06
はて?あの剣はどこかで……。
デブ王は考え込んだ。そして気付いた。あの剣は魔王を倒した時に使っていた剣だと。
しかしなぜあの少年があの剣を……??
あれは、とある山奥に住んでいる頑固な鍛冶屋の親方が太古の伝説の大剣をうちなおして作った代物。あの親方は自分が気に入った者にしか剣を譲らないのに。
なによりあの時の剣は国が復興した後、もう使うこともないだろうと親方に送りつけたんだが……?
うーむとデブ王は悩んだ。といっても思い詰めたものではなく、昨日の夕飯はなんだったっけ?と言った程度の軽いものだったが。
単純なデブ王は素直に行動に移った。
「少年よ、その剣をみせてくれんか?」
近くで見れば、分かるだろう。もしかしたら見間違いかもしれないし。
デブ王はそう考えた。
少年は素直に応じて剣を抜き、デブ王に近づいた。そしてデブ王が受け取ろうと差し出した両手の上に大剣を--置かなかった。
「え?」
デブ王はきょとんと目を丸めた。胸に大剣を深々と突き刺されたのだから。鮮血がまさに出血大サービスといわんばかりに溢れて、玉座を濡らしてゆく。
冷酷な表情を浮かべ、少年は死にかかっているデブ王に言った。
「お前が課せた膨大な税のせいで村のみんなは、ずっと苦しんでるんだ。何人も何十人も、飢餓で死んだんだ。なのにお前はみんなを助けることもなく贅沢三昧……--その報いを今、受けろ!この国はオレが救うんだ!!」
「…………」
デブ王は、かつてのあの日を思い出しながら、重くなってきた瞼を下ろした。
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