第011話~第020話
第011話 ユウちゃん
わたしにはユウちゃんという弟がいます。ユウちゃんの眼は青いビー玉で、とてもきれいです。黒い毛糸のかみの毛で、ちょっとちぢれていますが、そこがかわいいところでもあるのです。わたしはいつもユウちゃんと一緒にいて、学校であったことや、おともだちのはなしをします。
おかあさんはとてもきれいです。いつもすてきなお洋服を着ています。おとこのひとが来たときはいつもよりもずっときれいで、みとれるくらいです。でも、そんなとき、わたしがこっそりみていると後でとってもおこられます。
わたしはおうちにいるときはユウちゃんと一緒だったので、一人ぼっちではありませんでした。ユウちゃんとおままごとをしたり、ユウちゃんにお話を聞かせてあげたりしていました。わたしとユウちゃんは大のなかよしです。
ある日おとうさんとおかあさんがケンカをしていました。ふたりは仲直りしましたが、そのころからおとうさんはほとんどお家に帰らなくなりました。『おかあさん』はふきげんです。でもわたしはユウちゃんがいるからさみしくありません。
『おかあさん』は怒っているとき、わたしにユウちゃんを捨てるようにいいました。でもユウちゃんはわたしの大事なおとうとです。わたしはユウちゃんを『おかあさん』に見つからないところにしまって、こっそりと遊ぶようになりました。
あるときユウちゃんが居なくなりました。『おかあさん』のしわざにちがいありません。わたしは『おかあさん』にききました。ユウちゃんをどこにやったの。
「あのゴミ人形ね、あんなもの、捨てたわよ」
「どうして!ユウちゃんは私のだいじな弟なのに」
『おかあさん』はものすごい形相でわたしに平手打ちをすると、ドアをあけて出て行ったきり、二度ともどりませんでした。わたしはお家にひとりぼっちでとり残されてしまいました。
ユウちゃん、どこにいったの。
わたし、ユウちゃんがいたから、ひとりぼっちでも恐くなかったのに。
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