第9話猫が狼に見えた②

「それで、色島君。どうでしょうか、天水さんがキミの描く絵を見たいと言って

いるのですが?」

「それは………」

「色島君………」

おそばとお弁当を食べ終えた後、校長先生に改めて聞かれる。

天水さんは訴えかけるような視線を向けているが演技なのはすぐにわかる。

「彼女は陸上部で朝も早いですし、キミさえよければ観客として見てもらうのは?」

「観客ですか?」

「ええ、一人の世界で描きたいというのは解ります。ですからもしキミが良いと

言うのであればですが。」

お茶を飲み校長は僕に話す。

「絶対邪魔しないから」

天水さんが嘘っぽく涙を滲ませる。

僕は天井を見上げ考える。

確かに一人で描くのが慣れてきて、自分で自分を評価するのも飽きてきたころだ。

正直寂しかった事も嘘じゃない。

「わかりました。良いですよ」

「え、ホントッ!」

彼女が思わず身を乗り出す。

「うん。でも朝早いよ?」

「全然大丈夫!早く寝れば」

彼女は凄く嬉しそうな顔をしていた。

「良かったですねぇ」

校長先生も嬉しそうだった。


「「御馳走様でした」」

「いえいえ、とても楽しかったです」

僕たちはお礼を言って校長室から出て教室へ戻る。


「なんで、オッケーしてくれたの?」

二人で廊下を歩く。

周りの人間がいるが僕は気にしない性分だ。

「しない方が良かったの?」

「そんなこと無いよ。へへ、嬉しい」

そういって彼女は笑った。

「蓮ちゃんの事は言わないよ。誰にも」

「そう」

「怒ってる?」

「どうして?」

顔色を伺うように僕を見る彼女に僕は疑問で返す。

「脅してるみたいで」

「いや、それは関係ない。」

「ホントに?」

「ホント。だって先生たちは知ってるし、他の生徒に言われたく無かっただけだから。この件とは無関係だよ」

「え、他の先生は知ってるの?」

驚く彼女を横目で見ながら僕は続ける。

「関係は詳しく言えないけど簡単に言えば従妹だよ。蓮ねぇちゃんは」

「従妹?」

「そう、別にやましいことは無い。ただ、従妹だからって贔屓されているように

思われるのは嫌だから黙ってたんだ。」

「そうだったんだ」

「だから、蓮先生の為にもあまり言いふらさないで欲しい。」

彼女の足が止まる。

「色島君は私がそんな事皆に言いふらすと思ってる?」

彼女が真面目な顔で言う。

「思わないよ」

「だったら謝って。その言い方は酷いと思う。」

彼女はその場から動かず怒っていた。

「悪かった。ごめん」

「良いよ。許す」

笑顔に戻った彼女に僕は気づかれないようにため息をついた。

「何でため息吐いてるの?」

訂正、気づかれていた。

「いえ、何でもないです」

「宜しい」


僕は彼女が苦手です。

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僕の大嫌いな彼女 白ウサギ @Whiterabbit-cam

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