53
あのとき故郷を襲った
その一人となった父が、役場のリストへ名を連ねるのにも、その遺体すらない地域葬送の式典にも、「どうしてだよ?」と感じるのは。被災遺族となった全員にとって、同じことだと思っていた。
ただ、そういえば……長らくマットロウ家の面倒を見ていたラーソン弁護士を除けば、あのとき地元で会っていたのは。クァンテーロの家族と、その親族だけ――他の知り合いとは同席した記憶がないのだ。父が婿入りしたマットロウの家は、僕が小さいころに
しかし、父が亡くなったことで「利」を得たクァンテーロ家が、その運用には失敗続きだった……という話は。いつの間にか、僕のなかに。父が行方不明になった原因について、疑いの種を植え付けていたようだ……というより何故、いままで不思議に思わなかったのだろう?確認できた遺品といえば、ジャンパー一着だというのに。それを(疲労と悲痛に歪んだ顔で)見せてくれたラーソンさんは、もう
(それ以上は無理、とは……いったい、どういう意味だったのだろう?ラーソンさん、話せるうちに聞いておくんだった。)
ハイウェイはもう地上に降りていて。制限速度も下がっており、歩道に面した施設に出入りできるように。いちばん右の車線は断続的な
とりあえず。シェヴラの速度を、路面のイボイボで暴れない程度の速度へ落としつつ、
(やはり来た。でも、けっこう混んでるな……)
並ぶ店舗も、ファミリー向けばかりではなく。若い男がひとりで入ってもおかしくない施設もあるのだが、パーキングに入ろうとする車列ができる
(仕方がない、ナビゲーションに頼るか……ん?)
ちょうど画面上に、進行方向を横切る道路が現れた。
(信号機だ……ハイウェイなのに、交差点??)
この道路。実際は交差しておらず、一段下を通っており。右へ流れる
(これなら、右折すると受けとられる心配もない。打って付けでは?……ようし)
渋滞という程ではないが、車間がかなり詰まってきたので。惰行のまま、一本目の一方通行路を跨いだ。同じ車線で前にいる車たちも、オレンジ色の光を瞬かせており。ほとんどが僕と同じに、カープールへ入れるつもりのようだった。それらの上に見え隠れしている、二本目の手前の信号が。そろそろ変わりそうなこともあって、いま出した
そして、右へと。ハンドルを切る前に、軽くブレーキを踏んだ瞬間だった。
それが起きたのは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。