第017話 魔女
始まりの魔女はどこにもいない。
昨日と今日の境界で、曖昧に漂っている。
けれど彼女の存在は、どこまでも拡散していく。
二番目の魔女は怠け者。
食事も睡眠も夢の中で済ましてる。
彼女が起きれば、世界は元通り。
三番目の魔女は勇猛果敢。
手にした矛で、敵を貫く。
貫けないのは一つだけ。
四番目の魔女はやさしいひと。
だれもが彼女の慈愛を知っているが、
彼女が満たされる事は無い。
五番目の魔女は記憶の中。
誰かが彼女を語り継ぐ。
語り部が消え去ったとき、彼女はいなくなる。
六番目の魔女は狡猾な女。
誰も彼女の本当の心を知らない。
彼女は自分すらも欺いているのだから。
七番目の魔女は何も知らない
彼女の世界は完全な白色。
何者も、彼女の世界へ行く事はできない。
八番目の魔女は静かな女。
波風立てるのを嫌うけど、
本当に静かなのは嵐の前。
九番目の魔女は好奇心旺盛。
彼女が知らない事はない。
歓喜の歌声も、断末魔の叫びも。
十番目の魔女は夢見る乙女。
どこか遠い世界が彼女を待っている。
それは意外にも近くにある。近くて遠い、遠くて近い。
十一番目の魔女は最後の魔女。
明日を夢見て、また眠りにつく。
静かな夜に溶けてゆく。
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