第005話 赤頭巾

知らないのか、お前の中に、獰猛な獣がいることを

聞こえないのか、「ここから出せ」と、身も凍るような怖ろしい叫びを上げているのが

分からないのか、お前の牙が、何を貫くのか

見えないのか、白く誘う、私の首筋が


知っているだろう、私はいったい誰なのか

聞こえるだろう、小さくか細い、私の呻きが

分かるだろう、お前の牙の先で脈打つ、私の首筋が

見えるだろう、まさに輝く、私の命が


知っている。この惨劇を、隠れて観ている者が誰なのか

聞こえる。私の亡骸のそばで、すすり泣く老婆の声が

分かる。二つが融けて、安らぎにつつまれてゆくのが

感じる。ほどなく訪れる、お前の死を

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