第006話 小人の塔

あるところに、小人たちがたくさん住んでいました。その街では大きな塔を建てていて、みんなそのために一生懸命働いているのでした。ある小人は石を切り出し、ある小人はレンガを運び、ある小人は運ぶのを指揮したりしていました。塔が空にも届こうかというとき、山の向こうから巨人がやってきて、塔をめちゃくちゃに壊してしまいました。塔を建てていた小人たちはもちろん、下にいた小人たちなど、たくさんの小人たちが巻き添えになって死んでしまいました。塔を壊してから、巨人は山の向こうに帰っていったのでした。


せっかく作った塔はめちゃくちゃになってしまいましたが、それでも小人たちはめげずに塔を建てようとするのでした。小人たちは石を切り出し、レンガを運び、運ぶのを指揮したりして、塔を積み上げて行くのでした。せっかく塔が空に届こうとしたところで、また山から巨人がやってきて塔を壊してしまいました。小人たちは悲しみました。だって、せっかく作った塔なのに、また壊されてしまったから。それでも小人は、めげずに塔を建てようとするのでした。


せっかく建てていた塔は壊されてしまったけれど、小人たちは石を切り出し、レンガを運び、運ぶのを指揮したりしながら、また毎日毎日せっせと塔を積み上げてゆくのでした。塔が空にも届こうかというとき、山のむこうから巨人がやってきました。小人たちは武器を取り、大砲を撃って巨人を攻撃しました。だって、せっかく作った塔を壊されるなんて、嫌だから。巨人は怒りました。塔を壊すだけではなくて、小人たちを叩き、虫けらでも殺すように、足で踏み潰しました。小人たちはみんな死んでしまいました。いや、正確には、一人だけ生きていました。この小人は、たった一人で石を切り出し、レンガを運び、塔を建てる作業を始めました。巨人はこの小人を殺さないで、しばらく見ている事にしました。


10年経っても、20年経っても、この小人はたった一人で、塔を建てるため働いているのでした。そのあいだ、巨人は邪魔もせず、興味深そうにこの作業を眺めているのでした。


30年後、塔が空にも届こうかという高さになったとき、強風にあおられて、小人は塔の一番上から落ちてしまいました。巨人は地面に落ちた小人をあわてて拾い上げました。しかし、叩いても、声をかけても、さっきまで小人だったものは、ぴくりとも動かないのでした。

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