番外編:銃の取り扱い②

89式小銃を貸与されて間もなく、武村の区隊は戦闘訓練のため演習場に来ていた。今日は初の空砲射撃という事で新隊員にはアタッチが配られていた。アタッチは銃口の先に取り付ける金具の事で、これにより空砲発射時の燃焼ガスが圧縮され弾を発射しなくとも音と反動を得ることができる。

専用のレンチと鉄棒でアタッチを装着すると、助教は新隊員たちを呼び集めた。手には週刊誌数冊をガムテープでぐるぐる巻きにしたものを持っている。

「いいかお前ら!前期教育でもやったかも知れんが、これから空砲の威力について展示する!いくら俺らが口を酸っぱくして銃口管理言ってても聞いてない奴はいるからな。後期教育では前期より戦闘訓練も実戦的な動きになるから事故防止のために再度銃口管理を徹底する!」

そう言い終わるとほかの小銃を持った助教が現れ、立てつつの姿勢になった。そして、右手の人差し指をピンっと伸ばし、切り替えレバーの所を指さし「安全装置よし!」と言うとテキパキと槓桿を引く動作をする。

「まずは安全装置!しっかりアになってるか確認しろ!次は薬室!槓桿は引いてロックし、目視で薬室内に弾が無いことを確認だいいか!」

「「「「はいっ!!!」」」」

そして展示する助教は弾嚢(マガジンポーチ)から弾倉を取り出すと、弾倉の湾曲になっている部分をバンバンと叩く。

「次!弾倉は装填する前に後端をしっかり叩け!弾倉の中の弾がズレてると装弾不良を起こす原因になるからな!」

弾倉を薬室に挿入し槓桿を引くと、弾が装填され「カチャン」と軽い金属音がし、「弾込めよし!」と助教が手を挙げる。

すると、解説していた助教が手に持っていた週刊誌の束を設置された台の上に立て掛ける。

「射手!目標正面の週刊誌!」

小銃を持つ助教は立射たちうちの姿勢になり、銃口を週刊誌に近づける。

「射て!」

タンタンタン!3発射ち終わった助教はすぐさま切り替えレバーをタ(単発)からア

(安全装置)に切り替える。

「よし、お前ら近くに来い」そう言うと助教は週刊誌の束を新隊員たちに見せつけた。「いいか、よく見ろ」武村がのぞき込むと、射たれた週刊誌の表面には小さく穴が空いていた。「空砲は確かに弾は出ないが、ガスだけの力でこれだけの貫徹能力がある。アタッチに小石が詰まっていた場合は小石が弾丸と化す事もある。」

確かに、直近とは言えガスだけで週刊誌に穴を空けてしまうのだから小石なんて弾丸並みの威力を持ってしまうだろう。

「お前たちにはこれから空砲を配るが、それには人を殺傷してしまう恐れが十分にあることを心に刻み、銃口管理に気を付けて訓練しろ!わかったか!?」

「「「「「はい!!!」」」」」

威勢よく新隊員たちが返事をすると、小銃を持った助教は槓桿を引くとはじき出された弾をキャッチし、弾倉を抜く。そして抜いた弾倉に先ほどキャッチした弾を弾倉に戻すとマガジンポーチに弾倉を収める。

「ここからが重要だぞ!弾抜けの時は必ず槓桿はロックしたままで薬室を他の隊員に確認してもらえ!」

銃を持った助教はその解説通りに動き、薬室を他の助教に確認してもらう。

「薬室よし」

助教が前に出て解説を続ける。「弾抜けが終わったら、班長の統制のもと銃点検を行う。この際はしっかり各部を当たれよ!銃点検!」

号令が掛かると、助教は薬室を確認すると「薬室よし」とつぶやき銃を銃口部分から点検する。

「異状が無ければ控えつつ。元へ…つつ!」

カチンという撃発音が聞こえると助教は再び立てつつの姿勢に戻った。


「ここまでが一連の流れだが、もし分かってない奴がいたら駐屯地までハイポートで帰らせるからな。…連帯責任でな」

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