第016話 茨

指先に鋭い痛みを感じた。見ると、生い茂っている茨の茂みに傷つけられたのだろう、人差し指の先に、ぷっくりと血がにじみ出てきていた。私はこの茨を越えて行かねばならない。たとえ、それが私を傷つけると分かっていても。


夢から覚めると、私は布団から起き上がった。まだ半分しか覚醒していないような頭で立ち上がり、絆創膏を探し始める。机の上にあるはずだ。あの夢を見たら絆創膏を傷口に張らなければいけない。夢の中で傷つけたところからは、実際に血が出ているのだから。


何度目だろうか、この夢を見るのは。夢の中で私は、茨の中を歩き回り、何かを探している。けれど、いくら探しても見つからない。ずいぶんと探し回ったのに、どこにも無い。本当に茨の中にあるのだろうか、それすら疑わしくなってくるのだ。そのうち私は、どうしても見つからない探し物に途方に暮れ、泣き出したい気持ちになる。ふと、茨のトゲで傷だらけになっている自分に気づく。その傷口から出てくる血を見たところで、いつも夢から覚めるのだ。


これからも私はこの夢を見続けるだろう。そこには痛みと、傷ついた自分と、血の跡だけが残されているのだ。

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