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「うちの車で、『意図せざる加速Unintended Acceleration』が起きるなんて……!」

 と、ドライバーが叫ぶとき。車の中では、いったい何が起きているのか……?


 この単純なことを、うちの事務所ロー・ファームで聞けたのは。なんと!つい1年ほど前のことで、ノヴァル関係の業務を始めたときから3年余りも経っていた。

 まあ、聞けたといっても、「車おたくローヤー」のビルに………だけど。


「え? ……知らないで受けてたの?」


 ―――と、ビックリされつつも。「意図せざる加速オーバー・ラン」が起きるメカニズムを、スラスラ……っと。ホワイトボードへ書き出してくれた。


一、アクセルとブレーキの踏み間違い

二、アクセルとブレーキの踏み間違い

五、アクセルとブレーキの踏み間違い

六、アクセルがフロアマットに噛んで戻らなくなる

七 、アクセルのペダルの一部(樹脂)が、劣化してくっついてスティッキー戻らなくなる

八、アクセルのワイアーが破断などして引っかかる(電子制御でない場合のみ)

九、スロットル・ボディが油汚れなどで固着して開きっぱなしになる

十、アイドリング・スロットル開度の変動

十一、ターボチャージャー軸受けオイルの吸気への混入(ディーゼル車のみ)


 ……後半の、よくわからない話はさて置いて。このときは、まあ色々とあるものだな――とだけ。単純な感想だった。


 ビルによると、「意図せざる加速オーバー・ラン」の苦情は旧世紀からあり。当然ながら、ノヴァル車だけのことではないのだと。そしてほとんどの場合は、一、二、五によって起こるのだという………………………って、あれ?

………

 よく見ると、一・二・五ってじゃん!

 三・四も無いし!


「それ以外の六から八番までは物理的な原因、十一番は化学的な原因といえるね。そして十番だが……」


 いやいやいや。そんな……大学の先生みたいに普通に解説に繋げられても。何か気づかないかい?……っていう風に、ニターッとするとかしてくれないと。


「でも、ビル。うちとしてはでも……やっぱり、原告側あちらさんの主張も要るでしょ? こちらが防御しなきゃいけない対象ソレだし。」

「えー……」


 苦笑しつつ。見るに見かねて……という感じで、助け舟を出してくれたのはジェンだった。その航路を阻もうと、目頭を山型に盛り上げて「受け入れぬ光線beam of unacceptableness 」を放つビルへ。さらに彼女は――


「多分ねぇ、の準備なんでしょう。マットに必要なのは、『正しい答えはどれか』じゃあないのよね?」

「そうです、そうです。」

か……でもなぁ。」


 まだ不満そうで、もう一押し必要だった。


「わたしも聞いたし、間違いないわよ。」

「ええ。ボスからは『向こうの言い分まで一通り聞いて来い』って。」

「 わかったよ。まあ、あろうはずがない……と言わざるを得ないけど。」


 ぶつぶつと渋りながら、ビルは書き加えた。


『十二、スロットル電子制御の不具合flaw



 それが、1年ほど前のやりとりだった。

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