魔王と、自称勇者と、
うたた寝シキカ
01
「フフフ……。よくここまで来たな。俺様が魔王だ」
魔王が言った。いや、そう名乗ったから魔王なのか。
身長二メートル、体重百キロを余裕で超えるやたらデカイ魔王だ。腹が三段腹だ。確実にメタボだ。メタボ魔王だ。
魔王の前には標準サイズの人間たちがいた。その中の一人の少年が一歩前に進み出て、歯をガチガチ鳴らしながら言った。
「ぼっ…ぼくは、ゆっゆゆ勇者だ!お、おまえをたおひゅ!!」
自称勇者が言った。明らかに舌を噛んでいた。
魔王を前にする彼らは、自称勇者と、世界を苦しめる魔王を倒すという理由で集まった自称勇者の仲間たちだった。仲間は、魔導師・騎士・神父・行商人・元盗賊・光の精霊・レッドウルフと様々な役職が揃いもそろったメンバーたちだった。
自称勇者は背中に背負っていた伝説の大剣を震える手でゆっくりと抜き、両手でかまえた。
「みんなを苦しめるお前を倒す!この国は僕が救うんだ!!」
今度は舌を噛まなかった。決意のこもった力強い言葉だった。
自称勇者はそのまま魔王へと斬りかかる。仲間たちも彼に続いた。
魔王は座っていた玉座から立つと、自称勇者の少年が自分に向かってあり得ないほど高くジャンプし、斬りかかってくる光景をゆっくりと眺めていた。
自称勇者の大剣は、深々と魔王の腹に刺さった。多すぎる脂肪を含む腹が衝撃でボヨヨンと揺れた。
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