番外編:銃の取り扱い①

 89式小銃を初めて手にした時、武村は「なんか電動ガンみたいだな」と思った。前期の新隊員教育隊で64式小銃を貸与されていた武村にとって、木と鉄で出来た無骨な64よりプラスチック部分の多い89はおもちゃのような印象だった。

「これ、(東京マルイ)って書いてないよな?」と同期に小声で囁くと「んな訳ねぇだろw」と軽くウケる。


武村の自衛隊生活において89式小銃は、常に身近にあるものだった。他部隊への支援や中隊・小隊での戦闘訓練、警衛隊でも89は常に携行していた。

「お前ら!銃口管理は常に意識しろよ!」

これは新教時代から常に言われていた。例え小銃に弾が装填されていないと、銃口は自分並びに他人に向けてはいけない。なので、武器庫の銃架から小銃を取り出す時から銃口の向きには注意する。銃口を下に向けるときは誰もいない所を探し銃口を下げる。

「銃口からレーザーが出ているイメージで扱え」

(銃口からレーザー)というのは、近くの人間だけでなく遠く離れた人間にも銃口を向けないように意識しろという事だ。

武村が新教時代の頃、休憩時間に同期二人が小銃をふざけて向けあってた事があった。案の定、それを見つけた助教(レンジャー)がすっ飛んできて一人の持つ小銃を掴んだかと思いきやそのまま引き倒し、地面に転がった同期に「どうだ、怖いか?」と取り上げた銃を突きつけた。

銃を向けられた同期だけでなくあの場にいた新隊員全員が顔を青ざめ、「自衛隊ぱねぇ」とドン引きしたが、武村は「弾を装填された銃を向けられるってどういう感覚だろう?」と思うようになったのだった。

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