰り道は、拍子抜けするほど何ぁんにも起こらず。シェヴラのほうも、異常など無かったかのように快調で。曳かれる側のバーキン氏の操作も上手かったのだろうが、重いワゴンを曳いていると意識させられたのは、加速の際にワイヤーが目いっぱい張ったとき位で。逆に忘れそうで危ないほど、普通に走っていた。
むしろ。否応なしに、僕の頭の中でぐるぐる巡っていたのは。出発の直前、一旦ワゴンの前にシェヴラを出して……停め直した後で。両方の牽引環をロープで繋ぐ際に交わしたやりとりで。バーキン氏が唐突に——
『にしてもだ。D&Dは知っていて雇ったと聞いたが、同僚になるスタッフには……何も話していないのか?』
『え、何を?』
『丸腰で、12番口径の散弾銃を相手にしての大立ち回りさ……雇用者がビビるほどの、な。』
『……!』
——鈍いショックとともに、瞬間的に蘇る記憶。思い込みで相槌を打って、あの二人を凍りつかせた日のことを。
『それは……怖い思いをしましたね、大変だったでしょう。』
そう……「猟銃事件」だ。
僕は、単純に『巻き込まれただけ』と思っていた。だが、そうではないと。バーキン氏のいう
(……だとすれば、このままバーキン氏を
結果的に、その心配は杞憂に終わった。というのも……
「あれっ?……いないじゃん! いつの間に??」
バーキン氏のほうが。州都へ入って、
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