02

魔王が支配していた、かつては王家が使っていた王宮の緑溢れる中庭に、今新しい墓標が建てられた。石碑には『メタボ魔王の墓』と彫られていた。できたばかりの墓を、自称勇者とその仲間が見下ろしていた。

自称勇者がポツリと呟く。

「僕は……これから田舎に帰ろうと思う。魔王とはいえ、人を殺めてしまったのだから……」

旅の途中で魔王の手下である数百匹の魔物を遠慮容赦なく、ぶった斬ってきた自称勇者が言った。そして力無く肩を落とす。

そんな彼を慰めようと、幼馴染みである女魔導師が彼の肩に手をかけて口を開いた。

「あれは仕方の無かったことよ。あなたは悪くない。それよりも今のあなたにはやるべきことがあるわ」

ニコリと微笑んだ彼女の言葉を騎士が引き継いだ。

「王家の方々も魔王や魔物に殺されてしまった今、この国を統べられるのは貴殿しかいないだろうな」

「でも…」

口ごもる自称勇者に穏和な神父も後押しする。

「魔王が死んだとはいえ、国はまだまだこれからが大変な時期。この国には貴方のような勇気ある統治者が必要なのですよ」

他の仲間も頷いて同意の意を示した。

自称勇者は「みんな……」と言って瞳を潤ませて大きく頷いてみせた。

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