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あのとき。
『タイツォータ第一』で起こった
すなわち、こういう
まず、得体のしれないならず者から「
電子メールでは直接ファイル等の添付は行われず、NFRSにアップロードした文書をアドレスで指定して。ノヴァルの技術者の見解や、ノヴァルの法務からの問い合わせや、弁護士からの法的アドバイスやらが……メールの文章で飛び交っていたのだ。
こうしたやりとりには「
自分用の皿に盛っておいた中華饅頭だって、注意してなければこの通り……
……あれっ?
後、もう1個あった筈では?
「はむふむ、
……ジェン!!
「いいのかい?…半分もらっておいて何だけど。彼、驚いてるようだけど。」
……タイツォータさん!驚きますよ。
「いいんです。どうせ、たくさん買い込んでるんだから。」
……ロージーぃい。
『5フレームも隙あれば、何されても仕方ないね!』
……ニックまで!(頭の中で)
……——————まあ、とにかく。
とにかく、当時の
ノヴァルでの上司にあたるリーガル・システム技師から聞けた範囲では、NFRSそのものへの攻撃が色々とあったものの、一度も「成功」したことがなかったようだ。そのNFRSと……弁護士たちのパソコンとの間で飛び交うデータは、通信ごと。全てが暗号化されていたことも確実で。
そうなると、どこかのロー・ファームで――
キャブラ・キャレッタ等の車種で起きた「意図せざる加速」の訴訟は、ステイツ50州の全部で起こされていたので、各州の代理人事務所をひとつひとつ「何とか」していくのは――幾ら『世界最強』のノヴァルといえ『不可能』であっただろう。
しかし幸いにして、それらの訴訟の殆どは……西海岸C州の連邦裁判所に集められる
実際に公判が開かれるのは、C州の裁判所のほかは2・3州となる見通しだったので、そこだけに専用の拠点を設けて、ガチガチに守りを固め、弁護士たちを赴かせればよい――これがノヴァル側の法務とリーガル技師で、熟慮の末に決定した方針であった。
なるほど……僕の報告書を呼んでいたのなら、ロー・ファーム側ではPC類の利用ルールなど絶対に守られないことを、彼らは確信しただろう。
たとえ専用拠点を新設しても、そこをノヴァル側のネットワークに参加させることはしたくない……法務システム技師のリチャード・ディクスン・ファーレル主任は、当時そう漏らしていた。
一方で、僕がタイツォータ事務所「第一」で行ったような制限なら。専用の新設拠点で、適切な仕様の機器を揃え、信頼できるIT技師を張り付ければ、確実に行えるだろう……念には念を入れて、訴訟支援システムも全く新しいものを立ち上げよう……これらの新しい環境はインターネットに接続されるので、攻撃者からそれと悟られないように目眩ましも入れよう……——といったセキュリティ・ポリシーが。ノヴァルの法務部隊によって組み上げられて、この「第二」のIT環境も――その一部になっている。
例えば。ここの
こうしたことから。弁護士達がここに居るときは、僕も必ず居なければいけない。少なくとも、早朝に来て、昼休憩も居て、深夜に帰る必要がある。半年ほど前…本当に忙しかったときは、土日も泊まり込んでいた。
ここのPCからは、指定した先にしか接続が許されない。電子メールすら、
僕は結構…慣れてしまうほうなので、自分に言い聞かせる必要があった。
IT技術者としては。
常に「外」の動向をチェックして勉強するようにしていないと、ここを閉めた後で。致命的なことになるぞ……と。
それで、ここでは。書籍類の持ち込みが、電子タグを附ける(=持ち出し不可とする)ことで認められており、空き時間にはそれで勉強をしてもよいことになっていた。これは
実際、
しかし、この半年ほど。
僕が持ち込む専門書は…あの「C言語」や「
そう、これらは……自動車のエンジンなどの、電子制御に関わるものなのだ。
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