第二傷
「えっと、初めまして。俺は日向光」
恋人になってから自己紹介をするってのは、人類史上俺が初めてかもしれないな。ちょっとアホっぽい。
「うん」
うん、ってなんだ。
「明里。月岡明里」
こっちの疑問もそのままにブランコの女子は自己紹介をした。
「あ、ああ明里ね。光と明里か。なんか相性良さそうだな」
無意識に傷を撫でながらそう口走っていた。また嫌な顔されるかな、と思い手をどけようと思ったが、明里は気持ち良さそうに撫でられていた。俺の撫で方は癒しの効果でもあるのかな。満足するまで傷を撫でていた。
「その、大丈夫か?」
俺の頭の方が大丈夫か、という感じだがそれよりも明里のことが心配だ。ついさっきまで明里は同じ制服の女子に囲まれていた。つまりそういうことだろう。
「大丈夫。別に気にしていないから」
俺の心配をよそに明里はそう答える。気にしてないから大丈夫ってことはないだろう。とは言っても知り合って間もない人間にあれこれ言われるのも嫌だろう。だけど俺は明里の彼氏だしなあ。
「うーん」
腕を組みながらどうすれば良いか考える。
「ん」
一人でうんうん唸っていると明里が服を引っ張った。
「お、おう。どうした」
無言のまま明里は時計を指さしていた。それにつられ時計を見ると十八時を回っていた。女の子だし門限とかあるのだろう。
「ああ、ごめん。そろそろ帰らないとな。送って行くよ」
頭を撫でて明里の手を取る。一連の行動を無意識にやっていた。
俺の本質はチャラい男だったのかもしれない。傷ばかりに目が行ってたから気付かなかった。いや、振り返ってみると怪我した女子を介抱したりしてたな。
彼女が出来たんだし、傷見たさに軽はずみな行動は控えないとな。
「ここ」
手を引かれるまで気付かなかったが、明里は家の前で足を止めていた。
一人考えにふけっている間に、明里の家に着いたようだった。恋人同士で帰っているというのに会話もなく家に着いてしまった。次からはもう少し考えないとな。
「じゃあ、また明日な。学校まで迎えに行こうか?」
「……」
明里は無言のまま手を離さない。帰りたくないってことかな。可愛いやつめ。
「明日も学校あるだろ? 明日学校行けば休みなんだし、一日の我慢だ」
「わかった」
深く頷き名残惜しそうに明里は手を離した。
「おい、明里。帰ったのか?」
丁度手を離したタイミングで家からお父さんらしき人物が出て来た。後ろめたいことはしてないが、手を離してて良かったなと内心思った。
「あ、ど、どうも」
慌ててお父さんに頭を下げて挨拶をする。
「遅かったな。どこほっつき歩いてたんだ」
そう言いながら明里の頭を引っ叩き、そのまま腕を引いて家の中に連れて行ってしまった。
「存在を認識してもらえなかったな」
苦笑いを浮かべながら頭をかく。
明里を取り巻く環境は一筋縄ではいかなそうだ。
「あの傷もイジメか虐待の爪痕なのか」
傷は好みだが、明里は不憫だと思う。事なかれ主義の俺なのに何故だか分からないが、どうにかしてやりたいとも思う。だけど、俺に何が出来るのだろうか。
無力感を感じつつ、家路に就いたのだった。
翌日の放課後、明里の高校へと向かった。明里の制服は近隣である南高校の制服だったので見覚えがあった。もし違ったらどうしようかと思ったが、校門から出て来る生徒の制服は明里と同じ物だった。
「学校は当たっていたが、浮いてるな」
そう南高校は女子高なのだ。その校門に他校の男子が突っ立っていたら怪しまれもするだろう。
居心地の悪さを我慢しながら明里を待つ。
「お、出て来たか」
白い眼で見られることにも慣れて来た時、明里が校門に向かって歩いて来るのが見えた。声を掛けようと手を上げるより前に女子の群れが明里を囲んでいた。
顔は覚えてないが雰囲気からすると、昨日公園で明里を囲んでいた蜘蛛の子達だろう。
「はいはい、ごめんね。この子は俺のだからねー」
そう言いながら女子の群れをかき分けて明里の手を握る。明里は一瞬ビックリして様子だったが、俺の顔を見て安心したようで優しく笑い掛けて来た。それに応えるようにして明里を連れて走り出す。
蜘蛛の子達は呆気に取られていたが、逃げ去る俺達を見て我に返ったのか大声で下品な言葉を叫んでいた。その声を背に受けながら二人で笑い合い、その場を後にした。
「あいつらのポカンとした顔、ブサイクだったな」
「ふふふ」
学校から離れ、さっきのことを思い出していた。俺の悪口に明里も笑顔を浮かべていた。明里も俺に引けを取らず腹黒いな。
そう言えば明里の笑顔を見たのも、実はこれが初めてだったな。
明里の笑顔を見て無意識に頭を撫でていた。
「明日は休みだし、今日はウチに泊まっちゃう?」
ハッとした表情で俺の顔を見て、大人しい明里から想像も出来ない程激しく頭を縦に振っていた。
「お、おう。バッチこい!」
「あんまり片付いてないけど」
そう言いつつ明里を自室へと案内する。俺に続いて明里も緊張した様子で入って来た。密室で距離が近いからか、明里の細かい所が気になって来た。髪は長いがパサパサで少し頭皮の脂っぽい臭いがする。制服のシャツも数日着回しているせいか、酸っぱい匂いがしていた。金曜日だからか汚れが結構な量蓄積していた。風呂や洗濯は自宅で毎日出来ていないのだろう。
「やっぱり汚いよね」
俺の視線に気付いたのか、明里は自分のシャツを嗅いでいた。
「ぶっちゃけると少し匂うけど、嫌いな匂いじゃないよ」
明里を抱き寄せて頭のクンクンと嗅ぐ。シャンプーの匂いも良いと思うけど、人間らしい明里の匂いも好きだった。
無意識に取った行動が変態的過ぎて流石に引かれるか、と思ったが明里は恥ずかしそうにしているだけだった。
明里に対して無意識に取ってしまう行動がエスカレートしてて、そろそろ意識的に自制しないとマズイかもしれないな。
「とは言っても折角可愛いのに汚れているってのも勿体無いよな。まず風呂でも入るか」
「いいの?」
「もちろん。今日は親も仕事で帰らないらしいから、一緒に入るか?」
冗談を言いつつ明里の頭を撫でる。
「うん」
うん、ってマジか。この子、ほぼ初対面の相手に心開き過ぎじゃないか?
「お、おおう。じゃ、じゃあ行こうか?」
自分で口にしておいて引き下がる訳にもいかない。据え膳食わぬは男の恥ってやつだ。取って食ったりしないけど。
「じゃ、じゃじゃあ、先に入って待ってるな」
狼狽えながら先に浴室へと入り、明里を待つ。
これから裸の女子がここに入って来ると思うと興奮を抑えられないと思っていたが、明里の傷が気になった。目にあれほど大きな傷があるのだ。体にも無数の傷があるに違いない。そもそも風呂に入らないのは傷が痛むからではないのか? そう思うと、風呂に連れて来てしまったのは悪いことだったのかもしれない。
やっぱり明里を止めようと扉に手を掛けようとした時。俺より先に明里が扉を開けて浴室へ入って来た。素っ裸で。
扉を開けようとしていたため、モロに明里の裸を見てしまった。傷一つ無い綺麗な白い肌に小ぶりな胸。
ビックリしたのと、あまりにも明里の裸体が綺麗だったから見惚れてしまい身動きを取れないでいた。
「そんなに見られると少し恥ずかしい」
そう言いつつも体を隠そうとせず、顔を隠していた。というか少しだけなんだ。
「ご、ごめん」
明里の言葉に意識を取り戻し、慌てて背中を向ける。
心臓が胸を突き破りそうなほど強く脈打っていた。
「ふうー」
深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。明里を風呂に入れたのは取って食おうってわけじゃなく、綺麗にしてあげようと思ったからだ。
「好きに使っていいから体とか洗いな」
「うん」
その返事を聞いてから数十秒後。
「終わった」
「終わった!?」
明里をあまり見ないように顔を背けていたが、慌てて明里に目をやる。排水溝に泡とかが全くないので、シャワーで流しただけのようだった。そして終わったからと明里は浴室を出ようと腰を上げた。
なるべく明里を見ないようにしつつ再び椅子に座らせる。
「よし、俺が洗ってやる」
シャワーを手に取り、髪にお湯を掛ける。母親が使っている高そうなシャンプーを十分に手に出し、しっかりと泡立たせてから髪に付ける。ここまで傷んでいると関係ないかもしれないが、シャンプーの原液を直に付けると髪が痛むらしい。
「かゆいところはないか?」
頭を優しくマッサージしながら明里に声を掛ける。
「ううん、気持ちいい」
明里は甘えた声でそう答えた。
さっきまでは裸に興奮したりしていたが、面倒見てあげなきゃ、という気持ちが強くなり落ち着きを取り戻していた。
結局、一度では中々泡立たず、三回ほど洗ってからトリートメントをしっかりと馴染ませていく。
「光の手は優しいね」
丁寧に髪を手入れしていると明里はそう言葉を発した。
それは単純に優しいということだけじゃなく、優しくない手を知っている、という風にも聞こえ素直に喜べなかった。だからもっと丁寧に愛情を込めて髪に触れることにした。
「よし、髪流すぞ」
しばらく髪にトリートメントが馴染むように手櫛を繰り返してからお湯で洗い流す。
目を瞑っている明里は子供のようで可愛かった。
「このまま背中も洗ってやる」
スポンジを手に取り、泡立たせて優しく背中を洗って行く。まじまじと背中を見ると背中も傷一つ無く綺麗な白い肌をしていた。ちょっと興奮しそうになったが、必死に我慢した。
ふとさっき見た明里の裸を思い出していた。前も後ろも明里の体に傷は無かった。そうなると目の傷は虐待じゃないのか? いや、目に大きな傷を負わせてしまったから手加減しているのかもしれない。
明里の小さな背中を見ていると俺が守ってあげなきゃな、と思うのだった。
タオルで軽く拭いただけで済ませようとする明里を捕まえて、髪を乾かしていた。
「ちゃんと手入れすればこんなに可愛いのに」
軽くトリートメントしただけでバサバサだった髪はまとまって綺麗になっていた。
「興味なかったから」
明里はそう答えながら、目を閉じて気持ち良さそうにしていた。
「俺が手入れしないと駄目だな」
「ふふふ」
櫛で髪を梳かしていると、明里から可愛いお腹の音が聞こえて来た。
「はは、良い時間だもんな。なんか適当に食うか」
「それなら私に任せて」
「おお、明里は料理出来るのか?」
「家で家事は全部やってるから。特に料理は得意」
家庭的なんだなあ、と感慨に浸ろうと思った矢先、『家事は全部やってる』という発言で一気に可哀想になってしまった。そりゃあ毎日家事を押し付けられていたら嫌でも上手くなってしまうのだろう。洗濯や掃除などより料理の方が出来不出来が目立つ。だから得意になったのかもしれない、そう思うと益々明里が不憫に思えてしまう。
「何か手伝うことはあるか?」
明里の後ろに立ち、頭をポンポンと優しく叩きながら聞く。明里の状況を勝手に想像して、居ても立っても居られなくなり台所で料理をしている明里に声を掛ける。
「ううん、大丈夫。光は座って待ってて」
俺のポンポンを黙って受けながら明里は答える。
「そうか?」
「うん。簡単な物しか作ってないし、もう直ぐ終わる」
「わかった。大人しく待ってるな」
これ以上は明里の邪魔になると思い、言葉の通り大人しく待っていることにした。
頭を働かせると明里のことを直ぐに考えて落ち込んでしまうので、思考を停止し流れるニュースを聞き流していた。
「お待たせ」
しばらくそうしていると、明里が料理を持ってやって来た。
白米、鮭のムニエルにサラダ、そして味噌汁。ムニエルには醤油を使ったらしく明里いわく和風ムニエルだと。
「普段、母さんが作る料理より洒落てるな。美味そうだ!」
「お口に合うといいけど」
「合うに決まってるだろ? いただきます!」
手を合わせて白米を片手にムニエルを食す。
「うまっ」
普通に焼いた鮭より白米が進む。醤油が良い感じに効いていて味付けが俺好みでもあった。
「明里は俺の好みが分かるのかあ」
口に白米を入れた状態で明里を褒める。
「えへへ。美味しそうに食べてくれるから私も嬉しい」
明里は上目使いに俺を見ながら照れていた。
くそー、可愛いなあ。傷があるとか無いとか関係なく可愛いなあ。
「ほら、冷めるよ?」
だらしない顔で明里を見つめていると、視線に耐えられなくなった明里がそう声を掛けて来た。
「お、おお。そうだな!」
あまり明里を困らせても可哀想だし、ご飯が冷めるのも勿体無いので再びご飯に集中することにした。
「ふうー、美味かった」
気付けばあっという間に平らげてしまった。
「ごちそうさま! 明里は本当に料理上手いだな!」
有り合わせで美味しいご飯を短時間で作れるというのは本当に上手な証拠だろう。明里をお嫁さんに貰ったら太ってしまいそうだな、なんてこと洗い物をする明里を見て思った。
手伝うと言ったが、『ゆっくり休んで』という言葉に甘えて居間でくつろいでいた。そこから台所が良く見えるため、明里の後ろ姿も良く見える。新婚みたいだな、なんて思うのは浮かれている証拠なのかもな。
「何から何までありがとうな」
洗い物を終えた明里を膝を上に座らせ、お礼を言う。
「いいの」
そう言う明里の頭を撫でていると、明里は眠そうに大きな欠伸をした。
時計を見ると十時を過ぎていた。普段はこの位に寝ているのだろうか。
「飯も食ったし、今日はもう寝るか」
「……うん」
目を擦って答えながらも明里は船を漕いでいた。
明里を抱きかかえ、自室のベッドに寝かせる。
「一緒に寝る訳にいかないよな」
今日はリビングのソファで寝るかな。なんて思いつつ明里に布団を掛けようと体を近づけると、明里に抱き着かれ、そのままベッドに倒れ込んでしまった。
「おいおい、寝ぼけてるのか?」
明里の腕をそっと外そうとするが、こんな小さな体からは想像も出来ない力で、抱き着く明里を外せそうになかった。
「困ったやつめ」
あくまで明里が離さないので仕方なく、仕方なくと自分に言い訳をしながら布団に入る。
俺も男の子なのでやましい気持ちが無いといえば嘘になるが、猫のように眠る明里を見ていると父性が湧いて来て、そんな気は無くなっていた。
俺がベッドに入ると安心したのか、明里の力は抜けていた。
「このまま寝たら腕が痺れちゃうぞ」
明里の腕をそっと外し、頭を抱きかかえて頭を撫でていると、眠気が襲って来た。その睡魔に身をゆだねた。
カーテンの隙間から差し込む朝日に目が覚めると、ベッドには明里はいなかった。もしかして、家に帰ってしまったのかと思い慌てて布団から抜け出す。
慌ててリビングへと向かうと、朝ご飯を作る明里の後ろ姿が目に入って来た。
「おはよう。もう少しで朝ご飯出来るから」
「あ、ああ」
明里が家に居たことに安心し、気が抜けてしまった。空気が抜けた風船のように椅子に座り、いつもの習慣でテレビをつける。
「昨晩、強姦の容疑で指名手配中だった林雄二郎容疑者が刺殺体となって発見されました。林裕次郎容疑者は両目を刺され殺害されていました。警察は遺体の状況から怨恨による殺害とみて捜査を進めています」
「朝から物騒だなあ」
頬杖を付きながら流れるニュースを流し見する。
無関係なニュースだが、両目を刺されていた、ということは気になった。俺好みの傷だろうなとも思ったが、目に傷を負わせるというのはニュースによると恨みの可能性が高いらしい。そうなると明里に傷を付けた犯人が気になる。その犯人も明里を恨んでいるのだろうか。
胸に不安を抱きながら、明里を見つめていた。
明里の朝ご飯はホットケーキだった。朝は食べない派の俺でも美味しく食べることが出来た。おかわりもして三枚も食べてしまった。
実は甘党である俺の弱点を的確に突いて来る明里は前世の恋人だったりしたのだろうか。
「まあ、前世とか信じてないけどね」
「ん?」
「いやいや、独り言。明里は良い子だなって思ってな」
そう言いながら明里の頭を撫でる。それを目を瞑って気持ち良さそうに受け入れていた。
なんか猫みたいだな、と明里の様子を見て思った。
歩き難いことも気にせず、頭を撫でながら歩いていると、明里の家に着いていた。
「寂しいけど我慢我慢。また直ぐに会いに来るからな」
上目使いに寂し気な表情を浮かべる明里をなだめる。目をギュッと瞑って頷く。ああ、可愛いなあ。持って帰りたいなあ。なんて明里を見ていると思ってしまう。そんな気持ちをグッと我慢して明里を見送る。
「おい! どこ行ってたんだ!」
俺達の気配を感じたのか、家からお父さんが怒鳴りながら出て来た。そのまま明里の前まで行くと顔目掛けて思い切り平手を打った。明里は平手を受けてそのまま倒れ込んでしまった。
「ちょ、ちょっと。止めて下さい」
「なんだ、てめえ」
お父さんは視線を下から舐めるように俺に向ける。先日は良く見えなかったが、明里からは想像も出来ないような下品なオヤジだった。これが明里の父親なのか?
「お前か、最近コイツを誑かしてるガキは」
「そんな、俺はただ」
俺の言葉を聞く間もなく腹に蹴りを入れて来た。急な暴力に避けることも出来ず、モロに入ってしまった。
「うぐっ」
腹を抑えて、膝から崩れ落ちてしまう。そんな俺にもう一発蹴りを振るって来た。避ける術もなく向かってくる蹴りをただ見つめることしか出来なかった。
「やめて!」
明里が身を挺して俺を庇う。俺の代わりに明里が蹴られてしまい、そのまま横に吹っ飛んでしまう。
オヤジの敵意は再び明里に向いてしまう。吹っ飛んだ髪を掴み家へと引きずって行く。
「ま、まて……」
声を出してオヤジを止めようとするが、腹の痛みで声が出ない。そして俺の目の前から明里を連れて行ってしまう。
這って扉の前へと向かうが、鍵を掛けられてしまい、開けることは叶わなかった。
怒声とすすり泣く声を扉の前で聞くことしか出来なった。
※
「痛てて」
家に帰り、服を捲ると腹に青痣が出来ていた。冷蔵庫から湿布を取り出して患部に貼る。
「くそっ!」
感情に任せて壁を殴る。歯を食いしばり涙を抑えようとする。
何も出来ず、扉の向こうから聞こえて来る声に耐えられず、逃げるようにして帰ってしまった。
明里は彼女かもしれないが、それでも家族から見たら他人でしかない。そんな俺が明里の為に何が出来るのだろうか。目の傷も十中八九あのオヤジにつけられた傷だ。
「許せない」
憎しみで頭が沸騰しそうだった。何もかも壊してしまいたい。そう思うのに壁を殴ることしか出来ない。
こんな時でも家の物を壊したら駄目だと理性が働いてしまう。
「可哀想だのなんだ言っても、我が身大事かよ……」
あのクソオヤジを殺してしまいたいと思うけど、きっと俺にはそれを実行出来ない。畜生になりきれない自分が本当に嫌だった。
「自己嫌悪してても明里は救えない」
泣き疲れ、拳も殴り過ぎて痺れて来ていた頃、少し落ち着いて来た。殴り続けていた壁を見ると血だらけだった。
「やべえ」
自分の手の甲を見てみると、皮が剥がれ血だらけだった。俺の手より壁に付いた血をどうにかしないと。今日は両親が帰って来るのだ。
台所から布巾を持って来て慌てて壁を磨く。
血を綺麗に拭き取って壁を見ると凹みや傷は出来ていなかった。
「壁が頑丈なのか、俺が軟弱なのか……」
また自己嫌悪に陥りそうだったので、気にしないことして自室へと向かう。
壁を掃除していると落ち着いたのか、手から血を流し過ぎたからか、頭に上った血が抜けたようだった。それで今俺が出来ることを考え付いていた。
「えっと、これだこれ」
調べていたのは児童相談所のことだった。明里を合法的に救うには児童相談所に頼るしかない。そう思ったのだ。
自分で明里を救えないのは悔しいが、明里を助けることが目的なのだ、と自分自身を納得させた。
そこで気になったのが、他人である俺が通報しても児童相談所が動いてくれるのかが心配だった。
「なるほど、他人の通報であっても児童相談所は動いてくれるのか」
児童相談所への連絡は通告と呼ぶらしい。通告があってから受理会議という会議を即時開催する。その後二十四時間から四十八時間以内に児童の安全確認の為の調査を行う。その際に緊急性がある場合は一時保護を実施してくれるようだ。
そこで問題となるのが、その緊急性である。明里の目の傷は虐待と認められるには十分なものだ。だが、その傷はかなり古くからある傷だとマニアの俺には分かる。
明里と風呂に入った時のことを思い出してみる。明里の体には傷と呼べる傷は無い。今日の暴力も傷が残る程かと分からない。もしかしたら痕が残らないように加減しているのかもしれない。
「一時保護を実施してくれるか微妙なラインだな」
ネットを使って情報を集めれば集める程、児童相談所に通報することで明里が救えるのか分からなくなる。それに、児童相談所に保護された場合、明里は施設で生活することになるだろう。それは本当に明里の為なのか……。
そもそも俺が明里に関わらなければ、虐待も起きなかったのではないか。
「止めだ止めだ。そんなこと今更後悔しても何にもならないだろ」
頭を振って再びネガティブな思考になりそうなのを抑える。既に関わってしまったんだ。それなら関わると腹をくくり、俺の手で明里を幸せにすれば良い。
そう思うけど、具体的にはどうすれば良いのかは分からないが。
「児童相談所を使わないとなると手が無いんだよな」
頭を思い切りかき、布団に倒れ込む。
とにかく今は刺激しないことが大事だな。俺と出会う前の生活を守る必要がある。もしかしたら、変に刺激しなければ、あのオヤジも虐待めいた行動を起こさないかもしれない。
門限破りと無断外泊を躾けたと言われたら、間違い無く俺が悪い。もちろん暴力を肯定するつもりは無いが、きっかけは俺かもしれない。
また自己嫌悪に陥りそうなので、諦めて意識を放り出し睡魔の海に溺れることにした。
※
「痛てて……」
ベッドに倒れ込んだまま寝ていたせいか、体が凝り固まって痛かった。右手も痺れていた。
結局、何も思いつかないまま寝てしまった。昨日のことを思い出すと、また眠ってしまいそうだったので、体を起こしリビングへと向かう。顔を洗って朝ご飯を食べよう。
「おはよう。着替えないで寝ちゃったの?」
「う、うん。昨日は遊び疲れちゃって」
「へえ、珍しいわね。さっさと顔洗って来なさい。朝ご飯出来てるから」
「はーい」
まだ重たい眼を擦り、洗面台へと向かう。
ふと思い出して服をめくってみると痛みはまだ残っているが、ほとんど青痣は消えていた。
「ああいうの慣れてるんだろうな、あのクソオヤジ」
ネガティブな気持ちより、怒りが湧いて来た。そうだ、落ち込んでいる場合じゃない。あのクソオヤジをとっちめてやる、と闘志を燃やすべきなのだ。
「よしっ!」
顔を両手で叩き、気合を入れる。その勢いのまま氷のように冷たい水で思い切り顔を洗う。
まずは腹を満たそう。その後、作戦会議だ!
「会議って言っても俺一人だけどな」
そう独り言ちると苦笑いが自然と浮かんでしまう。
リビングの椅子に座り、いつものようにテレビをつける。
「昨日未明、刺殺体が発見されました。被害者は月岡徹さん五十四歳。月岡さんの遺体は両目を刺され殺害されており、先日指名手配されていた林容疑者と同じ状況から警察亜は同一犯とみて調査を進めています」
目の前の目玉焼き突いていると、また殺人事件の報道が聞こえて来た。また両目を傷付けるというセンスの良い殺し方なんてしたのか、と興味を惹かれテレビに視線を向ける。
「え……」
ニュースで報道されていたのは俺が殺したくて殺したくて仕方なかった明里の父親だった。
ニュースを見て明里が心配になり、朝ご飯を放って家を飛び出した。帰ったら母さんに怒られるだろうな、と思いつつ明里の家へと急いだ。
俺の知っている明里の父親はクソオヤジでしかないが、明里にとっては血を分けた肉親だ。だからこそ理不尽なことをされて我慢出来るのだろう。他人であれば許せないことも家族なら許せる、ということもある。
まあ俺の家族は理不尽なことをして来ないが、もし両親に理不尽なことをされたら我慢出来ないと思うが。
「はいはい、離れて下さいねー」
明里の家に着くと報道のカメラや、それを抑制する警察でいっぱいだった。家の入り口にはテレビで見たことのある黄色のテープが敷かれ、部外者が敷地内に入れないようにしていた。
玄関までの庭には警察が座り込み、何かを探しているようだった。
「明里のオヤジさんが殺されたのって家の前なのか?」
警察の動きからそう推測出来る。つまり警察は犯人に繋がる手掛かりが無いか探しているのだろう。
マズイかもしれない。この状況を見て頭を過ったのは昨日のことだ。俺と明里のオヤジさんは殺害現場となった庭で揉めごとを起こしている。俺に繋がる何かが庭に残っているかもしれない。もちろん、明里のオヤジさんを殺したのは俺じゃないのだから堂々としていればいい。だが、冤罪や面倒なことに巻き込まれるかもしれない。それでも明里に会いたいと思う。でも昨日のことが無くても、この様子では明里を訪ねるのは難しそうだ。
「諦めるしかないか……」
ニュースの話では被害者は明里のオヤジさんだけだ。心配だが、今は引いた方が良いだろう。警察に目を付けられ、明里に会えなくされたりする可能性も無くない、ってのは考え過ぎか。
明日から学校が始まるし、放課後に明里を迎えに行こう。そうは思うが、名残惜しくて外から見える窓に視線をやってからこの場を後にした。
※
翌日の放課後。学校が終わると急いで明里の通う南高校へと向かった。オヤジさんが亡くなった昨日の今日で欠席しているかもしれない、と向かいながら思った。まあ考えても分からないので、とにかく急ぐことにした。
数日だが校門の前で明里を待っていたことがあったので、南高校の生徒も俺を気にしなくなっていた。若干名は不審そうに俺を見ては足早に去って行くが。
「おお、良かった。学校来てたんだな」
三十分位待っていると明里が昇降口から出て来た。明里の様子は普段と変わらないように見えた。普段から無口だし、感情を表に出さないタイプなので、心の中までは分からないが。
普段と変わらないのは明里の様子だけでなく、取り巻く環境もだった。普段と変わらず明里をイジメる蜘蛛の子達は、今日も今日とて明里を囲んでいた。懲りない奴等だなあ。
「お前のお父さん死んじゃったんでしょ? どうせアンタが殺したんでしょ?」
「アハハ、ちょー怖いんですけど。気を付けないとウチらが殺されちゃうー」
走って明里の元に向かっていると、蜘蛛の子達の罵倒が聞こえて来た。自分の家族が殺されたのに、お前が犯人なんだろ? って口に出来るのは人間ではなく畜生だろう。このクソ女共の不細工な顔をぶん殴りたい衝動に襲われる。それをグッと抑え、クソ女達を強めにどかして明里の手を掴む。
「行くぞ」
明里はビックリしていたようだったが、俺の顔を見ると黙って頷いた。
「アンタ、前々から月岡サンに付きまとってるけど何なん? ウチらが先に月岡サンと先にお話してるんですけど?」
そのまま明里を連れて行こうとしたら、今日はクソ女達に止められた。蜘蛛の子達得意の陣形で俺も含めて囲んで来た。結構、圧迫感あるな。それと香水の匂いがキツイ。こいつらの鼻は壊れてるのかよ。
「俺? 俺は明里の彼氏だけど?」
明里を庇うようにしてリーダーらしき人物の前に立つ。
「カレシ? この子の?」
「うわあ、マジキモッ」
「趣味悪すぎー」
四方八方から罵倒される。そうやって相手を追い込むのか、と少し関心してしまった。
「お前達みたいな化粧した豚達を好きって奴等から見たら趣味悪いかもな」
「はあ? なにそれヒドくない?」
「メッチャ傷付いたんですけど」
豚と表現したのは間違いなかったな。昔、牧場の豚小屋に入ったことがあるが、その時もブーブーと鳴き声が四方八方から聞こえていた。あれに似ている。変な匂いもする点も似ている。
「ふっ」
「なに一人で笑ってんの?」
「うわっ、カップル揃ってキモいんですけど」
そんなやり取りをしばらくやっていると、相手をするのもアホらしくなって来た。
この手の連中は自分達が満足するまで止めない。それに律儀に付き合ってやる義理も無い。
「もういいから。そこどいてねー」
そう言いながら目の前のクソ女の腹を軽く蹴る。蹴るというよりは足の裏で押す感じだ。クソ女は、まさか自分が蹴られると思ってなかったようで、そのまま尻餅を付いた。
「は? 女子に手を上げるとか、マジありえない」
「アタシ先生呼んで来るわ」
流石にイライラして来た。そもそも俺は気が長い方じゃないんだ。
「勝手に呼べよ。もう邪魔だなあ」
もう目の前の女を人間ではなく、地面だと思うことにした。俺の意図に気付いたのか、クソ女は慌てて横に避ける。
「ちょ、はあっ?」
「マジありえない」
頭を思い切りかきながら振り返る。
「うるせえな、殺すぞ」
真っ直ぐ倒れているクソ女を見つめてそう告げる。
「え……」
イライラし過ぎて冗談や威嚇になっていなかったのか、豚達は静かになった。
「行くぞ」
「う、うん」
通り魔さん、アイツらも殺して下さい。明里の手を引きながら俺はそう思った。
「なんか悪かったな」
「ううん。そんなことない」
明里は笑顔でそう答える。
「今は頭に血が上っちゃってるからな。警察とかと揉めちゃいそうだ」
そう言いながら苦笑いを返す。こんな様子で明里の家の前にいるであろう連中に会ったらまたキレちゃいそうだった。それは間違いなく明里に迷惑を掛けるし、こんなみっともない姿を見せたくない。
「悪いけど今日は帰るな。明里の顔見れただけで満足しておくわ。側にいれなくてごめんな」
「ううん、来てくれただけで嬉しい」
くうぅ、なんて可愛い彼女なんだ。もっと俺がしっかりしないと、明里を支えられない。
明里の頭を撫で、帰り道は別なので見えなくなるまで明里を見送り、俺も歩き出した。
※
オヤジさんの問題が片付いたと思ったら、次はイジメか。片付いたと言っても問題ではなく、オヤジさんが片づけられてしまったが。
イジメを解決する方法は明確だ。先生に知らせればいいのだ。高校生だから停学や退学といった処置が下されることもある。物理的に排除してしまえば、イジメの問題は片付く。その後の報復が少し怖いが、学校外であれば俺がついていれば何とかなる
それならやるべきことは一つ。ネットで南高校の電話番号を調べ、イジメがあると知らせるのだ。
「えっと、南高校の電話番号は? あったあった」
南高校のホームページに連絡はこちら、と書いてあった。記載されている電話番号を携帯に打ち込んでいく。
「よ、よし……」
発信音が鳴るのを待っていると、少し緊張して来た。というか、何を言うのか考えてなかったな。
『プー、プー……』
「んん? 話し中か?」
ドキドキしながら繋がるのを待っていたが、話し中である電子音が聞こえて来た。タイミングが悪かったな。
待っている間に何を言えば良いか考えよう。そう考えた時、明里のことを全然知らないことに気が付いた。何となく同級生だろうと思っていたが、そもそも明里の学年をすら知らない。勿論、明里のクラスも分からない。これでイジメがあるってのを知らせても悪戯だと思われるか?
だからといって、何もしないでいるなんて出来ない。本名さえ分かれば何とか出来るかもしれない。
とにかく電話してから考えることにしよう。出たとこ勝負になるのは不本意だが、イジメがあるのは事実だ。最近はイジメの問題を重要視しているし、無下に扱われることもないだろう。
出来るだけ前向きに考えたところで、もう一度発信する。少し、待つと呼び出し中の電子音が聞こえて来た。さっきは本当にタイミングが悪かったみたいだ。
「はい、南高校でございます」
数回の呼び出し音の後、南高校の先生であろう人物が出た。
さっき出たばかりだからか、相手は一回半くらいの呼び出しで出た。
「あ、あのー、すみません。実は月岡明里さんのことで相談があるんですけど」
少し吃りながらそう伝える。咄嗟に思い付いたことにしては、中々良い切り出し方だと思った。
「あー、困ります。そういう話しはお断りしていまして」
「え?」
だが、相手から発せられた言葉は俺の予想に反するもので面を食らってしまった。
「だから、個人情報なのでお伝え出来ることはありません」
相手の発言には棘が感じられた。学校の教師というのは、こうも感じが悪いのか?
「い、いや、そういうことじゃなくて。明里さんがイジメにあってるんですよ」
「そういった事実はございません。これ以上、マスコミの方々とお話しすることはございませんので、失礼致します」
「え、あっ、ちょっと」
それだけ告げられると、一歩的に電話を切られてしまった。
「マスコミってなんだ?」
そう口に出してから昨日の様子を思い出していた。明里の家の周りに数人のテレビ関係者と思われる人物がいた。通り魔事件について、マスコミは学校にも取材しようとしていたのだろう。そう考えれば先程の対応も理解出来る。勿論、納得はしていないが。
最初に電話した時に話し中だったのはマスコミだったのかもしれない。その後、間髪入れずに電話を掛けたもんだから、お役所仕事のような対応を受けたのだろう。
これはアプローチを変えないと駄目だな。俺自身が南高校の生徒のフリをして電話をする方が、真面目に取り合ってくれるかもしれない。同じクラスだから名前は言えないけれど、という体であれば真実味も増すはず。
「そうと決まれば早速電話だ!」
再び南高校へ電話を掛ける。だが、聞こえて来たのは話し中の電子音。
「くそ、マスコミめ」
電話を切り、再び発信する。しかし、聞こえて来るのは同じ電子音。
それから二時間程、電話を掛け続けたが繋がることは一度も無かった。さっきがたまたま運が良かったのか、それとも電話線を抜かれてしまったのか。
通り魔事件が話題になっている内は、学校側にイジメを解決させるのは難しかもしれない。そう思っても電話を掛けることしか、俺に出来ることはない。発信を繰り返している内に眠りに落ちてしまった。
※
「また寝ちまったのか」
携帯を握り締めたまま眠っていたようだ。電池が切れかかっていたので、充電器に接続し時計を見る。
「朝の五時か。とりあえず風呂に入ろう」
体を起こして風呂場に向かう。
何だか体が重い。ここ数日、ちゃんと布団で寝てないからだろう。
シャワーを浴びて、リビングへと向かう。
「あら、早いのね」
「なんか変な時間に寝ちゃって」
頭をタオルで拭きながら答える。母さんも朝早いな。
「ご飯直ぐに出来るか、ちょっと待っててね」
「うん」
シャワーを浴びたが、まだ少し眠い。重い瞼を擦りながらテレビをつける。
「本日で三件目となる通り魔殺人の被害者が出てしまいました」
うつらうつらとしながらも聞こえて来るニュースに意識を向ける。
「今回の被害者は南高校に通う、美馬理子さん十六歳です。遺体は以前の二件と同様に両目を刺され殺害されており、警察は同一犯とみて捜査を進めています。
二件目の被害者の娘さんが同じ高校に通っていたことから、南高校の関係者の可能性が高いとみて捜査を進めているようです」
目を擦るのを止め、テレビを見る。そこに映っていたのはイジメの主犯格の女子だった。
「どうしたの? 口開いたままになってるわよ」
母さんに言われるまで固まっていたようだった。そりゃあ固まりもする。俺と揉めた人物で殺意を抱いた相手が次々に殺されている。
テレビでは南高校の関係者、と報じているが十中八九俺自身の関係者だ。そして、どちらの揉め事も、その場にいた人物となると限られて来る。俺と明里だけだ。そうなると、一連の事件の犯人は明里、なのか?
いや、待て。これが同一人物の犯行なら、一件目の事件が繋がらない。最初の被害者は俺と明里に全く関係の無い人物だ。しかも、最初の事件が発生したであろう夜、俺と明里はこの家で一緒にいたはずだ。
そうなると、犯人は一体……。いや、考えてみると犯人が誰でも関係無い。正確に言うと『明里でなければ関係ない』、だ。
最初の事件でアリバイのある俺達は犯人な筈がない。
被害者は殺されるまではいかないかもしれないが、良い奴ではなかった。正義の味方が天誅を下したのかもしれない。心の中で感謝して、ほとぼりが冷めるまで待てば良い。
明里に害をなす存在は居なくなったのだ。これからは幸せな未来が待っている。
ふと、左手が気になった。何故かは分からない。手の平を広げて見ると傷口は治りかけていた。
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